文献名1東京朝日新聞
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3昭和11年3月14日 朝刊よみ(新仮名遣い)
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OBC NPTAc19360314A1
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本文
王仁三郎等七名
けふ愈々収容
中村純一だけは財産処分の決定まで強制留置
【京都電話】京都地方検事局では十三日は朝来異常な緊張振りを見せ
各係り検事は早朝から揃つて命令を待ち侘びて居る折柄午後零時十分過ぎ司法省に在る徳永検事正より小野主任検事宛『同日午前十時三十分司法大臣の起訴認可ありたり』との通達に接した、検事局ではあわただしい空気が漲り、間もなく午後二時過に至り大阪控訴院吉益検事長よりの『起訴命令』に接したので
鈴木(上席)小野他各係検事は堀部次席検事と協議を遂げた後王仁三郎以下八名に対して第一次の処分を断行正式に起訴同時に予審を請求した、次いで中村純一を除く王仁三郎等七名は西川予審判事の拘引状執行により身柄は同夜警察署預けとして今十四日中京刑務支所に収容されることになつた、中村純一は大本教会計課長の任に在り今後大本教の財産処分や被疑者への差入その他会計上の問題が残されて居るため拘引状は発せられず不拘束のまま起訴予審に回附されたもので、身柄は強制留置の形式で財産処分が決定するまで警察に預けられる
両代表を召喚
命令通達
きのふ警視庁から
内務省からの大本教解散の正式訓令が到達するや警視庁では直に昭和神聖会に対して四谷署を通じ責任者の出頭を命じたので同会からは経理主任松山隆一氏が代表として十三日午後三時出頭、直に庁内特高課長室で毛利課長が訓令を読み上げ正式結社禁止を申し渡したのち
一、只今から昭和神聖会は解消したわけだから会としての集合、行動は直に法に触れることになる、この点特に注意されたい
一、祭壇、建物等は追つて次の命令があるまで現状のままにして置くこと
の注意を与へ、更にその場で訓令の受書を提出させた、この間二十分松山氏は蒼白な顔で「この命令を直に会の皆さんに通達してはいけませんか」とおどおどする、毛利課長は「今も申し渡した通り集合協議することは許されぬが個人の資格で通達したがよからう」と答へた、松山氏は語る
今命令を受けたばかりでどうしてよいか判りません、それに祭壇等はそのままにして置けとのことですから本部に帰つて次の命令を待ちます
直に同四時、杉並の紫雲郷別院の留守責任者大塚泰三氏が出頭、千速特高係長から『追つて通知するまで祭壇及び建物はそのままに保管する様』との注意を受け辞去した
信徒の動向に腐心
凡ゆる機会に邪教離脱に導く
内務省警保局の方針
大本教は解散命令の大鉄槌が下りここに全く潰滅に帰したが全国に散在する信者約三十万(うち帝都の信者約二万)は今後どうなる?何分「心の問題」であるため信者の宗教的動向は今後に残された難問題であるが、それだけに内務省警保局当局は慎重に考慮、首脳部の間で早くもこの三十万信者を先づ「どうする」といふ協議に入つた
当局では大本教の信者のほとんど総ては大本教が如何なるものであるかを全然知らずして信者となつたものであるから、邪教の本体が斯く暴露された以上信者の宗教的良心は極めて善導し易く、その全般的改宗は時の問題であると一面楽観的な態度をとつてゐるが
警保局当局が差当り信者の改宗に対してとるべき具体的方法は文部省当局並に全国各府県の社寺課、宗務課両当局と協力し
一、全国各地方において機会ある限り信者の幹部的人物を集め大本怪教義の真の意義を知らしめる
一、講演会等を利用して大本教首脳部が如何なることを計画しつつあつたか、国体変革を目論見如何なる不逞、不敬的言辞を弄し、行動しつつあつたかを知らしめる
といふのであり、当局としては更に全国各警察署特高課と密接な連絡をとり、常に信者の宗教的動向に注意し、彼等をして大本教から完全に離脱せしむるやうあらゆる努力を盡すことになつた