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文献名1大本史料集成 3 >第2部 第二次事件関係
文献名2第2章 裁判所資料 >第5節 証人訊問調(控訴審)>(四)京都府警部よみ(新仮名遣い)
文献名3高橋警部証人質問(2)よみ(新仮名遣い)
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ページ570 目次メモ
OBC B195503c220543
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本文 富沢弁護人 それではちよつと中村に其事件を御訊きを願度いと思ひます。
裁判長 中村其点に付て取次いで貰つたことはないか。
中村純一 高橋警部さんは斯うして見ますと当時のことが……(胸をさすり乍ら目に涙を浮ぶ)
裁判長 どうしたの。
中村純一 感慨を思ひ浮べるのですが、王仁三郎の実印を持つて来いと云ふ命令を受けたように思つて居ります、此の高橋警部さんから──それから時期は一つ時であつたか存じませぬが、出口スミの実印を携帯せよと云ふ事でありまして、当時既に中立売警察に居つたのでありますが、拘置さし乍ら本部の警官の方が附添ふて、度々亀岡へ出て居ります、綾部にも参つて居ります、それで実印を携帯致しまして、それは京都警察本部の警務課の豊原道也課長の前で此の高橋警部さんが、それでは之が出口王仁三郎の実印であると申上げて渡したのは夜分でございます、之は私の当時の日誌に入れて置いたと思ひます、然し私はしよつちゆ懐にあると云ふ訳ぢやないので許された日誌に書いて係官の方に一応検閲を願つて、それから金庫に預つたのですから大抵の重要なことであるから日記にあると思ひますが、右の様な次第で、王仁三郎の実印と出口スミの実印は私が携帯して御命令のまゝに警務課の課長さんの前で御渡しして其儘警察に帰つて休んだのですから、高橋さんに実印の保管を願つたことになつております、それから之は検事局との関係が又そこに出てくるのですがまあ今日は大分覚えて居りまして鈴木検事さんが御呼出になりまして、それで外の事を御訊ねになつた後に、ちよつと話が前後しますが申上げます、いや話ではない、向ふさんの方の仕事が前後しておかしいと思つたのですが、鈴木検事さんの前に出ましたら、王仁三郎は委任を取消したさうだねと仰しやつたからそんなことはありませぬ、斯う申上げたのであります、おかしいことがあるものだな──と思つたのでありますが、之はちよつと取消しますが、実印を……。
裁判長 順序に云へ〔ひ〕なさい。
中村純一 はあ、順序に申上げます、少し途中におかしいことがあつたのでありますが、実印を只今申上げた様な順序で警部さんに御渡ししたのです、それで用事が済んだものでありますから、警官の方が帯行して中立売警察署に帰つた訳です、そして翌日か、翌々日か出口スミはちよつと後になつて居りますが、又其のあとの判を同じく大切な私の預りの荷物の中に入れてそれで中立の警察の金庫の中にしばらく蔵ひ置きを願つて居つたのです、それで実印をお渡ししてから何時か分りませぬが、出口王仁三郎から今富沢弁護人の仰せになるとこゝの委任状なるものが私共に廻つて来たのであります、出口王仁三郎から此の不動産を賃貸価格で亀岡、綾部当町役場に譲渡す〔る〕こと、斯う云ふことのまあ委任状が参つた、之は証拠があるのでございますから、それで私は其委任状を見た時に迚も人間的に考へた時には想像の付かない委任状であつた訳でありますから、此の間の法廷でも、ちよつと憤慨と云ふ言葉はなそですが、非常に憤慨的でもあり又非常識的でもあり、多少此の会計の関係から申しまして此の亀岡綾部の当町の不動産と云ふものは先づ金銭的に見ても大変なものでありますが私常識から申上げても、之は出口王仁三郎名儀、出口スミ名儀にはなつて居りまするけれ共が、其の本質とか其内容と云ふものから、之を考へるならばそれは法律上の手続は経て居らぬけれ共が立派な之は準財団法人であつて此の財団法人を出口王仁三郎、出口スミ両人が委任状一本で之を整理さすと云ふようなことは、全体の信者に対して什う云ふ申訳けをするであらうかと云ふようなことは迚もそれは自分の常識が働いて来るとかなわぬ感じを其時に持つた訳であります、之は過日申上げました通りに勢の赴くところはどこ迄も圧倒して来るものだなあと思つて、それは仰せになる儘に其の委任を私は受諾したのであります、それで其の受諾をして、然し整理をすると云ふてますけれども、いつ何日にどうせい、と云ふ事は書いてないのでございますから私は委任状其のまゝ私の保管の方に其儘預つてあつたのです、所が鈴木検事さんにちよつと呼出を受けまして、それは外の関係でちよつと御訊ねになつた時に中村、王仁三郎がお前に委任して居ることの委任を取消したそうだね、何も知りませぬ、さうか知らぬかと仰せになつたのです、それからおかしい事を御訊ねになるものだなあ、と思つて居つたのです、所がそれは検事局の二階であります、検事局の二階で検事さんの前でありますが、中立売警察の特高を出た時に、中村、王仁三郎から手紙が来て居ると仰せになつたのです、さうですかね、それは初めて王仁三郎氏から貰つた手紙であります、其手紙の宛所は南桑田郡亀岡町中村純也殿と書いて参つたのでございます。
 それで其封縅には符箋が付いて居る、其符箋は亀岡に居らないから、つまり宛先に転送を受けて特高課で私受取つたのであります、それでそれを開封したのであります、開封して見た処が王仁三郎氏の手紙の内容は、過日不動産の処分に関する委任をしたがあれは俺の本心でないから、あとから分ることであるから一切取消してくれと云ふ取消しのつまり委任に対する取消の手紙が来たのであります、ところが私は其時に驚いたのてあります、其手紙の着いた前日に中立売警察の官舎の二階で亀岡、綾部、両聖地の土地譲渡登記の書面を私に整へさせられた訳であります、其処へ手紙が来たものだから前から何とした事だらうと思ふて、それから直く様其の見た時刻と見た場所は……それからそれを見て貰はねやならぬ、警部補さんに直ぐ其手紙を見て頂きまして何月何日何時特高課に於て、それは城さんと云ふ警部補でございます、城警部補の前で其書面を開封すると城さんでございます、城さんと云ふ方に一応承諾を経てさうして私は其の王仁三郎氏の手紙を貰ふた時に前からのさう云ふ経緯がありますからさうすれば立つても坐つても居られぬ感じがしたのであります。
 それで其手紙が若し私が亀岡で受取つたとか或は特高課からさう云ふ様に手渡して受けることが一日早いならば此の登記をせずに済むのである、王仁三郎氏に対しても又全体の大本関係の方に対してもなんとしたことだらうと思つて私はそれは実に当惑したのであります、其事は高橋警部さんにもよく事情を申し上げまして面会が出来たのでありますから此の事情の前後を一つ御伝達願度いことを宜しく御願ひしますと言ふ事を私申出て居ると思つて居つたのでございます今も其事を考へると実に胸一ぱいにございます、大抵許された事は同誌にもきつぱり書いてあります、其手紙及、委任状取消関係のことは前田弁護人及富沢弁護人に私交付致しておる訳であります、そして私は会計の仕事なんかして居るのでありますが、多少動産の譲渡関係に付ては心得があるのでありますが、過日ちよつと申上げた通り有夫の婦であります、有夫の婦は夫の承諾を得なくては土地所有権の移転は出来ぬのであります、私は御当人からの委任状が来たのでありますが其時に果して出口王仁三郎とおスミさんは何所で協議をなすつたであらうかと云ふことも私の胸には浮んで居つたのであります、そして其事に就て富沢弁護人から度々其承諾書があるかと仰せになつたのでありますが私どうも其当時のことを、はつきりせぬのですから取締の関係に於てはそれは其の有夫の婦は夫の承諾書がなければ所有権の移転は出来ぬと思ひますと云ふ事だけ申上げたのでありますが、只今伺ふと其承諾書が付いて居つたと云ふことになつて居るのでありますが、王仁三郎氏も刑務所に拘留してあります、又スミさんも刑務所二拘留してあるのですから、まさかスミさんが御主人に向つて綾部の土地を売りますぞ、綾部の土地を綾部の町役場に譲渡致しますでと云様なことを考へると一層私の胸には堪らぬ苦が起るのです、昂奮しますから、此辺でこらえていただきたいと思ひます。
裁判長 今の事実高橋、什うだどうだ。
答 私は先に申上げた以外には何も関係して居りませぬので其の判を今中村は預つたとか何とか云ふようなことを云はれましたがどうも其辺はつきり記憶ありませぬから──。
裁判長 中村に持つて来いと命じて中村を綾部、亀岡に帰さしてだね、さうして警務の警部の前でお前預つたと云ふのはどうです。
答 判を預つた……。
裁判長 判を預つたかと、云ふことは訊いて居るぢやないか、具体的の説明を聞いてお前から持つて来いと云はれて向ふに持つて来て警務課の警部の前でお前に渡したと斯う云ふのです、どうです。
答 預つたか知れませぬ、私どうもはつきり記憶ありませぬが。
富沢弁護人 預つたのですな。
裁判長 さう云ふことをね、さう云ふ様なことを云ふと、預つたら預つたで宜いぢやないか。
(此時出口スミ「天皇陛下様の御前ではないか」と云ひ奇声を発し暫し止まず)
出口スミ 済まぬことでございます。
(此時尚も出口スミ奇声を発し止まず)
出口王仁三郎 これこれ(と云へ〔ひ〕ながら出口スミを宥む
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