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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
文献名2第3篇 神戦の経過よみ(新仮名遣い)しんせんのけいか
文献名3第16章 梟の宵企み〔66〕よみ(新仮名遣い)ふくろのよいだくみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
言霊別命は疑惑が晴れて蜂の室屋から出た後も、稚桜姫命の疑念は晴れなかった。小島別・田依彦の一派は、言霊別命に対して心中穏やかならず、ついに神国別命をも仲間に引き入れて、命を排斥するに至った。

言霊別命は、大八洲彦命・真澄姫とはかって、天道別命、天真道知彦命を連れて一時竜宮城を退去し、ローマの都の花園彦の館で時が至るのを待つことになった。

ところが、ローマの都で宣伝活動を始めると声望は天下に振るい、勢力は拡大して多いに名をとどろかすことに成った。

竜宮城は言霊別命がローマに一派を開いて勢い盛んなことに驚き、小島別、田依彦、安川彦を急使に立てて、竜宮城に帰還するようにと責め立てた。

言霊別命は、三神が刀に手をかけて様子ただならないのを見て、稚桜姫命に詫び状を書いたので、自分は後から引き揚げるから、先に詫び状を持って竜宮城に戻っていてくれ、とその場を納めた。

三神は意気揚々と竜宮城に戻り、稚桜姫命の前で言霊別命の「詫び状」を開いてみると、そこには、常世姫一派を処罰して悔い改めなければ徹底抗戦も辞さない、という通告が書かれていた。

稚桜姫命はこれを見て多いに怒り、小島別、田依彦、安川彦は面目を失った。ここに稚桜姫命は小島別、田依彦、安川彦に神軍を引率させ、ローマを攻撃させることになった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年10月30日(旧09月30日) 口述場所 筆録者谷口正治 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版78頁 八幡書店版第1輯 186頁 修補版 校定版80頁 普及版38頁 初版 ページ備考
OBC rm0216
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本文  ここに言霊別命は、疑惑まつたく晴れて蜂の室屋を再び出で、神業に奉仕せられた。されど疑惑の念深き稚桜姫命は、言霊別命の心中に野望を抱けるものと、日夜疑心を抱いてをられたのである。かてて加へて小島別、田依彦の一派は心中穏かならず、命の神務にたいし、いちいち反対的態度を持し種々の妨害を加へ、かつ非難を放つて止まなかつた。神国別命以下の神司も、小島別の言に賛同して、つひに言霊別命を排斥せむとするに立いたつた。

  うたがひの黒雲おほふも何かせむ天津日さへも曇る世なれば

 されば言霊別命は、天使大八洲彦命、真澄姫とはかりたまひ、天道別命、天真道彦命とともに一時竜宮城を立退き、ローマの都に下りて、国魂の神花園彦の御舎に潜み、時の到るを待ちたまふこととなつた。このとき八島彦、元照彦、正照彦らの諸神司は、共にローマの都に集まり、天道別命、天真道彦命の教を四方に宣伝し、声望天下にふるひ、驍名つひに竜宮城にまで高く達した。
 稚桜姫命は大いに驚きたまひ、小島別、田依彦、安川彦、その他の諸々の神司をして、言霊別命の遺物をヨルダン川の岸に持出さしめ、八方より火をかけてこれを焼燼せしめたまうた。
 さるほどに、言霊別命はモスコーの都に出で、諸神司を集めて、天津神の宣旨を宣べ伝へた。この時、ローマなる花園彦の急使として、小島別、田依彦、安川彦はあまたの者と共に出できたり、片時もはやく還りたまへと報告した。
 言霊別命は八島彦をともなひローマに帰り、花園彦の神殿に到着した。待ちくたびれたる小島別の一行は、言霊別命の御殿に入り、威儀を正し、容をあらため、
『吾は稚桜姫命より重大なる任務を帯びてはるばる下りきたれる神使なり。汝は今この地にありて諸々の神司等を集め勢力日に加ふと聞く。思ふに後日地の高天原を占領し覇権を握らむとするの所存ならむ。汝は命の命に従ひ、この所を捨てて竜宮城に帰還し、命の命のまにまに悔改めて神業に従ひまつるか、万一これを拒むにおいては吾に覚悟あり』
と都牟刈太刀の柄に手をかけ、三方より返答きかむと詰めよつた。言霊別命は小島別らの尊大不遜なる態度にあきれながら、小島別の鼻高く肩を揺りて折衝する姿の可笑しさにたへず、抱腹絶倒した。
 小島別は大いに怒り、真赤になつて、
『汝大神の神使を愚弄するや。このままには捨ておかじ。覚悟をせよ』
と三方より刀を抜きはなちて切りかけた。

  歎きつついかり眼をむく猿芝居

 言霊別命は偽つてこの場をのがれ、後日の備へをなさむとし、降伏の意味の神文をしたため、小島別に渡し、
『貴下は今より速やかに竜宮城に帰らせたまへ。吾は神軍を解散しすべての後始末をなし、後より帰参すべし』
と体よく答弁した。
 小島別は得意満面にあふれ、勝ち誇つたる面持にて、あたかも鬼の首を竹篦にて切りとりしごとく、意気傲然として、他の三神司とともに数多の部下を引連れ、竜宮城に帰還した。
 三神司は肩にて風を切りつつ、手柄顔に稚桜姫命の御前に出で、
『このたびは大神の御神威により大勝利を得たり。やがて言霊別命は悄然として、後より還り来るべし。その詫状は今ここにあり』
と鼻高々と得意気にその封書を命に奉まつつた。稚桜姫命は大いに喜びたまひ、披き見ればこはそもいかに、言霊別命は竜宮城に断じて帰還せず、稚桜姫命はまず御心を改められて、嫉妬心を去り、冷静に復り、赤心より悔い、もつて一切の誤解を払拭し、常世姫、小島別、魔我彦、魔我姫その他の神司をそれぞれ処罰し、もつて吾意のごとく改革の実をあげたまふならむには、喜びて帰城すべし。万一この語に御違背あらば、吾らはますますローマの都に根拠を固め、ここに天津神の命を奉じて、新に地の高天原を開き、竜宮城を建設し、もつて貴神に対抗し奉り、花々しく雌雄を決し申さむ、との極めて強硬なる信書であつた。
 稚桜姫命は顔色にはかにかはり、声もいとあららかに信書を引破りて握りかため、小島別の面上目がけて投げつけ、雉子の直使なり、と神使の不明不覚を詰りたまふた。
 小島別以下の神司は案に相違し、あたかも梟の夜食に外れしごとく、頭をかいて小隅に引きさがり、今後の身の進退につき苦心してゐた。
 ここに稚桜姫命は大いに憤りたまひ、小島別、田依彦、安川彦をして数多の神軍を引率せしめ、言霊別命を討ち悩ましたまふことになるのである。言霊別命は已むをえず、花園彦、元照彦、正照彦、八島彦をして、これが防備に当らしめた。
(大正一〇・一〇・三〇 旧九・三〇 谷口正治録)
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