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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
文献名2第2篇 善悪正邪よみ(新仮名遣い)ぜんあくせいじゃ
文献名3第9章 タコマ山の祭典 その一〔59〕よみ(新仮名遣い)たこまやまのさいてん その一
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-11-23 10:55:57
あらすじ
言霊別命は神命により、あまたの神軍を引率してタコマ山に登り、国魂之神の鎮祭を行わせた。

しかしながら、言霊別命の従神であった速虎彦、速虎姫、唐玉彦、島田彦らは、実は国照姫とひそかに通じていた。彼らは言霊別命に危機を救われたにもかかわらず、邪神と気脈を通じて裏切りを計画していたのである。

タコマ山の祭事が済んで、一行が下山して海岸に出たとき、この四柱の神人は珍味ご馳走で言霊別命らを饗応した。

宴の最中、エトナの大火山が爆発した。その光景に言霊別命が見とれているすきに、四柱の神人は毒薬を持った湯を命に献上した。言霊別命がその湯を飲もうとした刹那、時野姫が命をさえぎり、自分の口に毒湯を飲み干した。

たちまち時野姫はその場に黒血を吐き、悶絶して倒れた。言霊別命も少量の毒に当てられ、言葉を発することができなくなってしまった。速虎別ら四神人は、謀計が発覚することを恐れ、言霊別命を捕らえようとした。

言霊別命は諸神の宴の席に逃げ、一大事を知らせようとしたが、言葉が出ない。諸神らはすっかり酒に酔っていて、言霊別命の真意を悟る者はなかった。速虎別らも、酔っているとはいえ、さすがに諸神の目の前で言霊別命を拉致するわけにも行かず、目を光らせて時を待つのみであった。

言霊別命は仕方なく、酒に酔っていなかった部下の宮比彦、谷山彦、谷川彦を護衛にして竜宮城に一度帰還し、応援を頼もうとした。しかし酒に酔った諸神は一行をさえぎって行かそうとしなかった。

言霊別命はかろうじて竜宮島に立ち寄り、国の御柱命に保護されて、ようやく竜宮城に帰還することを得た。

竜宮島の地下は、多くの黄金を持って形造られている。これが現在の地理学上の豪州大陸に当たる。また、冠島とも言う。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月29日(旧09月29日) 口述場所 筆録者谷口正治 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版45頁 八幡書店版第1輯 174頁 修補版 校定版47頁 普及版22頁 初版 ページ備考
OBC rm0209
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本文  あるとき言霊別命は神命を奉じて、宮比彦、谷山彦、谷川彦以下あまたの神軍を率ゐてタコマ山に登り、宮比彦をして国魂之神の鎮祭を行はしめられた。谷山彦、谷川彦は大祓の神事を奉仕し、恭しく太祝詞を奏上し、八百万の神々は神集ひに集ひて、盛大なる祭事は執行された。天地六合いよいよ澄み渡り、空中一点の雲翳をもとどめざる、えもいはれぬ朗かな光景であつた。
 ここに従臣なる速虎彦、速虎姫、唐玉彦、島田彦の四神は、国照姫、田野姫にひそかに気脈を通じてゐた。この四柱は言霊別命の深き恩恵に浴し、しばしば危難を救はれた関係があつて、命は彼らの恩神である。祭事も目出度くすみて、一行は下山し海岸に出かけられたとき、右の四柱はあまたの者と共に、山野河海の珍味をもつて、言霊別命一行の諸神司を招待した。その理由とするところは、今回言霊別命は首尾よく国魂の鎮祭を了へ給ひ、吾ら諸神司は歓喜に堪へず、さればその御祝として、ここに吾々祝宴を張るは、一は神々に感謝し、他は諸神司の労苦に酬いむがためなりといふのであつた。
 宮比彦は速虎彦以下の諸神司の誠意をよろこび、その由を谷山彦、谷川彦とともに諸神司に伝達した。諸神司は大いに喜び、海辺の広場に出でて、宴席に加はり、歓喜のかぎりをつくし、いたく酔つぶれて、前後の区別もなく、あるひは唄ひ、あるひは舞ひ、面白さうに踊り狂うてゐた。

  小雀やささのかげにて踊り出し

 このとき速虎彦、速虎姫、唐玉彦、島田彦は威儀を正し、言霊別命に拝謁を請ふた。さらに美しき神殿に招待し、山野河海の珍味を出して命を饗応せむことを宮比彦を通じて請ふた。ここに言霊別命は何心なくその殿内に入り、四方山の話に打ち耽り、かつ速虎彦らの好意を感謝し、心地よげに一間に入りて休息してをられた。たちまち天の一方に黒煙がたちのぼつた。爆然たる大音響につれて、みるみる一大火柱は天に冲し、岩石の雨を降らし、実に壮観をきはめた。これぞエトナの大火山が爆発したはじまりである。
 言霊別命はその光景に見惚れてゐられる。その隙をうかがひ速虎彦、唐玉彦は器に毒薬を投げ入れ、素知らぬ顔をしてゐた。
『まづ一服召し喫られよ』
と、毒薬の入りたる器に湯をそそぎ言霊別命に奉献つた。命は何の気もなく、ただ一口飲まむとする折しも、息せき切つて走りよつたる時野姫はその湯を奪ひ、ただちに自分の口に飲みほした。時野姫はたちまち顔色蒼白となり、七転八倒して苦悶しはじめ、黒血を多量に吐きその場に打ち倒れた。言霊別命も小量ながら口に入りし毒薬の湯に中てられ、言葉を発すること能はず、ただちにその場を逃れ出むと早々に座を立ちかけた。速虎彦以下の三柱は謀計の暴露せむことを惧れて、言霊別命を捕へ隠さむとし、命の跡を追つかけた。

  火を出して毒湯すすめる曲津神

 万の神司は、前述のごとく、みな残らず酔ひ潰れて足の立つものは一柱もなかつた。言霊別命は、自分が毒にあてられて言語を発することも叶はぬのみならず、時野姫の苦悶昏倒せることを、手真似をもつて衆神司にさとらせむとし、いろいろ工夫を凝らし表情をもつて知らせども、衆神司はその何の意たるか察するものなく、ただ単に言霊別命は酒に酔ひ戯れ踊りをなし給ふものと信じ、己もまた起つて、おなじく手を振り、口を押へ、種々と身振をまねて平気になつてゐる。アゝ言霊別命のもどかしさは、察するにあまりありといふべしである。
 速虎彦、唐玉彦以下の叛臣は、さすがに衆神司列座の前なれば、言霊別命を押さへ隠すをえずして時のいたるを待つてゐた。
 言霊別命はいかに焦慮するも言語を発することができないので、已むをえず意を決してただ一柱竜宮島さして逃げ帰らうとせられた。さすがの勇神猛卒も今は酒のためにその精神を奪はれ、かかる危急の場合に一柱としてその大将を護るものはなかつた。宮比彦、谷山彦、谷川彦は少しも酒を飲まず、言霊別命の身辺を気づかひ、後よりしたがひ竜宮島に安全に送り奉るべく、その座を立たむとするや、酒に酔ひつぶれ足は千鳥の覚束なく、腰も碌に立ちえざる衆神司は、三神司の手をとり足をとり、かかる芽出度き酒宴に列して神酒を飲まざるは神々にたいし御無礼なり。ゆるゆる神酒をいただきたまへと、寄つてたかつて三神司を遮り離さなかつた。三神司は心も心ならず、言霊別命遭難の実情を告げ、衆神司の酔をさまさむと心を焦つた。されど島田彦、速虎姫が眼を光らせて側を離れざるに心をひかれ、その真相を述ぶることができない。そこで三神司は或ひは喩言を引き、あるひは諷歌を唄ひ、あるひは手真似を用ゐて、速虎彦以下の陰謀と、言霊別命の御遭難の次第を衆神司に悟らせやうとつとめた。いづれも酔ひつぶれてこれを覚る者は一柱もないばかりか、三神司の動作をながめて、喜んで歌を詠み、戯れ踊りをなすものと思ひ違ひ、手をとり足をとり、三神司を席の中央に誘ひゆきて胴上げまでして立ち騒ぐもどかしさ。
 言霊別命は万難を排し、からうじて竜宮島にたち寄り、国御柱命に保護されて、やうやく竜宮城に御帰還せられた。この竜宮島の地下は、多くの黄金をもつて形造られてゐるのである。これが今地理学上の濠洲大陸に当るので、一名また冠島といふのである。
(大正一〇・一〇・二九 旧九・二九 谷口正治録)
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