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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第3篇 ロツキー山よみ(新仮名遣い)ろっきーざん
文献名3第5章 不審の使神〔105〕よみ(新仮名遣い)ふしんのししん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-03-07 19:25:02
あらすじ
ロッキー山は八王神・貴治彦のもと、八頭神・靖国別、靖国姫のもとに治まっていた。

ある夜、靖国姫の居間に地の高天原の密使と称し小島彦と名乗る神がやってきた。そして、地の高天原では悪神によって天使長・大八洲彦命が昇天し、国直姫命が窮地に陥った、と報告を伝えた。

貴治彦、靖国別はこの密使をいぶかったが、たちまち城下に十曜の神旗を押し立てた軍勢が到着すると、密使が城内にやってきて、国直姫命が地の高天原を追われて、ロッキー山に落ち延びてきた、と伝えた。

貴治彦、靖国別はこの様を見て、ただちに国直姫命一行をロッキー山に迎えた。この国直姫命は貴治彦と靖国別に命じ、地の高天原の惨状を視察するように、といって使いに出してしまった。

しかし一方で、貴治彦は竜宮城に先に密かに使いを出して、事の真相を確かめさせていた。

実際には地の高天原は平穏無事に治まっており、大八洲彦命は貴治彦の使いからこのことを聞いて大いに驚いた。そして言霊別命をロッキー山に使わした。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月14日(旧10月15日) 口述場所 筆録者栗原七蔵 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版29頁 八幡書店版第1輯 270頁 修補版 校定版31頁 普及版12頁 初版 ページ備考
OBC rm0305
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本文  ロツキー山は紺色の玉を、荘厳なる神殿を建立して鎮祭され、貴治彦八王神となり、靖国別八頭神となり、律法を遵守して、きはめて平穏に神事、神政は行はれけり。
 ある時、靖国姫の居間の扉を、ひそかに叩く者あり。靖国姫は侍女とともに扉を開き、
『かかる深夜に戸を叩くは何者ぞ』
と問ひただせば、声に応じて、
『私は地の高天原なる国直姫命の密使にして、小島彦と申す者なり』
(附言、小島彦と称するは実は偽名にて、常世彦の間者、玉醜別といふ曲者なりける)
 靖国姫は小島彦に一面識もなければその真偽を知らず、国直姫命の急使と聞きて大いに驚き、
『かかる夜陰にひそかに来りたまふは、地の高天原に何事か急変おこりしならむ。まづわが居間に』
と小島彦を引入れ、その用務をあわただしく息をはづませ問ひかくれば、小島彦は声を低ふし四辺に眼を配り、かつ畏れながら、
『隣神を遠ざけたまへ』
と仔細ありげなり。
 靖国姫はその言のごとく隣神を遠ざけ、小島彦としづかに対座したり。小島彦は声を低ふしていふ、
『地の高天原には大変事出来し、天使長大八洲彦命は、八王大神部下の神の悪辣なる計略におちいり、つひに上天せり。その他の天使は善後策につき協議中にして、一歩も外出することを得ず。上を下への大騒ぎなれば、我をして天使代理として遣はしたまふ。ゆゑに我が言は国直姫命の神言にして、天使の言も同様なり。一時も早く靖国別に貴下より伝言せられたし』
と顔色を変じていひければ、靖国姫はそのまま使者をわが居間に待たせおき、靖国別の寝殿にいたり、密使の次第を逐一進言したりけり。靖国別は大いに驚きしばらく双手を組ンで思案の体なりし。たちまち座を立つて、貴治彦の御殿に参向し、密使の次第を逐一奏上したりける。
 貴治彦はこれを聞きて大いに訝かり、
『国直姫命の密使ならば、第一着に吾れに伝へらるべきはずなり。しかるに如何なる変事ありとて吾れを差しおき、しかも女性の居間をたたき、かかる一大事を報告すべき理由なし。想ふに反逆を企つる者の奸手段なるべし。汝らはすみやかに、その密使を我が前にともなひ来れ。我は彼に会ひ実否を調査せむ』
と言葉を残して殿中に進み入りける。
 靖国別は命を奉じ、小島彦を伴なひひそかに殿中に伺候し、貴治彦にむかつて謁を乞ひしに、命は小島彦にむかつて密使の次第を詳細に訊問したりける。小島彦は低頭平身して言葉たくみに、前述の次第を奏上し、一時もはやく貴治彦の地の高天原へのぼられることを懇請し、かついふ。
『徒に躊躇逡巡して時を移さば一層大事変を惹起し、つひには国直姫命の御身辺も危からむ。大神の一大事、早くこの場を立つて、吾らとともに地の高天原へ参向されたし』
と進言せる。
 折からたちまち城下におこる鬨の声。命は急ぎ勾欄にのぼり山下はるかに見渡せば、夜陰のため確かにそれと判別はつかざれども、立ちならぶ無数の高張は、十曜の神紋記されありき。ただごとならじと元の座にかへり、靖国別に何事か耳語したまひける。矢叫びの声、鬨の声、次第に近づききたる。そのとき地の高天原の従神司豊彦(実は常世姫の間者)は軽装のまま走りきたり階下に平伏し、
『恐れながら八王の神に注進し奉る。地の高天原はほとんど破壊の運命に逢着し、国治立命は行衛不明となり、大混乱状態におちいり、収拾すべからざる惨状なり。国直姫命は従者をしたがへ小島彦の跡を追ひ、ただ今出御相なりたり。相当の礼をつくして諸神司をして城門に奉迎せしめたまへ』
とあはただしく奏上したるにぞ、命は寝耳に水の注進にしばし茫然としてゐたりしが、ただちに靖国別に命じて城内の諸神司に非常召集を命じ、国直姫命を城門に迎へたてまつるの準備に着手されたりける。
 命の命令一下とともに、諸神司は各自礼装をととのへ、城門に奉迎したり。
 ここに国直姫命は諸神とともに悠然として入りきたり、慇懃に挨拶を述べ、地の高天原の惨状を物語られける。ここに国直姫命の命令を奉じて貴治彦、靖国別は少数の神軍をひきゐ、地の高天原へ応援のため参向することに決したり。
 あまたの諸神将卒は靖国姫を守護し、ロツキー山の城中にとどまり、しばらく形勢を観望することとはなりける。
 これよりさきに貴治彦は、国彦をひそかに地の高天原につかはし、実否を糺さしめ、かつ小島彦の密使の真偽を調査せしめゐたりしなり。
 大八洲彦命は国彦の言を聞いておほいに驚き、
『地の高天原はかくのごとく平穏無事なるに、かかる密使をだすべき理由なし。察するところ邪神の奸策ならむ。このままに捨ておかば、ロツキー山は、いかなる運命に逢着するや計りがたし』
と、言霊別命に、国彦を添へ、あまたの従神とともに、ロツキー山に急ぎ出発せしめられたるぞ畏こけれ。
(大正一〇・一一・一四 旧一〇・一五 栗原七蔵録)
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