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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第2篇 新高山よみ(新仮名遣い)にいたかやま
文献名3第3章 渓間の悲劇〔103〕よみ(新仮名遣い)けいかんのひげき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-12-16 17:44:58
あらすじ
新高山は八王神・花森彦統裁のもとに、八頭神である高国別・高国姫が高砂島一帯を治めていた。

あるとき高国姫は谷間から誤って転落し、人事不省となった。激流に飲まれようとする高国姫を救ったのは、従神の玉手姫であった。玉手姫は救い上げた高国姫を手厚く看護したが、高国姫は病に伏して身体は次第に衰えていくばかりであった。

そんな折、花森彦は高国別を招き、玉手姫を追放するようにと厳命した。高国別、高国姫は献身的な玉手姫を追放せよ、との花森彦の真意が理解できずに憤慨した。また、花森彦の命令に対する怒りから、高国姫は病が悪化して昇天してしまった。

高国別と玉手姫は花森彦を恨み、天使長・大八洲彦命に事の次第を進言しようとした。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月13日(旧10月14日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版17頁 八幡書店版第1輯 266頁 修補版 校定版19頁 普及版7頁 初版 ページ備考
OBC rm0303
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本文  新高山は花森彦統裁のもとに、高国別、高国姫が天地の律法を厳守し、高砂島一帯の諸神を至治太平に治めゐたりしが、たまたま高国姫は谷間に下りて清泉を汲まむとし、断崕より過つて足を踏み外し、谷間に転落し、神事不省に陥りければ、侍者らは大いに驚きて、これを救ひあげむと百方手をつくしたれども断崕高く、渓流はげしく、いかんとも救助の道なく、侍者は驚きあはてこれの顛末を詳細に高国別に報告せしより、急報を聞きし夫は、たちまち顔色蒼白となり、とるものも取りあへず、職服のまま現場にかけつけたりける。
 高国姫は渓間の激流におちいり、激浪につつまれて、浮きつ沈みつ悶え苦しみ救ひを呼びゐたり。その声は次第に細りゆきて、つひには虫の音のごとく衰へきたりぬ。いかに救はむとするも断巌絶壁に隔てられ救助の道なく、ただ手をつかねて神司らは、あれよあれよと絶叫するばかり、傍観するより外に方法とてはあらざりにける。
 ここに高国姫の侍者に玉手姫といふ容色優れたる女性ありしが、玉手姫は、
『主神の一大事、吾は生命に替へて救ひまつらむ』
といふより早く着衣を脱ぎすて、数百丈の谷間を目がけ、急転直下、高国姫の溺れ苦しむ前に飛下り、高国姫を小脇にかかへ、辛うじて渓流はるかの下流に泳ぎつきこれを救ひあげたり。高国別夫妻の喜悦と感謝はたとふるに物もなく、玉手姫は高国姫の生命の親として優遇され、つひに玉手姫は二神司の寵愛ふかき神司となりぬ。
 高国別、高国姫二神は、玉手姫の奇智と才略と忠勇心に深く信頼し、城中のこと一切は、玉手姫のほとんど指揮を待たざれば何事も決定せざるまでに、漸次権勢を張るにいたりける。
 ここに新高山を中心とする高砂島は、玉手姫の水ももらさぬ経綸によつて大いに治まり、よく天地の律法を厳守し、上下一致して神政の模範となり、国の誉も高砂の、千歳の松の永久に、治まる御代と思ひきや、高国姫は渓流に落ちたるとき、身体の一部に障害をきたし、それが原因となりて大病を発し、病床に呻吟し、身体は日に衰へゆくばかりなりける。
 ここに高国別は、高国姫の寵愛ふかき玉手姫をして、昼夜看護に尽力せしめたるに、玉手姫の周到なる看護も何の効なく、病は日々重りゆくのみなりける。ここに花森彦は高国別を近く招き、玉手姫を一時も早く追放すべく厳命せられたるにぞ、高国別は天使の命をいぶかり、腑におちぬていにて言葉静に、
『かれ玉手姫は忠勇無比にして真心より懇切なる神司なり。高国姫の危急を救ひたるもまた玉手姫なり。多くの侍者ありといへども、玉手姫のごとき忠実なる者は外に一柱もなし。しかるに天使は何をもつて玉手姫を追ひだせと命じたまふか』
と反問したりけれど、花森彦は、
『今は何事も語るべき時期にあらず、ただ吾命を遵奉せば足れり』
と、鶴の一声を残して殿内ふかく足早に進みいりぬ。しかして高国別は妻および玉手姫にむかつて、花森彦の厳命の次第を物語れば、高国姫は重き病の頭をもたげながら、驚きの眼を見はり、
『わが生命は玉手姫のために救はれ、今また懇切なる看護を受く、妾にとつて命の親なり。たとへ天使の厳命なりといへども、かかる没義道なる命には従ひがたし』
と非常に天使を恨み興奮の結果つひに上天したりける。高国別は妻の憤死を見て大いに悲しみ、かつ花森彦を深く恨むにいたれり。
 ここに玉手姫は高国別の心中を察し、熱涙をうかべ、花森彦の無情冷酷を怒り、高国別をして信書を認め天使に捧呈せしめける。その文意は、
『高国姫は天使の冷酷なる命令を恨み憤死いたしたり。また玉手姫は誠意を疑はれ、かつ放逐の命をうけたるを大いに憤慨せり。我はいかに天使の命なりとて盲従するに忍びず、実に貴神を恨みまつる』
と云ふの意味なりし。花森彦はこれを披見してただちに高国別にたいし、天則違反の由を懇諭し、かつ、
『根の国にいたるべし』
と厳命したりける。高国別は天使の神通力を知らず、ただ単に無情冷酷の処置とのみ思惟し、自暴自棄となりて、花森彦の無道を天使長大八洲彦命に進言せむとしたりける。
(大正一〇・一一・一三 旧一〇・一四 加藤明子録)
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