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文献名1霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
文献名2第6篇 神霊の祭祀よみ(新仮名遣い)しんれいのさいし
文献名3第40章 山上の神示〔90〕よみ(新仮名遣い)さんじょうのしんじ
著者出口王仁三郎
概要
備考第2巻に登場する3人の「かみくらひこ(神座彦、神倉彦、上倉彦)」は同一人物だと思われる。『王仁文献考証』参照。
タグかみくらひこ(神座彦 神倉彦 上倉彦) データ凡例 データ最終更新日2017-09-26 20:42:30
あらすじ
大八洲彦命は、稚桜姫命の神命を奉じてシオン山に登り、自ら地鎮祭を行うと、顕国の御玉が現れた聖跡を中心に、十六社の白木の宮を造営した。鵜の羽で屋根を覆い、金銀珠玉の珍宝をちりばめ、荘厳優美な様であった。

一つの宮にそれぞれ玉をご神体として祭り、四つの宮に、鶴野姫、大森別、生代姫命、姫古曽の神を鎮際した。その他楼門、広間等大小三十二棟を造営し、あまたの重臣がこれに住んで日夜神明に奉仕した。そして宮比彦を斎主に任じた。

常世姫の部下である美山彦、国照姫は鬼城山から部下を率いて出陣し、東西両面からシオン山に迫った。また別働隊として南方からは、武熊別らが攻めかけた。

大八洲彦命は東西南北に神将を配置してこれにあたった。三方から押し寄せた魔軍は難攻不落の霊山に攻めあぐね、山を囲んでにらみ合いになった。

常世姫は間者に偽の情報を持たせ、シオン山軍の戦力を割こうとしたが、大八洲彦命に見破られた。部将の中には、間者の偽情報を信じる者もあったが、宮比彦が神示のままに間者を神前に引き立てると、間者は計略の一切を白状したので、一同は大八洲彦命の洞察に感嘆した。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月06日(旧10月07日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年1月27日 愛善世界社版203頁 八幡書店版第1輯 231頁 修補版 校定版207頁 普及版96頁 初版 ページ備考
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本文  ここに大八洲彦命は、稚桜姫命の神命を奉じ、シオンの霊山にのぼり地鎮祭をおこなひ、かの顕国の御玉の母岩の現はれたる聖跡を中心として、十六社の白木の宮を造り、鵜の羽をもつて屋根を覆ひ、金銀珠玉種々の珍宝をちりばめ、荘厳優美たとふるにものなく、旭に照り夕陽に輝き、その状は目も眩きばかりであつた。
 一つの宮に一つの玉を神体として祭り、十二社と称へた。他の四個の宮には、鶴野姫、大森別、生代姫命および姫古曽の神を鎮祭し、荘厳なる祭祀は挙行された。
 その他、楼門、広間等大小三十二棟を造り、いづれも白木造りにして桧皮をもつて屋根を覆ひ、千木、堅魚木等実に崇高の極みであつた。この十六の宮とともに四十八棟となり、あまたの重臣はこれに住みて神明に日夜奉仕した。
 ここに宮比彦を斎主とし、一切の神務を主宰せしめられた。シオン山はもとより荘厳なる霊山である。しかるに今や四十八棟の瀟洒たる社殿幄舎は建て並べられ、荘厳の上になほ荘厳を加へた。
 このとき常世姫の部下たる美山彦、国照姫は杵築姫を部将とし、鬼雲彦、清熊ら数多の魔軍を率ゐて鬼城山を立ちいで、東西両方面より、シオン山を占領せむと計画しつつあつた。また南方よりは別働隊として主将武熊別は、荒熊、駒山彦を率ゐ、シオン山を奪取せむとし、ここに東西南三方よりこれを占領するの計画を定めた。
 このこと忽ち天使大八洲彦命の知るところとなり、東の山麓には吾妻別を主将とし、香川彦、広足彦を部将として防衛の陣を張り、西の山麓には磐樟彦を主将とし、上倉彦、花照彦を部将とし、あまたの神軍をもつてこれを守らしめた。南方の山麓には大足彦を主将とし、奥山彦、安世彦を部将とし、あまたの神軍と共にこれを守らしめ、北方の山麓には真鉄彦少しの神軍と共に万一に備へることとなつた。また山上の本営には大八洲彦命を総大将として真道彦命、花森彦、谷川彦、谷山彦が固く守ることとなつた。
 三方より押寄せたる敵軍は、難攻不落の霊山を攻撃せむとするは容易の業に非ず、遠くこれを囲みて睨み合ひ、互ひに火蓋を切らざること長きに渉つた。ここに南軍の将武熊別は探女を放つて一挙にこれを討ち破らむとした。南軍の神将大足彦の陣営を夜ひそかに足音を忍ばせ、横切る女性があつた。数多の神卒は怪しみ、四方よりこの女性を囲み捕へて大足彦の陣中に送つた。女性の衣をことごとく剥ぎあらため見るに、一通の信書があつた。これは東軍の敵将美山彦にあて、武熊別より送るところの密書のやうである。
 その文意は、
『常世姫すでに竜宮城を陥れむとす。されど敵は克く防ぎ、克く戦ひ容易に抜くべからず。大国彦の援軍を乞ひ、大勢をもり返したれば、味方の士気頓に加はり来り、竜宮城の陥落は旦夕に迫る。汝らは吾らを顧慮するところなく、全力を尽してシオン山を攻め滅せ。時を移さず竜宮城を屠り、地の高天原の諸神将を討伐し、その機に乗じて応援に向はむとの、常世姫の密書来れり。これを貴下に報告す』
と記してあつた。
 大足彦は南軍の指揮を安世彦に一任し、ひそかに遁れて竜宮城の警衛に尽力してゐた。安世彦はこの密書を探女の手より奪ひ大いに驚き、吾妻別、真鉄彦、磐樟彦を山上の陣営に集めて密議をこらした。諸将はおほいに驚き、シオン山は難攻不落にして、一卒これに当れば万卒進むあたはざるの要害なり。軍の半を割き速やかに一方の血路を開き、竜宮城に応援せむことを決議され、その決議の結果は大八洲彦命の前にいたされた。大八洲彦命はしばし思案に暮れゐたりしが、直ちにその決議を排し諸将にむかひ、
『竜宮城には大足彦警衛のために帰還しをれば、深く案ずるに足らず。加ふるに真澄姫、言霊別命、神国別命ら智勇兼備の神将の固く守りあれば、いかなる邪神もこれを抜くあたはざるべし。これ必ず敵の奸策ならむ』
と事もなげに刎ねつけられた。このとき安世彦色をなしていふ。
『貴神は稚桜姫命の御上を憂慮したまはざるや。万一この密書にして偽りなれば重畳なり。されど油断は大敵、当山は寡兵をもつて克く衆を防ぐに足る。しかるに竜宮城陥りなば、地の高天原もまた危からむ。是非に応援軍を出し、もつて竜宮城の危急を救ひたまへ』
と決心の色を表はし、容易に意志を枉ぐべき形勢は見えなかつた。
 真鉄彦、磐樟彦、吾妻別も、安世彦の提案に賛成した。部下の神卒はこの風評を耳にし、大部分は竜宮城の危険を信じ、一時も早く帰城せむことを唱ふるにいたつた。
 大八洲彦命は断乎としてその衆議を排し、決心の色を表はし、
『しからば諸神司は吾が指揮を用ゐざるや。今は詮なし、たとへわれ一柱になるとも、当山は誓つて退却せじ、また一卒をもわれは帰城応援せしむるの意志なし』
と主張した。ここに宮比彦は恭しく神前に出で神勅を奏請したるに、たちまち神示あり、
『探女をわが前に伴ひきたれ』
とあつた。宮比彦は神示を大八洲彦命に恭しく伝へた。大八洲彦命は安世彦に命じ、神示のごとく探女を神前に曳き来らしめ、庭石の上に引据ゑた。たちまち探女の身体は上下左右に震動し、かつ自ら口を切つて、
『武熊別の密使にして、実際は竜宮城の陥落近きにありといふは虚偽なり。貴軍の士気を沮喪せしめ、かつ陣容を紊し、その虚に乗じ一挙にシオン山を攻略せんずの攻軍の奸計なり』
と白状するや、たちまち大地に倒れた。
 ここに諸神将は神明の威力と、大八洲彦命の明察力に感嘆し、今後は命の命令には一切背かずと誓つた。
 探女は大八洲彦命の仁慈によつて、神卒に守られ、武熊別の陣営近く護送せられたのである。
(大正一〇・一一・六 旧一〇・七 外山豊二録)
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