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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
文献名2第2篇 善悪正邪よみ(新仮名遣い)ぜんあくせいじゃ
文献名3第13章 蜂の室屋〔63〕よみ(新仮名遣い)はちのむろや
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-11-01 15:40:47
あらすじ
言霊別命は常世姫一派の姦計に陥り、蜂の室屋に投げ込まれ、熊蜂、雀蜂、足長蜂、土蜂らの悪霊によって刺し悩まされることになった。

言霊姫は黄金竜姫の霊魂に感じて蜂の領巾を作成した。そして、夜ひそかに、室屋に差し入れた。言霊別命はその領巾で悪蜂を退けることができたが、眠ることができないでいた。

そこへ田依彦、中裂彦、小島別が現れて、言霊別命の罪をなじり、蜂の領巾を渡せと迫った。また、常世姫自身が室屋の前に来て、口汚く命をののしった。

言霊別命は天に向かって、もし自分に邪があれば自分の命を、常世姫に邪があれば常世姫の命を、直ちに絶ちたまえ、と祈願した。するとたちまち常世姫はその場に苦悶して倒れた。

この事件を聞いた稚桜姫命は、これは言霊別命の仕業であるとして室屋の前に来て罵ったが、命は相手にしなかった。そのうち、常世姫はついにこと切れた。

稚桜姫命はこの事件について、国治立命に神慮を問うた。すると、確かに邪が常世姫にあった、と神勅が降った。そこで稚桜姫命は、小島別を遣わして言霊別命・言霊姫に陳謝せしめた。言霊別命が謝罪を受け入れると、常世姫はたちまち蘇生した。

この様を見た稚桜姫命以下の諸神は、常世姫に、言霊別命に謝罪するようにと勧めた。常世姫が謝罪を拒むと、再び苦痛が襲ってきたので、ついに常世姫も我を折って謝罪し、言霊別命は室屋から解放されてもとの聖職に就くこととなった。

この事件で常世姫は竜宮城から追放された。しかし常世の国から探女を放って、ふたたび言霊別命夫妻をつけ狙うという有様であった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月30日(旧09月30日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版65頁 八幡書店版第1輯 181頁 修補版 校定版66頁 普及版31頁 初版 ページ備考
OBC rm0213
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本文  言霊別命は常世姫一派の奸計におちいり、蜂の室屋に投げ込まれ、熊蜂、雀蜂、足長蜂、土蜂の悪霊どもは、昼夜の区別なく襲ひきたりて、尻尖の剣をもつて刺し迫る。
 言霊姫は、黄金竜姫の霊魂に感じ、蜂の領巾を作りて夜ひそかに室屋の内に差入れた。言霊別命はその領巾を持ちて八方より攻めきたる悪蜂を払ひ退けた。されど数万の悪蜂は隙をねらうて、室屋の外に群がり集まり、少しの油断あれば直ちに入りて、これを刺さむとするがゆゑに、少しも眠ることはできなかつた。ここに田依彦、中裂彦は小島別を誑かし、三柱は、共に室屋の外にきたつて命が不倫の行跡を詰り、かつ改心を迫つた。しかして改心の意を表するために、蜂の領巾を吾らに渡せと脅迫した。
 命はその無実を細々と弁じた。されど三柱はこれを信ぜず、つひには辞を荒らげ顔色を紅くして、罵詈雑言を頻発し侮辱した。命は無念やるかたなくただ首を垂れて、悲憤の涙を押さへつつあつた。このとき常世姫室屋の前に現はれ、命にむかつて言葉きたなく雑言を並べ、かつ速かに改心の情を表はし、職を去り常世の国に落ちゆくべしと宣言した。言霊別命は天にむかひ、……正邪理非曲直を明らかにしたまへ、もしわれに邪あれば、わが生命を断ち、常世姫に邪あれば今この場において常世姫を罰し、もつてわが疑ひを晴らしたまへ……と祈願をこめた。この時いづくともなく神の御声命の耳に入つた。神の御声のまにまに蜂の領巾を常世姫にむかつて打振つた。常世姫の身体はにはかに動揺をはじめ、悪寒悪熱を感じ、その場に転倒し苦悶をはじめた。
 ここに小島別、田依彦、中裂彦は驚いて常世姫を籠に乗せ、担いで稚桜姫命の御前にいたり、事の顛末を報告した。常世姫は病勢刻々に募り、口より泡を吹きつひには黒血を吐いて苦悶しだした。稚桜姫命はこれを見て言霊別命の復讐的悪行となし、大いに怒つて大神に賞罰を明らかにされむことを祈願された。
 このとき言霊姫は愉快気に微笑を漏らし、神司の狼狽するを傍観してゐた。稚桜姫命以下の神司は、大宮の前に額きて祝詞を奏上し、病気平癒の祈願を凝らし、五日五夜に及んだ。されど連夜の祈願も寸効無く、常世姫の生命は瀕死の状態に立ちいたつた。
 ここに稚桜姫命は気色を変へ、みづから蜂の室屋の前に立ち、言霊別命にむかつて、
『常世姫の苦しみは汝が怨霊の祟りならむ。すみやかに前非を悔いて、かれが病を癒やし天地の神に謝せよ』
と言葉厳かにきめつけられた。されど言霊別命はその言を用ゐず、空吹く風と聞き流してゐた。折しも常世姫の居室に当つて、大なる叫び声がおこつた。諸神司は周章狼狽きながら、その居室に集まつた。そのとき既に常世姫は身体冷え渡りてこと切れてゐた。ここに稚桜姫命は神慮を疑ひ、ただちに国治立命に正否を奉伺された。
 国治立命は言葉おごそかに宣りたまふやう、
『邪は正に勝たず、神は善を助け邪を罰す。邪は常世姫にあり。言霊別命は正しき神人なり。汝すみやかに小島別をして言霊別命の前にいたり、謝罪せしめよ』
との神勅であつた。小島別は正邪の判別に迷ひ、心は五里霧中に彷徨しつつ大神の命を拒むに由なく、つひに我を折りて言霊別命、言霊姫に前の誤解と無礼を陳謝した。命は答へて、
『正邪の判別したる上は、われ何をか恨まむ』
とて直ちに天に向つて謝罪したまふと同時に、常世姫はたちまち蘇生した。
 ここに稚桜姫命以下の諸神司は、常世姫に向つて謝罪せむことを勧めた。されど頑強なる常世姫はこれを拒み、ふたたび苦悶をはじめ、口から泡を吹き血を吐くこと前の通りである。
 さすがの常世姫もつひに我を折り、生々に室屋の前にきたりて叩頭陳謝した。命の怒りは忽ち解けて常世姫の病は全快した。ここに言霊別命は諸神司の進言により、室屋の中より救ひ出され、ふたたび元の聖職に就かれた。
 常世姫はこの事件のために竜宮城を退はれ、つひに常世国に遁げ帰つた。されど常世姫の悪意は容易に改まらず、執拗にも種々の画策をめぐらし、はるかに常世国より醜女を放ちて、ふたたび言霊別命夫妻を陥れむと、画策これ日も足らぬ有様であつた。
(大正一〇・一〇・三〇 旧九・三〇 外山豊二録)
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