文献名1大本七十年史 下巻
文献名2第8編 >第3章 >4 憲法擁護と軍備撤廃よみ(新仮名遣い)
文献名3安保反対運動よみ(新仮名遣い)
著者大本七十年史編纂会・編集
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ページ1165
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一九五八(昭和三三)年には、岸内閣は一九五一(昭和二六)年に締結された日米安全保障条約の改定交渉をおこなって、新安全保障条約を締結しようとした。この条約の改訂をめぐって、国民の各層のあいだに可否の論議がまきおこり、新安保条約締結にたいする反対の声がたかまってきた。人類愛善会では新安保条約にたいし、この条約は日米の軍事同盟であって、第一に日本国憲法をふみにじって戦争への道をたどるものであること、第二に米国の従属国となってソ連・中国などとの国交の障害となり、敵対国の地位にたたされること、第三に核兵器禁止を要請する国民が、この条約によって核兵器を承認する結果となること、第四にこれはアメリカ支配者層への奉仕と従属を強制するものであり、一部特権支配層に有利であっても、国民大衆の幸福をもたらすものではないこと等を指摘して、反対の態度を表明した。
しかし、政府・与党は安保条約改定案を、与党の単独審議で強引に国会を通過させようとしていた。事態が緊迫化してきたので人類愛善会では、一九六〇(昭和三五)年五月七日緊急理事会を開催し、新安保条約は日本国憲法の平和精神にいちじるしく背反するとともに、人類愛善の大精神にも相反する取りきめてあることを再確認し、その批准を阻止するため、全国的な署名運動を展開することを決定して、即日その手続きをすすめた。
五月一八日には、衆議院第一会館第一会議室で、人類愛善会の安保阻止・国会請願緊急会員大会が開催された。大会には、東京および近県の会員二〇〇余人が参集し、さらに仏教・キリスト教等の宗教者・文化人・国会議員も参加して、日本キリスト教団東宗教区社会委員長平山照二・元日蓮宗宗務総長西川景文・日本画家朝倉摂らの激励のあいさつがあった。最後に各社テレビの取材する照明のなかで、出口名誉会長からつぎの大会決議がよみあげられ、満場の拍手をもって可決した。
崇高なる宗教的立場から、戦争と暴力を否定し、軍喘の撤廃を主張してきた人類愛善会は、新安保条約の批准を国会において承認されないよう請願する。新安保条約の内容には、幾多の不安と疑義をいだかざるを得ない。この法案は原爆被災の苦悩から学びとった平和憲法の精神に背反するのみならず、国際信義の上より、アジア・アフリカの諸国民にはかり知れない障害をおよぼすことをうれうるものである。われらは愛と信義にもとづく人類社会恒久平和の一つの世界をめざすものとして、ここに全国十万の緊急署名により、国会に請願することを本会の名において決議する。
ついで、全国の会員から急送されてきた一〇万をこえる請願署名簿が、紹介議員代表席に山積された。柳田秀一(社会党)・受田新吉(民社党)両衆議院議員は、紹介議員を代表して、人類愛善会会員の努力に感謝のことばをのべ、署名簿は衆・参両院にもちこまれた。
つぎに衆・参両院議長ならびに各政党に請願するため、代表団はまず衆議院院内で清瀬一郎議長に面会した。同議長は、かつて第二次大本事件の弁護人であった。出口栄二会長は、決議文を朗読して議長に手交したあと、批准の阻止を申しいれた。
さらに代表団は、中村副議長に面会して、同様の請願をしたあと社会党・民社党各控室で、浅沼・西尾両委員長あての決議文をそれぞれ朗読して手交し、同様の申しいれをおこたった。参議院では河野事務総長に面会し、本会の主旨をくわしく説明し、正・副議長あての大会決議文の伝達をした。こうした行動はマスコミの注目をあび、朝日・毎日・東京新聞・週間コウロン・読売テレビなどをとおしてひろく報道された。
ところが、その夜五月一九日深夜の国会で、与党である自民党の単独審議と採決によって、日米新安保条約は抜打ち的に、わずか一〇数分間で、衆議院を通過してしまったのである。安保反対運動は、日本の社会運動史上、かつてみられないほどの全国民的な運動として、長期にわたって展開され、六月にはいると、連日数万・一〇数万のデモが国会周辺でくりかえされ、多数の重軽傷者をだし、ついに死者までがでるほどのはげしい闘争となった。
〔写真〕
○新安保批准反対請願緊急会員大会 東京 衆議院第一会館 p1166
○人類愛善会は新安保条約の批准阻止を国会に要求した 清瀬衆議院議長に決議文を手交する出口会長 p1167
○乱闘 投石 警棒の嵐……多数党の力で新安保条約は強行採決された マイクにしかみつく清瀬議長 衆議院本会議 p1168