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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
文献名2第2篇 善悪正邪よみ(新仮名遣い)ぜんあくせいじゃ
文献名3第12章 醜女の活躍〔62〕よみ(新仮名遣い)しこめのかつやく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-11-25 15:47:40
あらすじ
常世姫は帰城後ますます稚桜姫命の信任を得て、竜宮城に勢力を張った。一方、言霊別命一派の地位は、常世姫の讒言のために、地に落ちてしまった。

常世姫は魔我彦・魔我姫を通じて、美山彦・国照姫と謀計を練っている有様であった。

魔我彦・魔我姫は色香をもって言霊別命を魔道に陥れようとした。そして、言霊別命が風邪で寝込んだとき、藤姫という醜女を放って、言霊別命の看病をさせた。

藤姫は言霊別命がめまいを起こして倒れそうになったときにわざと助けの声を発して神人を呼び、言霊別命の強要で今まで道ならぬ関係を結ばされてしまった、と嘘の証言をした。

稚桜姫命はこの事件を聞いて多いにお怒りになったが、言霊姫、佐倉姫が泣いて無実を訴えたおかげで、その場は赦された。しかし稚桜姫命の疑念は晴れなかったのである。

また、魔我彦は八百姫という醜女を言霊別命の庭園に忍ばせ、わざと大声を発させて、不倫をでっちあげた。稚桜姫命はついに、言霊別命を蜂の室屋に投げ込んで罰することとなった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月29日(旧09月29日) 口述場所 筆録者桜井重雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版60頁 八幡書店版第1輯 179頁 修補版 校定版61頁 普及版29頁 初版 ページ備考
OBC rm0212
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本文  常世姫は稚桜姫命の厚き信任を得、城内の諸神司を種々様々の方法をもつて吾に信頼せしめ、声望並ぶものなく、つひに竜宮城内の花と謳はるるにいたつた。ゆゑに常世姫の一言一行は諸神司を支配し、その威望と信徳は四方に喧伝さるることとなつた。
 これに反し言霊別命、言霊姫、斎代彦、斎代姫の威信は、邪神の讒言のために今は全く地に墜ちてしまつた。常世姫は魔我彦、魔我姫に陰謀の真意を含め、ひそかに美山彦、国照姫に対して一切の秘密の打ち合せをなし、漸をもつて竜宮城の主たらむとし、画策これ日も足らぬ有様であつた。
 常世姫のために最も妨害となるべき目の上の瘤は、言霊別命以下の神司である。ここに魔我彦と魔我姫は藤姫、八百姫の醜女をして、言霊別命を魔道におとしいれむとした。(醜女とは色情をもつて敵を堕落せしめむとする心の醜悪なる女性のことである)
 ある時、言霊別命は風邪に罹り、病床に呻吟してゐた。藤姫の醜女は甘言をもつて近く傍に侍し、看護に務めながら身に盛装を凝らし、命の心を動かさむとした。命は藤姫の醜女たることを夢にも知らず、病の床を立ち出で廁に入らむとせし時、藤姫は手をとつて命を支へつつ廁に送つた。命は廁より出で眩暈、危く地に倒れむとし、前後も知らず藤姫の肩にもたれかかつた。藤姫は甲だかき声をあげて救ひを求めた。一間にあつてこの様子を聞きゐたりし魔我彦は、その場に現はれ、
『言霊別命は藤姫を後ろより抱きしめたり。かならず汚き心あらむ』
とただちに走つて、常世姫に尾に鰭をつけ仰山らしく報告した。常世姫は烈火のごとく憤り、藤姫を招き委細を厳しく訊問した。藤姫は涙ながらに、
『吾は今日まで何事も包みゐたりしが、今や現状を見届けられて何の辞もなし。実は命のために常に脅迫され、夫ある身の不倫とは知りつつも、今まで命の命に盲従せしは、全く吾が重ねがさねの罪なり』
と声を放つて泣く。常世姫はえたりと喜び、心中ひそかに小躍りしながら、表面はどこまでも物憂げに稚桜姫命の御前に出でて、言霊別命の不倫の行為を針小棒大に報告した。これを聞かれし稚桜姫命はおほいに怒らせたまひ、諸神司を集めてその顛末を語り、言霊別命を神退ひに退はむとしたまうた。言霊姫は泣いてその無実を証明し、佐倉姫もまた走せきたつて、その無実を涙とともに証言した。稚桜姫命は二柱の女神の証言により、言霊別命の処罪を赦し給ふた。しかし疑雲は容易に晴れないばかりでなく、常世姫の誣言はますます甚だしく、つひには諸々の神司まで、言霊別命の真意、行動を疑ひはじめ、たがひに耳に口を寄せては囁きあひ、命の悪評は城内はおろか四方の国々までも、油の滲むがごとく広まつていつた。
 ここに言霊別命は憂悶やるかたなく、ただ一柱神苑を逍遥しをられしとき、松の小蔭に女の叫び声が聞えた。命は何事ならむと急ぎ声する方へ走りゆく。大空の月は黒雲に包まれ光も薄く星影一つ見えぬ朧月夜であつた。フト見れば八百姫が地上に倒れて七転八倒してゐた。命は女の苦悶する様を見て、そのままそこを立去るに忍びず、いかにもしてその苦痛を救ひ助けむものと、八百姫の手を取り助け起さむとした。八百姫は悲しき声を放つて助けを叫んだ。たちまち松の小蔭より邪神魔我彦が勿然として現はれ、
『狼藉者見届けたり』
と燈火を点じて、言霊別命が八百姫の手を取り脇に抱へたその一刹那を捉へて、不倫の行為と罵り、無理に引き立てて常世姫の前に突き出した。常世姫は謀計の図にあたりしを喜びながら何喰はぬ顔にて、言霊別命、八百姫を前におき、厳しく事実の審問をはじめた。ここに言霊別命は答ふるに、事実の真相を委細に述べた。されど魔我彦は首を左右にふり、
『否々、吾はたしかなる証拠を握る。命は八百姫を手込めになし、既に非を遂げむとせり、委細は八百姫に問はせたまへ』
と気色ばみて誣言した。八百姫は同じ穴の狐である。魔我彦の言ふところを事実なりと強弁し、かつ涙を流して、
『吾は今まで幾度となく命のために辱められたり。今日かぎり吾に暇をたまへ』
と、しきりに嘆願した。
 城内の諸神司は集まり来りて、あゝ言霊別命はかかる不倫の神人に非ざりしに、いかなる邪霊の魅入りしやと、命の前途を悲しんだ。常世姫は魔我彦、八百姫をともなひ奥殿に進みて稚桜姫命に謁し、事実を曲げて言霊別命の日夜の悪行を針小棒大に進言した。稚桜姫命はおほいに憂ひたまひ、諸神司を集めて協議の結果、命を蜂の室屋に投げ入れたまうた。
 あゝ、言霊別命の運命や如何。
(大正一〇・一〇・二九 旧九・二九 桜井重雄録)
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