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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
文献名2第4篇 常世の国よみ(新仮名遣い)とこよのくに
文献名3第24章 藻脱けの殻〔74〕よみ(新仮名遣い)もぬけのから
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
常世の都の大神殿で、天地の諸神を鎮祭する祭典が奉仕されようとしていたが、竜世姫・言霊別命は祭典の席次についても大喧嘩を演じたので、諸神は不安の念にかられていた。

直会でも、竜世姫が喧嘩に見せかけて言霊別命の膳部をひっくりかえしたが、その膳部からは青い炎が立ち上った。しかし常世姫も常世姫の部下たちも、大喧嘩を目の当たりにしていたので、竜世姫には心を許していた。

竜世姫は夜分ひそかに、言霊別命を常世城から逃がした。そして、自分は「言霊別命に害されようとした」と偽って常世城の諸神を呼び集めた。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月01日(旧10月02日) 口述場所 筆録者桜井重雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版118頁 八幡書店版第1輯 201頁 修補版 校定版120頁 普及版57頁 初版 ページ備考
OBC rm0224
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本文  常世の都には荘厳瀟洒なる大神殿が建てられ、天地の諸神を鎮祭し奉つた。ここに常世姫は斎主となり、言霊別命は諸神司を率ひ副斎主の職を奉仕した。荘厳なる祭典はやうやくにして済んだ。ただちに直会の宴にうつり、常世姫は首座に、八百万の神司は順次宴席に着いた。さしもの広大なる広前も立錐の余地もなきまでに塞がつた。
 言霊別命は竜宮城の大切なる賓客として、常世姫の次席の座を占めることとなつた。このとき竜世姫は顔色を変へ、常世姫の前にて言霊別命を尻目にかけ、
『かかる腰抜け神司を正座に着かしむるは吾を侮辱するものなり。吾は稚桜姫命の娘なり。席を代らせたまへ』
と申し込んだ。衆神はこの形勢を見て不安の念にかられた。言霊別命は大いに怒り、
『女神の分際にて吾の上座に着かむとするは、僣越もはなはだし。汝は最下座にかへり、吾に接待の役を務めよ』
といつた。かくして二神の争ひは再発した。
 言霊別命はつひに一歩を譲つて、竜世姫を上座にすゑた。このとき山野河海の美味し物は諸神司の前へ運ばれてきた。常世姫は一同にむかひ、祭典の無事終了せしことを祝し、かつ直会の宴を開きたる次第を細々と述べたてた。
 言霊別命はこれに答へて竜宮城を代表し、慇懃なる挨拶を述べ、いよいよ酒宴の箸をとることとなつた。このとき竜世姫は、言霊別命の前にある種々の馳走をみ、怒つて曰く、
『かかる腰抜け神司に、山野河海の珍物を饗応するは分に過ぎたり』
といひつつ、命の前に据ゑたる膳部を残らず転覆かへした。そして自分の懐中より蛙の形したる味よきパンを取りだし、
『これは蛙の木乃伊なり。汝はこれにて充分なり』
といひも終らず、ただちに言霊別命の口に捻こんだのである。うちかへされたる膳部の羹よりは青色の火焔が立ち昇つた。常世姫以下の神司は、二神の間が犬猿もただならざることを知り、竜世姫に心を許してゐた。
 宴会は無事にすんだ。神司は各自わが居間に帰つた。言霊別命は主賓として、奥殿のもつとも美しき居間にて寝につくこととなつた。小島別、竹島彦は侍者として枕辺に保護することとなつた。命は腰部の苦痛はなはだしければ、ふたりに命じて夜深くまで腰を揉ましめた。ふたりは疲れはてて高鼾をかきだした。そこへ竜世姫来りて、ふたりに対して一間に休息せよと命じた。ふたりは喜んで命のまにまに一間へはいつて、白河夜船を漕いで、華胥の国へ遊楽してゐた。
 その間に竜世姫は言霊別命に武装せしめ、夜ひそかに裏門より逃れしめた。門外には元照彦あまたの従者とともに待ち伏せて、天の羽車に乗り、北方めがけて逃げ出したのである。たちまち奥殿に声が聞えた。諸神司は目を醒まし、何事の突発せしかと怪しみながら駆けつけた。
 このとき竜世姫は大音声にて、
『われ今、言霊別命に殺されむとせり。われは女神ながらも死力をつくして争ひたれば、命は力つき逃げゆくとたんに、階段より辷り落ち、いまこの深き濠に溺没したり。神司来りてこれを救ひ上げよ』
と叫びつつあつた。神司は言霊別命のひそかに逃れしを夢にも知らず、右往左往に走りまはり、舟をいだして濠を捜索したが、つひにはその影だにも認むることができなかつた。
 小島別、竹島彦、松代姫は大いに驚き、
『吾らは稚桜姫命に対し奉り、何とも陳弁の辞なし』
と頭をかたむけ吐息をつくのであつた。時しも急報あり、
『言霊別命は元照彦と共に、神軍を率ゐて逃げ失せたり』
との報告である。常世姫、小島別、その他あまたの神司は、八方に手配りして命の所在を厳探したが、つひにその影を認むる事はできなかつた。ああ言霊別命の運命はどうなるであらうか。
(大正一〇・一一・一 旧一〇・二 桜井重雄録)
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