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文献名1大本七十年史 上巻
文献名2第1編 >第2章 >3 大本出現の意義よみ(新仮名遣い)
文献名3世の立替え立直しよみ(新仮名遣い)
著者大本七十年史編纂会・編集
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-08-10 12:07:27
ページ94 目次メモ
OBC B195401c1232
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本文  初発の神諭の眼目は、「艮の金神の世」の到来と、「三千世界の立替え立直し」の宣言である。開祖に帰神された神は、艮の金神であるとされているが、その艮の金神は「もとの国常立命」であると、後年の筆先に書かれている。国常立命は、『古事記』『日本書紀』など日本の古典にその神名があげられているが、筆先では、この世の元をかため、大地の世界をひらいた大地の先祖とされ、大本ではこの神を「国祖」とよんでいる。
 神諭に「艮の金神は、この世をはじめた神なれど、あまり我が強うて、艮へ三千年と五十年、おしこめられておりて、かげからかもう(守護)ておりた」(明治33・旧4・7)とあって、このことを、大本では国祖の隠退とよんでいる。「艮へおとされておりた元の国常立命に、三千世界の世をかまえ(守護せよ)との、天のご命令をいただいての、こんどのご用であるぞよ」(大正3・旧7・14)ということが、初発の神諭の「艮の金神の世になりたぞよ」「神が表にあらわれて……」と示されているのであって、これを国祖の再現とよぶ。(国祖の隠退再現については、第四編第一章参照)
 国祖の再現は「三ぜん世界の立替え立直しをいたす」(明治25・1)ためであるとされるが、なぜ立替え立直しをせねばならぬかということについては、「この世は神がかまわなゆけぬ世」(明治25・1)であって、「むかしの神の世は結構でありたなれど、途中から悪神の世になりて、世界が悪くなりた」(明治33・旧12・13)のであるという。それで「今は獣の世、つよいものがちの、悪魔ばかりの世で」「世界は獣の世になりて」おり、「これでは、世はたちてゆかんから、神が表にあらわれて、三ぜん世界の立替え立直しをいたす」というのである。その立替え立直しにより「この世はさっぱりさらつ(新)にいたしてしもうぞよ。三ぜん世界の大せんたく、大そうじをいたして、天下太平に世をおさめて、万劫末代つづく神国の世にいたす」(明治25・1)というのであって、これが立替え立直しの主旨であり、国祖たる艮の金神の宣言である。
 立替え立直しの範囲は、三千世界とあって、「あとにも先きにも、末代に一どよりない大もうな、みたま(霊魂界)とこのよ(現世界)との大立替えである」(明治26・旧7・12)とあって、精神界(霊界)も現実界(現界)もふくめての全世界であり、しかも「何事も一さいの立替えである」(大正元・旧7・4)というのである。立替え立直しをするについては、「世界のものよ、改心をいたされよ」(明治26)ということが終始強調され、されに「むかしの根本から世におちて……三千年あまりての経綸であるから、一分一厘の間違いもない、動かぬ経綸がいたしてあるから、一日も早く、もとの水晶魂に立ちかえりて、ご用をいたしてくだされよ」(明治26・旧7・12)とあり、このご用のために、大本は出現したとのべられている。すなわち、大本は、神の経綸にもとづく世の立替え立直しの神業に奉仕するために出現したのである。
 大本は、天啓によって出現した宗教であり、大本の信仰は、この、歴史をこえ、人間のはからいをこえた神の経綸を受けとめて、生活のなかに生かすことによって成立する。
 しかし、それは、大本出現の意義を、ほしいままに神秘的に解釈することであってはならない。大本の教義を発展的に理解し、正しく生かすためには、大本が、日本の、どういう歴史的・社会的条件のなかで出現したかを知ることが必要なのである。
 歴史のうえでの大本は、民衆救済と平和をかかげる新しい宗教として、日本の資本主義社会の確立を背景として成立した。
 明治維新によって新政府が誕生したが、この政府は、民衆の切実な願望をよそに、収奪を強化し、国家神道を強制することによって、人民を精神的に支配した。幕末、世なおしの要求を部分的に反映して、民衆救済を主張する新しい宗教として、前述のように天理教・金光教などがあらわれた。これらの宗教は、国家神道体制の確立とともに、神道本局の直轄教会となって公認教につらなった。
 明治政府は、日本の資本主義化を急速に進めた。上からの資本主義化は、農村からあふれ出た安価な労働力を吸収することによって、目ざましく進展した。日本資本主義の発展とともに、政府は、市場の開拓拡大を海外にもとめ、軍事力を背景に大陸への侵略のみちを歩みだした。天皇崇拝・国家神道思想・忠君愛国の排外的国家主義が、この方向を理論づけかつ正当化した。
 大本が出現した一八九二(明治二五)年は、こういう日本資本主義の路線が、国内的にも国際的にも、本格的に踏み出された時期であった。大本開祖は、人民が耐えがたい窮乏におちいっていること、権力者が、本来、平等である人民にたいして侮蔑した支配をおこない、美しい人間の心をふみにじっていることを指摘し、現在の世界は改められるべきであり、豊かで平和な社会─みろくの世─を実現すべきであると主張した。大本の出現は、幕末いらいの、人民の世なおしの要求をうけついで、神の名において、不正な支配の廃絶と理想社会の実現を人民によびかけたのである。

〔写真〕
○鶴山山上の旧神声碑「うぶごえ」 p95
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