清照彦は最愛の妻に死に別れ、両親を討滅することになった。荒熊彦夫妻はかろうじて逃れたが、清照彦は追撃せず、両親が無事に落ち延びて、どこかで隠棲することを願った。
しかし風の便りに、両親はローマで捉えられ、殺されたという噂を耳にした。清照彦は悲嘆のあまり自刃しようとしたが、天空から女神が現れて、しばらく隠忍するようにと諭し、必ず妻と両親に再会させよう、約束した。
清照彦は合点がいかなかったが、自分が死んでしまっては両親と妻の霊を慰める者がいなくなってしまうと、思いとどまった。
清照彦は悲哀のうちにも暮らしていたが、あるとき十曜の神旗が立った鳥船が数十も、高白山めがけて下り来た。鳥船からは言霊別命らが現れ、稚桜姫命の神使として清照彦の忠孝を賞するためにやってきたのだ、と来意を告げた。
清照彦が不審の念を抱きつつも来意を謝すると、鳥船から降ろした輿から現れたのは、父母の荒熊彦・荒熊姫、そして自害したはずの妻・末世姫であった。清照彦は思いもかけぬ親子夫婦の対面にうれし涙にくれた。
高白山は元のとおり荒熊彦夫妻が治めることになり、清照彦は長高山を治めるよう神命が下った。
末世姫は自害したと見えたが、その貞節に感じた天使によって身代わりに助けられ、ずっと言霊別命の側に仕えていたのであった。