言霊別命は神命により、あまたの神軍を引率してタコマ山に登り、国魂之神の鎮祭を行わせた。
しかしながら、言霊別命の従神であった速虎彦、速虎姫、唐玉彦、島田彦らは、実は国照姫とひそかに通じていた。彼らは言霊別命に危機を救われたにもかかわらず、邪神と気脈を通じて裏切りを計画していたのである。
タコマ山の祭事が済んで、一行が下山して海岸に出たとき、この四柱の神人は珍味ご馳走で言霊別命らを饗応した。
宴の最中、エトナの大火山が爆発した。その光景に言霊別命が見とれているすきに、四柱の神人は毒薬を持った湯を命に献上した。言霊別命がその湯を飲もうとした刹那、時野姫が命をさえぎり、自分の口に毒湯を飲み干した。
たちまち時野姫はその場に黒血を吐き、悶絶して倒れた。言霊別命も少量の毒に当てられ、言葉を発することができなくなってしまった。速虎別ら四神人は、謀計が発覚することを恐れ、言霊別命を捕らえようとした。
言霊別命は諸神の宴の席に逃げ、一大事を知らせようとしたが、言葉が出ない。諸神らはすっかり酒に酔っていて、言霊別命の真意を悟る者はなかった。速虎別らも、酔っているとはいえ、さすがに諸神の目の前で言霊別命を拉致するわけにも行かず、目を光らせて時を待つのみであった。
言霊別命は仕方なく、酒に酔っていなかった部下の宮比彦、谷山彦、谷川彦を護衛にして竜宮城に一度帰還し、応援を頼もうとした。しかし酒に酔った諸神は一行をさえぎって行かそうとしなかった。
言霊別命はかろうじて竜宮島に立ち寄り、国の御柱命に保護されて、ようやく竜宮城に帰還することを得た。
竜宮島の地下は、多くの黄金を持って形造られている。これが現在の地理学上の豪州大陸に当たる。また、冠島とも言う。