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文献名1霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
文献名2第5篇 御玉の争奪よみ(新仮名遣い)みたまのそうだつ
文献名3第42章 八尋殿の酒宴の二〔42〕よみ(新仮名遣い)やひろどののしゅえん(二)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-12-04 12:30:30
あらすじ
挑発に乗って玉を取り出した五柱の神々と竹熊たちは、玉を取り出そうとしない竜宮城の五柱の神々を責め立てたが、高杉別、森鷹彦、鶴若、亀若、時彦らはどうしても挑発にのらなかった。

竹熊らは玉を出さない五柱の神々に虐待を加え始め、汚い虫や牛馬の糞尿を無理やり食わせた。しかし五柱の神々は拷問に屈せず、頑として玉の供出を拒否し、生命に変えても玉を離すことはない、と意思をあらわにした。

すると金色の烏が数限りなく現れて、五柱の神々を竹熊の館から救い出し、竜宮城へと連れ帰った。一方で怪鳥がまた数限りなく現れると砂礫の雨を降らせ、玉を竹熊に供出してしまった芳彦、神彦、倉高、杉生彦、猿彦の頭上を砕いて悶死させてしまった。

黄金水の玉は七個までが、竹熊の手に渡ってしまったのである。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月24日(旧09月24日) 口述場所 筆録者桜井重雄 校正日 校正場所 初版発行日1921(大正10)年12月30日 愛善世界社版225頁 八幡書店版第1輯 126頁 修補版 校定版224頁 普及版116頁 初版 ページ備考
OBC rm0142
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本文  ここに竹熊、大虎彦は威丈高になり、高杉別、森鷹彦、鶴若、亀若、時彦を眼下に見下し、
『汝らは竜宮城の神司とはいへ、その実は有名無実にして、糞土神同様なり。玉なき者は、この席に列なる資格なし。ああ汚らはしや』
と塩をふり、臀部をまくり、あらゆる侮辱を加へた。五柱の従臣は、勘忍に勘忍を重ね、これも畢竟悪魔の世迷ひ言に過ぎずとして、つひには少しも耳をかさなかつた。
 玉を差し出したる竜宮城の五柱の神司も、竹熊一派の者も、共に声を揃へて、高杉別以下の神司をさんざん罵倒した。酒宴はますます酣となつた。
 この時、竹熊は左より大虎彦は右より、彼我の手を結びあはせ、円を描いて高杉別以下四柱の神司を中に取まき、悪声を放ちつつ踊り狂ひはじめた。
 五柱の神司は、遁れ出づるに由なく、何時また吾が玉を奪はるるやも知れずと、非常に苦心した。されど竹熊の執拗なる計略も、この五柱の神司の玉のみは、どうしても奪ることはできなかつた。そこで更に第二次会に臨まむことを告げた。酔ひつぶれた彼我の者たちは、一も二もなく、手を拍つて賛成した。
 要するに、玉を差し出したる五柱の神司は、知らず知らずのまに、全く竹熊の捕虜となつたのである。高杉別以下四柱の神司は、いかにして此の場を遁出さむかと苦心すれども、彼らはなかなか油断はしない。やむなく引きずられて、第二次会の宴席に臨むことになつた。
 第二次の宴会は開かれた。ここは以前の席とは変つて、よほど大きな広間であつた。広間は上下の二座に別たれて、上座には八重畳が敷きつめられ、種々の珍宝が飾り立てられてある。席の中央には、得もいはれぬ美しき花瓶に、芳香馥郁たる珍らしき花樹が立てられてある。これに反して、下座には目もあてられぬやうな、汚い破れ畳が敷きつめてあつた。
 各自席に着くや、竹熊は立つて一同に向ひ、
『この席は、玉を差し出したる心美しき者のみ集まる、神聖なる宴席である。玉を差し出さざる心汚き者は、下の席に下れよ』
と、おごそかに言ひ渡した。
 そこで、一同は立つて、高杉別以下四柱の神司を下座に押しやつた。五柱の神司は、この言語道断なる虐待に慷慨悲憤の念に堪へなかつたが、深くこれを胸の中に秘めて、せきくる涙をぢつと押へてゐた。
 上座の席には、海河山野の種々の珍らしき馳走が列べられ、一同は舌鼓を打つて或ひは食ひ、あるひは飲み、太平楽のあらむかぎりを尽してゐた。下座におかれた五柱の神司の前には、破れた汚き衣を纏へる年老いたる醜女数名が現はれて、膳部を持ち運んできた。その酒はと見れば牛馬の小便である。飯はと見れば虱ばかりがウヨウヨと動いてゐる。その他の馳走は蜈蚣、蛙、蜥蜴、蚯蚓などである。五柱の神司は、あまりのことに呆れかへつて、暫しは、ただ茫然と見詰めてゐるより外はなかつた。
 その時、汚き老婆は、
『竹熊さまの御芳志である。この酒を飲まず、この飯を食ひたまはずば、竹熊さまに対して、礼を失するならむ、親交を温むるため是非々々、御遠慮なく、この珍味を腹一杯に召し上れ』
と、無理矢理に奨めておかない。上座よりは、酒に酔ひつぶれた者が集まりきたりて、手を取り、足を取り、無理無体に頭を押へ、口を捻ぢ開け、小便の酒を飲ませ虱の飯を口に押込み、その他いやらしい物を強て食はせてしまつた。
 そこへ芳彦座を立ち酔顔朦朧として、高杉別以下の神司にむかひ、
『貴下らは竹熊さまの誠意を疑ひ、玉を秘して出さざるため、かかる侮辱と迫害を受くるものならむ。よし玉を出したりとて、決して奪はるるものにあらず、速やかにその玉を差し出し机上に飾りたて竜宮城の威勢を示し、もつて竹熊さまの心を柔げられよ』
と忠告した。
 この時、高杉別は首を左右に振り声を励まし、
『吾はたとへ如何なる侮辱を受くるとも、いかなる迫害に遭ひ、生命を絶たるるとも万古末代、この玉は断じて離さじ』
と、キツパリ強く言ひはなつた。残りの四柱神司も同じく、「高杉別の意見に同意なり」と答へた。をりしも、金色の咫尺の烏数百千とも限りなく中空より、光を放つて現はれ、高杉別以下四神司を掴んで、竜宮城へ飛び帰つた。
 つづいて数多の怪鳥は天空に舞ひ乱れ、砂磔の雨しきりに降りきたり、屋根の棟を打ち貫き、宴席に列べる芳彦、神彦、倉高、杉生彦、猿彦の頭上を砕き、その場に悶死せしめた。
 アゝ貴重なる竜宮の黄金水の玉は、惜しい哉、七個まで竹熊の手に渡つてしまつたのである。
(大正一〇・一〇・二四 旧九・二四 桜井重雄録)
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