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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
文献名2第4篇 常世の国よみ(新仮名遣い)とこよのくに
文献名3第26章 信天翁〔76〕よみ(新仮名遣い)あほうどり
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
逃げたと思われた常世姫は、実は魔術で目をくらましたに過ぎず、常世姫は依然として常世城の奥に潜んでいたのであった。

常世城はふたたび常世姫の支配に帰したが、言霊別命の失踪を許した小島別・竹島彦・松代姫ら竜宮城の使臣は、自分たちの失策をどうやって稚桜姫命に復命しようかと悩み、青息吐息の有様であった。竜世姫はその様を戯れ歌に歌ってからかった。

常世姫は、稚桜姫命と竜世姫に、さまざまな珍宝の土産を渡して見送った。竜宮城に着くと、竜世姫はさっそく、小島別らの失策を稚桜姫命に報告した。

稚桜姫命はそれを聞いて怒ったが、竜世姫がおかしな歌を歌ってとりなしたため、小島別らの罪は赦された。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月01日(旧10月02日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版126頁 八幡書店版第1輯 204頁 修補版 校定版128頁 普及版61頁 初版 ページ備考
OBC rm0226
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本文  元照彦の攻撃に進退きはまり、金毛八尾白面の悪狐となりてロッキー山の方面に雲をおこして逃げ帰りしと見えしは、まつたく常世姫の魔術であつた。常世姫は依然として城内の奥深く潜んでゐた。常世姫は盛装をこらし悠然として竜世姫、竹熊彦らの前に現はれた。竹熊彦は死者の蘇へりし如く狂喜した。諸神司もともに歓喜の声をあげて勇躍した。城内はにはかに、枯木に花の咲きしがごとく陽気となつた。これに反し小島別、竹島彦、松代姫は稚桜姫命にたいし、この失敗をいかにして陳謝せむやと、思案にくれ、顔の色までかへて青息吐息の体であつた。竜世姫は可笑しさに堪へかねて失笑だした。さうしてまた面白く歌を唄つて踊りだした。
 その歌の文句は、
『竹島彦の顔見れば  閻魔が抹香喰つたやうに
 何が不足でそんな顔  ここは地獄か極楽か
 常世の城ではないかいな  お地蔵さまでも呼んで来て
 お酌さしたらどうであろ  小島別の神さんの
 お顔を一寸眺むれば  青瓢箪か干瓢か
 朝瓜、鴨瓜、唐茄子  南瓜の一寸ひねたのか
 ここは畑ぢやあるまいに  青息吐息の仏掌薯
 つくづく思案をして見れば  うそでつくねた其の罪で
 真赤な恥を柿のへた  下手な巧はせぬがよい
 宵に企んだ梟鳥  夜食に外れてお気の毒
 これが真の信天翁  一つの取得泣き寝入り
 煎豆花咲く時もある  この縮尻は身の因果
 因果応報目のあたり  当り散らして怒つても
 私は一寸も知らぬ顔  顔が立たうが立つまいが
 いが栗頭が割れやうが  用が無いのはお前さん
 三度の食事も二度にして  指をくはへて寝るがよい
 よいよいよいのよいとさつさ  さつさと竜宮に逃げ還れ
 帰れば竜宮の神さんに  頭をはられて可笑しかろ
 をかし可笑しと笑はれて  腹を立てなよ小島別
 笑ふ門には福きたる  来る時節を楽みに
 今度は改心するがよい  よいよいよいのよいとさつさ』
 諸神司は小島別、竹島彦の心配さうな顔つきを眺め、いろいろと言葉を尽して慰めた。常世姫はあまたの珍らしきものを二柱に与へ、かつ慇懃にその労を謝し、竜世姫には麗しき宝玉を与へ、稚桜姫命の御土産としては、種々の珍宝を取り出して、これを竜世姫に伝献せしむることとなし、ここに四柱はまづ竜宮城へ還ることとなり、はるかに海山川を打渡りやうやく帰城した。竜世姫は何の恐れ気もなく稚桜姫命の御前に出で、常世姫より預かりしくさぐさの珍宝を奉り、かつ小島別、竹島彦らの今回の失策を詳細に、面白く進言した。稚桜姫命は大いに怒り、
『小島別以下の二神司、すみやかに吾が前に来れ』
と厳命せられた。三柱は猫に追はれた鼠のごとく縮みあがり、蚤か虱のその如く、頭を隠して戦慄いてゐた。言霊姫はこの状態を見て気の毒にたへず、いかにもして稚桜姫命の怒りを和らげむと百方焦慮し、竜世姫は面白き歌を作り、言霊姫は怪しき手つきをなして踊り狂ひ、命を抱腹絶倒せしめ、この場のごみを濁さむとした。その歌は、
『大蛇に追はれた蟇蛙  こんなことぢやと知つたなら
 使ひに行くのぢやなかつたに  何ぢやかんぢやとだまされて
 ぢやぢや馬神にぢやぢやにされ  元照彦に邪魔されて
 善ぢや悪ぢやと争ひつ  たがひに邪推の廻し合ひ
 相も変らぬ邪智深き  常世の邪神に尾をふつて
 尻までふつて腰抜いて  輿を取られて輿を舁き
 輿に乗せたる神さんに  さんざん膏を搾られて
 その上腰を揉まされて  越の国をば腰抜け顔して竜宮へ
 帰つた姿を眺むれば  青菜に塩か蛭に塩
 血を吐く思ひの時鳥  ほつと一息休む間も
 なくてこの場に一同引き出され  何の云ひわけ荒男
 男の顔も竜世姫  立つ時えらい勢で
 帰つた時のその姿  姿かくして泣いてゐる
 これが深山の時鳥  ほうほけきようの呆け面
 面を隠して尻を出し  尻の締りはこの通り
 通り越したる大阿呆  阿呆々々と暁に
 鳴いた烏の惚け声  どうぞ許して下しやんせ
 三人寄れば文殊の智慧といふものを  この三人の神さんは
 年は取つても虫喰はぬ  目に見ぬ智慧は稚姫の
 若布のやうな弱腰で  向ふも見ずにべらべらと
 云はぬは云ふにいや勝る  猿が三匹飛んで出て
 常世の国で恥をかき  なほまた帰つて頭掻く
 木から落ちたる猿のよに  空を眺めて泣くよりも
 一先づこの場をさるがよい  よいよいよいのよいとさつさ』
といふ戯歌であつた。三柱はこの歌の言霊によつて、稚桜姫命のお怒りを和らげ、言霊別命を失つたる失敗の罪を赦された。
(大正一〇・一一・一 旧一〇・二 加藤明子録)
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