文献名1大本史料集成 3
文献名2第2章 裁判所資料 >第6節 控訴審判決書よみ(新仮名遣い)
文献名3控訴審判決書(15)よみ(新仮名遣い)
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概要大本が日本の皇統をどのように捉えていたかを文献に基づいて検討する。大本は天皇を天照大御神の神業を現界に実現する統治者とし、万世一系の皇統を尊重していたと認定する。王仁三郎や国常立尊等を天皇に代わる存在とする検察側の解釈を退け、皇道大本信条の「主師親三徳具足神」も最高神を指すもので、不逞な意味はないと判断する。
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データ最終更新日2026-06-17 13:05:58
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㈢ 次に大本は神国日本の皇統に対し如何なる見解を持し居るやを先づ文献に就き之を観るに、
神霊界大正六年二月号(同証第九三号)信仰の堕落の記事中第十一頁(出口王仁三郎全集第一巻第一三九頁)には、天御中主神は第一着手として理想世界を造営せらるるが為めに第二位の神と成りで顕現された、これが霊系の祖神高皇産霊神である、この理想世界は即ち神霊界で無論凡眼の観る能はざる所凡智の察する能はざる所である、ただ霊眼霊智を以て之にのぞめば天分に応じて程度の大小高下はあるが、其一端を窮知せしめられる、次に天御中主神は第三位の神となりて顕現し物質世界を造営された、それが体系の祖神神皇産霊神である、天御中主神は三種の顕現を以て先づ其神徳を発揮されたが無限の神徳は無論このやうな簡単な事で顕はし切れるものではない、そこで此天地鋳造の神はミタマを分けて随所に顕現して次第に複雑完備の域に進ましめられたが、天照大御神の時に至つて理想世界を完成した、次に此理想世界の姿を地上に写し出すが為めに天孫瓊々杵命を日本国に降して、地上の主宰者の地位を確定し同時に神子神孫を世界万国に下して之を経営せしめられた、
同大正六年三月号(同証第七二四号)大正維新に就いての記事中第十一頁(出口王仁三郎全集第一巻第三四九頁)には、抑々国体経綸の根本義は其の渕源する処最も高遠なもので古事記の真義大精神を奉唱せないものは其経綸の真相を窺知する事は出来ないのである、掛巻くも畏き宇宙の統主天之御中主神より世界修理経綸の大命を享けさせ給へる伊邪那岐神は御子天照大神に天下統治の大権を授け給ひ、皇孫邇々岐命は世界経綸の本能を保有する、草那芸神剣即ち大日本神国日向高千穂峰に鎮座し給ひ世界の人文を開発して天下統治の神権を行使すべき時運の到来を待たせ給ひし事今日に到る迄実に一百八千万年である、実に世界統治の神権は万世一系天壌無窮に享有し給ふのである、故に世界平和の皇道治国安民の経綸は祖宗の御遺訓として万世一系に伝承し給ふ、これ即ち皇典古事記である、皇祖天武天皇が古事記を以て斯乃邦家之経緯王化之鴻基也と詔り賜ひし所以である、
同大正七年八月十五日号大八洲号(同証第七二四号)皇典釈義の記事中第二十二頁には茲に宇宙統理の大権を付属あられし事三度なりき、即ち第一次は天神諸命以詔、伊邪那岐、伊邪那美に柱神に国土修理固成の大権を付属し玉ひ賜ふに天沼矛を以てしたまひ、第二次は伊邪那岐命が御頸球之玉精母由良邇取由良迦志而天照大御神高天原統理の大権を付属し給ふに御頸珠、名、御倉挙之神を以てし玉ひ、第三次には天祖が葦原中国を其皇孫瓊々杵命に授け玉ひ統理の大権を付属し玉ひ賜ふに八咫鏡を以てし「此之鏡者専我御魂而如拝吾前伊都岐奉」と詔り玉ふ、この三次の御付属は宇内一君の御系統を立証し万古不磨の大権所有の大君主を立証したる御神事也、尊哉、畏哉、大権三次の御付属也、大権付属の際には常に賜物ありし也、第一次の天沼矛、第二次の御倉挙神、第三次の八咫鏡「第三次は鏡に添ふるに剣と玉とを以てし玉ふ」この三種の神宝は宇内統理の大君主が常に所持して修理、固成、統治、経綸、顕正、尊祖の本義を実行し玉ふ所の大御宝也、特に第三次に於ては宇内統理の主として最後に降し玉ふ君なるが故に鏡に添ふるに剣、玉を以てし玉ふ也、御神慮の程察し奉るだに畏き極みなり、三種神器の伝はります所に即ち大統御の御君権は在る也、八坂瓊玉は大日本国至尊の大御霊体を示し草薙剣は大八洲国至尊の大御真道を示し八咫鏡は大日本国荘厳の大御霊境を示し玉ふかと拝察せらる、この三種神霊の照り照る上に大日本国の教は成立する也、天上に於ける宇内一君の真意義を地上に伝へて万世一系の皇統が在しますのは地球上何国だらう、而して宇内一君たるその一君が全宇内の一切悉くの総本家であるといふ、宇内家族制の真実を地上に伝へて居るのが何国だろう、宇宙即皇室界であつて皇室界の臣民は悉く皇室の分家分身でこの分家分身の一切が営む作業が一皇室の作業たり、経営たるに外ならぬといふ真意義を地上に在つて現実に顕示しその義の如くは行はれて居るのは何国だらう、一国の君がこの国全体の主君であり、大祖宗より継く所の宗家であり、一国の師表たる三徳具備の国が地上に在るだらうか、天に在す大御神が有し玉ふ権威の剣と慈愛の玉と明智の鏡とを地上に伝へた国は何国だろうか、かく天皇の霊威か国土とその国王とに使命を下して遙に天上より絶大の冥護を垂れ玉ひ、皇天の稜威を直に地上に移して万有の主鎮たる権威を垂れ玉ふ国柄は日本国を措いて他に決して見る事能はざる也。
同大正七年十月一日号(同証第七二四号)世界の経綸の記事中第十一頁には、天地開闢以来依然として高天原に成り坐せる皇大御親神、天之御中主大御神より伊邪那岐大御神の御経綸の終りに於て御皇祖天照大御神の御神勅に因りて御子正勝吾勝勝速日天忍穂耳命に天下を治むる御天職を授け玉ひ御皇孫天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇々芸命に五伴緒命に種の神器と三神を添へて賜ひて世界を経綸し、天下を治むる制詔を授け給ふ、茲に皇孫命は筑紫の日向の高千穂に坐しまして、天運循環の神則に因りて人文開発し天津日嗣天皇の御天職を顕彰し給ふ時運の到来を待ち給ふ、この御子天津日高日子穂々出見命、この御子天津日高日子波限建鵜茅不合命、この御子若御毛沼命亦の名豊御毛沼命亦の名神倭伊波礼毘古命と称す、後世この命に神武天皇の御謚称を奉る、これより万世一系御歴代の天皇は和光同塵の神業を垂れ給ひ、明治の御代に至り天運茲に循環して世界の人文を以て皇道を宣揚教化せしむるの智域に達し、交通機関の発達は弥々益々天津日嗣天皇の御天職を顕彰し以て世界を総攬統一するの機運を促進せり、嗚呼盛なるかな大正、昭和の鴻業の曙光、大日本は神国なりと称する所以実に斯に存するなり矣。
同大正八年十月一日号(同証第七二四号)綱領の記事中第一六頁には政は万世一系也、天照大神の神勅を奉じて天上より下土に降臨し給ひ、主師親の三徳を具備して全世界を平けく安らけく召知し玉ふ天津日嗣天皇の御天職であります、由来天上の厳正なる御政治を地上に移させ玉ひし神聖の国土は豊葦原の水穂中国なる我日本国であります、(中略)其天上の神聖なる政治を地上に移して天上と地上との真釣に真釣り合せて神政を布き施し玉ふは、我天津日嗣天皇の惟神に定まれる天職であつて決して臣民の夢にだも窺ひ挙るべき事柄では無いのである、中世平将門や弓削の道鏡の輩が畏くも天位を窺ひ奉つた事がありましても、忽ち天譴降下遊ばされて遂に滅亡したのも皇国天位の尊厳無比にして神聖霊聖犯す可らざる証拠であります、
同大正八年一日号(同証第七二四号)随筆の記事中第十一頁には、霊主体従の主宰神たる天照大神は世界を御統一遊ばさるるに就て、表現神たる天津日嗣天皇を豊葦原の中津国に降し給ひ、体主霊従なる大国主命を帰順せしめて天の下四方の国を安国と平らけく知食し玉ふ時代が既に到来したのである、日本天皇の世界を統一経綸遊ばすのは外国の大国主命系の主権者のやうに侵略したり植民地を拵えたり成されるのではない、天照大神の神勅は言向和はすのである、徳を以て世界を導くのである。
同大正八年十一月一日号(同証第七二四号)大正八年八月十一日附王仁三郎の筆先中第四頁には、日本には天照天神様の万古不易の動かぬ神教があるから、此の教を忘れて向ふの国の悪神の遣方を致したら到底世界は安心して暮すことは出来ぬから、日本神国の人民は一人も残らず天照大神様の御血筋を立て麻柱の誠を貫いて行かねばならぬ。
同大正八年五月十五日号(同証第七二四号)神諭中第十二頁には、日本は結構な神国であり天子は天照皇大神様の直系の生神様であるから是れ位立派な神国は此の広い世界に外に一つも無いなれど、日本の守護神人民は全然四つ足の精神と日本魂と摺替られて了ふて、今の人民の行状是れでは到底神国の責任が果せぬから、永らく出口の手で充分気を附けたのであるぞよ。
同大正七年二月号(同証第七二四号)皇道大本の真相の記事中第三七頁には、宇宙整理の大基礎が成ると次に天帝は理想世界たる神界の造営に着手され、所謂八百万の神々が現はれました、神界主宰の大神は天照皇大神でありまして天帝の御霊徳一切を継承体現されて居ます、之が済むと今度は物質世界たる現界の創造に着手され神界其のままの模型を地上に顕はしました、地上一切の動植物や人類は神界の分霊であります、而して天照大御神の御霊統は我皇室に伝はり我皇上は世界主宰の大君たる天賦の御霊徳をお具へになつて居ります、
出口王仁三郎全集第一巻(同証第一、八一〇号)大祓祝詞解の記事中第一七五頁には、全大宇宙間には陰陽に系の御神霊が実相充塞しそれは即ち一切万有の父であり又母である、陰陽に神の神秘的産霊の結果は先づ一切の原動力とも言ふべき言霊の発生となつた、所謂八百万の天津神の御出現であり御完成である、天界主宰の大神は云ふまでもなく天照皇大神であらせらるるが其次に起る問題は地の世界の統治権の確定である、是に於て神廷会議の開催となり其結果は天照皇大神様の御皇統が全世界の統治に当らるる事に確定し、治国平天下の大道を執行監督さるべき天の使命を帯びさせらるる事になつたのである、無論人間の肉体は世に生死往来するを免れないが、其霊魂は昔も今も変ることなく千万世に亘りて無限の寿を保ちて活動さるるのである。
神霊界大正七年八月一日号(同証第一、〇六一号)初発の神勅義訓㈡中第五頁には、共和政体君主専制政体主憲君主政体は日本の神国には絶対不適当ぞよ、神政復古の神業遂行して天立君主立憲政治の国体に建直すのであるぞよ、
出口王仁三郎全集第五巻(同証第一、八一〇号)謡曲言霊録の記事中第二六三頁には、抑も我が天津日嗣天皇様は天地開闢の初発より天津神の選定し、天降し給ひたる天立君主に在しまし天地万有一切を治し召し給ふ御天職であらせらるるを以て宇宙一切の神人は皆天照大神の御子孫たる天皇の御支配を受けねばならぬのである、
道の栞(同証第四、〇九三号)二の巻上二五には、我が日本の天皇は此の世界の司宰に坐しますのである、天帝よりの御定めである、即ち吾地球十五億の生民の親である、此の世に於ての厳の御魂である、同中七二、我国の天皇は皇祖天照大御神の裔なれば最も敬はざるべからず、天皇陛下を敬ふは即ち神を尊とみ敬ふに等しきなり、とあり之等を綜合考覈すれば宇内統理の大権は天之御中主大神より伊邪那岐、伊邪那美に尊を経て天照大御神に伝へられ天照大御神が皇孫瓊々杵尊を豊葦原瑞穂国に降し給へるは、宇内一君の真意義を地上に伝へて地上に理想天国を建設せんが為なり、而して皇孫瓊々杵尊より皇統を継ぎて万世一系の宝祚を践み給へる神国日本の天皇は天之御中主大神より伝承せられたる宇内経綸の理想を現界に実現せんが為地上に顕現し給へる現人神なり、故に全世界を統一して至仁至愛平和幸福なる神国を建設せらるるは天津日嗣天皇の惟神に享有し給へる天職なりと謂ふに在り、斯る主張は大本文献の随所に散見する所にして其所説は前記大本の宇宙観、神霊観より来る当然の帰結なれば之を以て大本が其の不逞思想を隠蔽せんが為の擬装なりと為すは失当にして被告人中一部の者の予審に於ける大本の説く皇道は表看板保護色にして、真の皇道に非ずとの供述及大本の文献中天津日嗣天皇、神皇陛下、皇上陛下、現人神等とあるは王仁三郎を指称するものなりとの供述は孰れも措信し能はざるものなり、
茲に最も疑点の存するは教祖ナカの筆先なり、ナカの筆先は王仁三郎に於て漢字混り文とし大正六年二月以後の神霊界に掲載発表せられ其の主なるものは、大本神諭、天之巻及火之巻(同証第一、七一九号)に集録せらるるところなるが、
㋑ 天之巻第二頁明治二十五年旧正月……日附筆先中、神が表に現(れて三千世界の立替へ立直しを致すぞよ。用意を成されよ。この世は全然の肉体は末代神の御用を致さすなり。男子の肉体は末代変性女子の身魂を選り抜いて世を治めさすなり。此の経綸は何時になりても変える事は出来んのであるぞよ。
㋩ 同第四八六頁明治四十三年旧九月十日附筆先中、出口直の身魂は男と女と二つになりて、神の世一代の永い間の苦労艱難を茲まで耐り詰めて来た徳に由つて三千世界の御地面を天の大神様から請取りて万古末代続かす御用と成りたぞよ。
㋥ 同第三四八頁大正六年十月十六日附筆先中、天のミロク様と地の先祖とが末代の世を持ちて治めて行かねば、外の神魂では末代の世は続いて行かん斯の世であるぞよ。
㋭ 同第四九二頁明治四十三年旧九月二十八日附筆先中、出口は世の元尊とい地主であるぞよ。出口直が初発の教祖、海潮が坤の金神、澄子か禁闕金乃大神三代の御世継が出口直霊…地は出口の霊統○○は元の天照皇大神宮の御血筋で末代続かす仕組が仕てあるから、天と地とを揃へて太古の神代に立替へるぞよ。天では天照皇大神宮殿、地の世界は元の国常立尊変性男子の御魂の宿りた、出口直の血筋で末代続かす経綸が致してあるぞよ。
㋬ 天之巻第八頁明治二十六年……月……日附筆先中、お照しは一体七王も八王も王が世界に在れば、此世は口舌が絶えんから日本の神国の一つの王で治める経綸が致してあるぞよ。
㋣ 同第九三頁大正六年旧二月九日附筆先中、日本の国に一輪咲いた梅の花三千世界を一つに丸めて一つの王で治めるぞよ。
㋠ 火之巻第四七二頁明治四十三年旧四月十八日附筆先中、是だけ世界に沢山王がありては治まらんから、神が表に現はれて七王八王を陣曳いたさして、日本の誠の神国の万古末代動かぬ一つの王で三千世界を治めるぞよ。
㋷ 天之巻第八四頁大正五年旧十一月八日附筆先中、天は至仁至愛真神の神の王なり。地の世界は根本の大国常立尊の守護で日本の神国の末代動かぬ神の王で治めるぞよ。我好しの行り方では此世は何時までも立たんぞよ。この世界は一つの神の王で治めん事には、人民の王では治まりは致さんぞよ。日本の王は神の王であるぞよ。外国の王は人民の王であるから……。
㋦ 同第九二頁大正六年旧二月九日附筆先中、七王も八王も王があると国土が治まると云ふ事が無いから、七王も八王もあるカラの国を○○○げて世界一つに丸めて神国の世に致すには此の世の元を拵へた日本の天と地との根本の真の王で治める時節が参りて来たから、明治二十五年から今に続いて知らしてあるぞよ。
㋸ 同第五頁明治二十五年旧正月……日附筆先中、氏神様の庭の白藤、梅と桜は出口直の御札の庭木に植さしたのであるぞよ。白藤が栄えば綾部宜くなりて末で都と致すぞよ。福知山、舞鶴は外囲ひ十里四方は宮の内、綾部はまん中になりて金輪王で世を治めるぞよ。綾部は結構な所、昔から神が隠して置いた世の立替の真誠の仕組の地場であるぞよ。
㋔ 火の巻第三四頁明治三十三年閏八月四日附筆先中、艮の金神世の元で世の終で今度が金輪際で世を立替へて神世の元に成るのじやぞよ。金輪王で世を治めて万古末代続く天○天○、大○士○拵へて元の昔に戻すのじやぞよ。
㋻ 同第四一三頁大正七年旧二月二十一日附筆先中、天照皇大御神様が天の御先祖様であるなれど今迄は世が逆様になりて居りた故に、地の先祖までも斯の世にない同様に為てありたので斯の世は薩張り永い間暗黒界となりてありたのが、時節が参りて日の出の守護になりたぞよ。至仁至愛神は善一つの何とも譬へるものもない円満至真の何処まで往つても角の無い世界の主師親三徳具足神であるぞよ。天ではミロク様なり地の世界は大国常立尊が構はねば外の御魂では到底此の乱れ切つた世を立直して誠一つの神国にいたす事は出来ぬぞよ。
等の筆先は孰れも不逞の思想を表現したるものにして一つの王、神の王、金輪王は、天皇を指すに非らざるやの疑問を存し、被告人中一部の者は予審に於て右は王仁三郎を指称するものなる旨供述し居れども、ナカの筆先を通観するに其中には不敬と目せらるる語辞尠からずと雖も之に現はるる思想は、ナカの不遇なる境遇と其の当時の世相を反映し欧米崇拝思想、唯物思想、現実主義思想に対する反感より来る排外思想、唯心思想、復古思想を表現し個人道徳の頽廃上流社会の不道徳、政治の矛盾、国際戦争の不合理を攻撃し腐敗したる社会を根本的に救済するには先づ個人の改心より発し国家社会を大革正(おほたてかへ)して全世界を統一し一君主の下に平和幸福なる理想世界を建設すべきことを説きたるものにして、其の中に天皇に対する不逞思想を包蔵するものとは認め難く、却て其の基底には尊皇愛国思想の流るるを看取するに難からず、例へば、火の巻第二七〇頁大正五年旧十一月八日附筆先中、日本は神の初発に修理へた国、天の親国であるから世界中を守護する役目であるぞよ。
同第三二三頁大正六年旧九月五日附筆先中、日本は神国霊主体従の尊い国であるから……、同第三七〇頁同年旧十一月二十三日附筆先中、日本の霊主体従の一と申して二の無い国を天竺や外国と同じ如うに致して……天之巻第四二頁明治三十六年旧正月三日附筆先中、七王も八王もある国を誠一つの日本の神力で往生致さして、世界中の安心が出来るやうに致して昔の元の神世に復すぞよ。同第二〇頁明治三十一年旧五月五日附筆先中、日本の国の上に立ちて居りて今迄けつこうに暮して居りて天皇の御恩といふ事を知らずに口先ばかり立派に申して居りてもさあ今といふ所になりたら、元来利己主義の守護神であるからチリチリバラバラに逃げて了ふもの斗りが出て来るぞよ。同第二三頁筆先中、日本の人民の天からの御用は三千世界を治め神の王の手足となりて、我身を捨てて神皇の御用を致さな成らぬ国であるから、外国には従はれぬ尊い国であるのに今の日本の人民は皆大きな取違ひを致して居るぞよ。火之巻第八三頁、明治三十六年旧二月二十九日附筆先中、日本の国は別として王天下は永うは続かんと申してあるが、何事も時節が参りて来て明いた口が塞がらん事が世界には出て来るから……(日本の国は別として……は同第三二〇頁大正六年旧九月五日附筆先にもあり)
尚神霊界大正十年四月一日号所載、明治三十四年旧七月十五日附筆先中、今度は二度目の天の岩戸を開くと申せば日本の天皇陛下でもお変り遊ばす様にも思ふ者もあらうが仲々そんな事は神はささんぞよ。天津日嗣の御位は幾千代迄も天照大神様の御血筋故益々栄へます様に艮の金神が世界の事を知らして、日本人は日本の行を致して神の国立てる日の本の帝の光を三千世界へ告げ知らし外国からせめて来てもさあかなわんと云ふ所で、神がまことのものを集めて日本の国を守り大君の光を世界へ照らして、世界中一つに致して日本の天皇様に従はす様に致す為に艮の金神が三千年の昔から苦労致したはじまりであるから、此事が腹へはいらんと誠の御蔭は無いぞよ。四方春三がよい鏡ぢや。明治二十五年からの筆先をよく腹へ入れて見よ。此神は日本の大将に何事も知らして蔭から守ると申してあらうがな。日の出の神の苦労と共に出口の苦労を基礎に致すと書いてあらうがな。にほんだましひを研き上げて、てん子様へ一つの忠義を立てさして末代名を致す綾部の大本であるぞよ。の如し尤も右神霊界所載の筆先は大正十年事件当時大本の機関紙なる神霊界に掲載せられたるものにして、王仁三郎に対する予審第十九回訊問調書には右筆先は自分と浅野和三郎及吉田裕定が不敬及新聞紙法違反罪にて大正十年二月検挙せられ自分は同月十二日勾留でふれたるを以て、当時大正日日新聞の編輯長にして神霊界の編輯を為し居たる大本の幹部松村仙造が皇道大本の目的は我国の国体を変革して自分が日本の統治者たらんとするものに非ざることを弁解せんが為自分の留守中教祖の書きたる未発表の断片的の筆先を綴り合せたるものなる旨の供述記載あるも、当審公判調書中証人梅田常次郎及谷本和雄の供述記載(第十回及第十四回公判調書)、当院押収に係る証第五、〇〇一号筆先写本の記載並大正十年事件記録(同証第四、二九〇号の六及七)中証人梅田常次郎の供述記載は第二、三回証人訊問調書第二、二七二丁第二、三一七丁)に徴し該筆先は右大本事件を有利ならしむる為松村仙造が作成したるものに非ざること明なり、
尚多数の被告人は予審に於て大本の教典其他の文献には忠誠を説きたるものなしと供述し居れども、出口王仁三郎全集第一巻に集録せられたる論説の如き敬神尊皇愛国を説きたるものに非ざるは無しと云ふも過言に非ざるのみならず、大本の教典中最も不穏のものなりと目せらるるナカの筆先に於てすら前掲文辞の存するより之を観れば右予審の供述も亦真実に非ざるものと断ぜざるを得ず、叙上の如くにして前記尚乃至㋻の筆先中田㋑の筆先の前後は大本の根本主張たる立替立直を高唱したるものにして、後段の伏字は「てんしは綾部に仕組が致してあるぞよ。てんしてんかを拵へて元の昔に返すぞよ」「東京は元の薄野になるぞよ」と読むべきものならんも右は綾部遷都の事を予言したるものにして斯る予言の不穏なることは論外とし、不逞の意図を表示したるものとは認め難く、㋺の筆先は火之巻第四八七頁第四九二頁にも同旨のものありて、大本の世嗣に就き教祖の意思を表示したるもの、㋩㋥㋭は孰れも国常立尊の霊代なりと称せるナカ(ナカ死亡後は王仁三郎)が立替立直の担当者、立替後の世界の守護神なることを説きたるものにして、地の王は天の王に対し(例へば火之巻第一八五頁第一九五頁)、天之御中主大神より大権を伝承せられたる皇統を以て天の王と為し、所謂国祖国常立尊を以て地の王と為しナカが其の霊代たることを表示する為「地主」と書きたるものと解するを相当とす。㋬乃至㋠の「一つの王」㋷の「神の王」㋦の「真の王」は同一義にして孰れも天皇を称し奉るものと解すべきこと
「日本の神国の一つの王」「日本の神国の末代動かぬ神の王」「此の世の元を拵へた日本の天と地との根本の真の王」とあるに依り疑なく国常立尊の霊代たるべき者が「一つの王」「神の王」「真の王」と為るべき趣旨に非らざることは「地の世界は根本の大国常立尊の守護で日本の神国の末代動かぬ神の王で治めるぞよ」とあるに徴し明なり、而して㋸及㋦の金輪王に付きては神霊界大正九年五月二十一日号所載王仁三郎の二霊活動と題する作歌中第二〇頁(前略)、㋥神霊開祖の身魂宣はく、明治三十一年の、紅葉の綿織る秋は、我身魂にいや優る、金輪聖王現はれて、五六七の神の宮代が綾の高天に下りなん、是れぞ瑞の御魂なり(中略)、㈤厳の御魂は経の役、天の位火の活動、男霊女身に在しませば、変性男子と申すなり、瑞の御魂は緯の役、水の活動地の位、女霊男身にましませば、変性女子と申すなり、経火の御魂は厳格に、直情経行緩みなく、水の御魂は万物を、愛養撫育し穢れたる 物を洗い糞便と、共に交はり毫末も、厭ふ色なき仁愛の、神徳深くましまして、地上の慈母と出現し、金輪聖王弥勒神、神素盞嗚の神代と、三つの御魂を金の神(後略)、とあるに関聯し金輪王は王仁三郎を指称するものなりと論ぜらるるも、右の歌はナカ及王仁三郎の霊代関係を詠じたるものにして金輪王は本来仏語にして七宝を成就し須弥山の四州を統治する最も勝れたる王を指すものなるも、神霊界大正九年五月一日号第二五頁には須佐之男の神の命の佐木はひに金輪王の世界統一とあり、同誌同月二十一日号第十二頁には(前略)山の名さえも高峰の、その頂上に宮柱、太知り建てて千木高く、しづまり居ます天竜の、神の社の大前に、皇大神の神勅を、奏上せむと御扉を、開くや忽ち内陣に、進む教主補王仁三郎、忽ち神人感合し、瑞の御霊の現れて、いと厳かに宣まわく、当山守護の諸竜神、大和諸山の諸眷族、日本国中諸仏神、直に茲に集りて、神の言葉を聞こし召せ、大正維新の神業は、金輪王の神命を、神仏に遵守して、五六七出生の暁の、其の御尾前に根限り、力の限り尽されよ、早く綾部の高天の、聖地に昇りて神政に、参加すべしと詔り玉ふ(後略)、とあるに徴すれば大本の文献にて金輪王とは天照大御神又は皇統を指し王仁三郎を暗示するものに非ざること明なり、最後に㋻の筆先に付き「至仁至愛神は善一つの何とも譬へるものも無い円満至真の何処まで往つても角の無い世界の主師親三徳具足神であるぞよ」とある「おつきさま」は
「円満至真の何処まで往つても角の無いおつきさま」なれば月の神なりとし天之巻第六五頁には変性女子の御魂は月の大神であるから……とあるに依り結局主師親三徳具足神は瑞霊真如聖師瑞月と号する王仁三郎を指称し、従て皇道大本信条第四条の皇上陛下は万世一系の皇統を継承せられ惟神に主師親三徳を具へて世界を知ろし召さるる至尊至貴の現人神に坐しますことを信奉すとある皇上陛下及現人神は天皇を指すものに非らずとの論説あれども、火之巻第二五九頁大正五年旧五月四日附筆先中、日本は根本の天の御先祖様が撞能大神様であるのに……同第三三四頁大正六年旧九月三十日附筆先中、天の御先祖様が天御中主大神であるぞよ、全智全能神様であるぞよ。天之巻第一九九頁大正四年旧四月六日附筆先中、地の世界は元の先祖の国常立尊の変性男子の身魂が現はれて来ぬと至仁至愛神の御出現は無いのであるぞよ。ミロク様が御出現におなり成されて変性女子が現れたら世界は一度に動くぞよ。との記載に対照すれば至仁至愛神を月の大神と為すことの不合理なること明白にして主師親三徳具足神とあるは撞能大神を指し、撞能大神は全智全能神なることを
「円満至真の何処まで往つても角の無い」と形容したるものなること明なり、従て皇道大本信条第四条に不逞の意義を包蔵すと為す論説は採用の余地なし、