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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第6篇 青雲山よみ(新仮名遣い)せいうんざん
文献名3第20章 晴天白日〔120〕よみ(新仮名遣い)せいてんはくじつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月18日(旧10月19日) 口述場所 筆録者河津雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版116頁 八幡書店版第1輯 302頁 修補版 校定版118頁 普及版51頁 初版 ページ備考
OBC rm0320
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本文  青雲山上の黄金の宮は竣工を告げ、いよいよ国魂として、黄金の宝玉を鎮祭することとはなりぬ。神澄彦は玉守彦を招き、
『さきに保管を命じたる宝玉を持参せよ』
と命ずれば玉守彦は、預かりし玉を恭しく奉持してこれを奉り、荘厳なる儀式の下に国魂は祀られけり。ここに玉守彦は、黄金の宮の司となり、厳重に守護することとなりぬ。
 玉守彦の侍女に良姫なるものあり。つねに玉守彦夫妻に忠実に仕へ、とくに玉守彦には信任もつとも深ければ玉守彦は、何事も良姫に相談するを常とせり。玉守姫は夫の良姫を深く信ずるを見て、嫉妬心をおこし、自暴自棄となりて、日夜飲酒にふけり、隣人を集め踊り狂ひ、ややもすれば酒気に乗じて、夫の秘密を口ばしるのみならず、玉守彦と良姫の間には汚き関係あるがごとく言ひふらしける。
 玉守彦は、妻の日夜の放埒を見るに忍びず厳しく訓戒を加へたるに、玉守姫はたちまち眉を逆立て目を瞋らせ、顔色するどく、狂気のごとくなりて、玉守彦にむかひ、
『貴下は平素妾を疎んじ、侍女の良姫を寵愛し、妾に侮辱を与ふ。もはや堪忍袋の緒も切れたれば、妾はこれより八王神の御前に出で、夫の隠謀の次第を逐一訴へ奉らむ』
といふより早く家を飛びだし、八王神の御前に夫の罪を残らず奏聞したりける。奏聞の次第は、
『玉守彦は大切なる黄金の宝玉を預かりながら、この玉を吾物にせむと謀り、真の宝玉には黒く墨をぬり、別に同形の石の玉を作り、これに金鍍金をかけ、真の玉は宝珠山の奥深くこれを埋め、擬玉を差出して黄金の宮に祀り、後日時を得て真の宝玉を取りだし、玉の神力によりて青雲山の城塞を乗取り、八王、八頭の神を放逐し、おのれとつて代り八王神とならむと、不軌を謀りつつあり。夫ながらも実に恐ろしき悪逆無道の者なり。すみやかに捕へて獄に投じ、国の害を除かせたまへ』
と嫉妬の炎すさまじく、身をゆすりて泣きつ訴へにけり。ここに八王神神澄彦は、八頭神吾妻彦を招きて、玉守姫の訴への次第を物語り、ただちに玉守彦を召し捕へしめたり。
 玉守彦は妻の玉守姫とともに、吾妻彦の前に呼び出され、きびしき訊問を受けたるが、玉守彦は、言葉さはやかにその無実を陳弁し、かつ、
『玉守姫は嫉妬ふかく、今は狂者となれり、かならず彼がごとき狂者の言を信じたまふなかれ。至誠は天に通ず。願はくば天地の大神も吾が赤誠を照覧あれ』
と天を拝し地を拝し、涕泣して訴へたり。このとき玉守姫は首を左右に振り吾妻彦にむかひ、
『玉守彦は大胆不敵の曲者なり。彼はたしかに国魂を宝珠山に埋め、この黄金の宮の国魂は擬玉を祀りをれり。その証拠は現在妻の妾とともに山中に匿しおきたり。何時にてもその所在をお知らせ申さむ』
とあわただしく苛ち気味に奏上するにぞ、玉守彦は言辞を荒らげて、妻にむかひ、
『女の姦ましき要らざる讒言、いまに天地の神罰はたちどころに到らむ、慎めよ』
と睨めつけたるに、玉守姫は躍気となり、
『夫は何を呆け顔に弁解するや。宝珠山の谷を渡るとき、川の中にて二匹の兎を生捕にし、また宝珠山の松の大木に大いなる鮭の生りをりたるを妾が見つけ、夫と共にこれをむしり帰りて、その夜兎と鮭を料理し、祝酒を飲みしことをよもや忘れたまふまじ。そのとき宝珠山に玉を埋めおきたるを忘れたるか』
と烈火のごとくなりて述べ立つる。玉守彦は吾妻彦にむかひ、
『ただ今お聞きおよびのとほり、妻の玉守姫は発狂し、取とめなきことを述べたて候。彼がごとき狂人の言は御採用なからむことを乞ひまつる』
と奏上せるに、吾妻彦は玉守姫の狂者たることを知り、ここに玉守彦の疑ひは全く晴れ、許されて家に帰りぬ。
 八王大神常世彦は、黄金の宮の国魂を奪はむとし、部下の国足彦、醜熊、玉取彦に命じ、種々の奸策を授けたり。ある日のこと国足彦らは夜陰に乗じ、黄金の宮に入り国魂を首尾よく盗み、遠く常世の国へ逃げ帰りたり。八王神神澄彦は国魂を拝せむと諸神司をしたがへ神殿に進み入りしに、神前の堅牢なる錠前は捻切られ、肝腎の国魂は紛失しゐたりける。
『八王大神の部下国足彦、醜熊、玉取彦、玉を取つて常世の国に立帰る。藻脱の空の宮の神徳弥顕著ならむアハヽヽヽ』
と認めありぬ。八王神は顔色青ざめ、
『吾は貴重なる国魂の守護を命ぜられながら、今これを敵に奪取され、大神にたいして謝すべき辞なし。この玉なきときは八王の聖職を奪はれ、かつ重き罪に問はれむ。いかがはせむか』
と歎きたまふをりしも、玉守彦はすすみ出で、
『八王神よ、必ず神慮を悩ましたまふこと勿れ。我は宝玉の保護を命ぜられてより、今日あることを前知し、擬玉を作りて奉斎し、真正の国魂の宝玉は、宝珠山の奥深く楠樹の下に大切に埋め置きたり。直ちにこれを掘出して更めて鎮祭したまへ』
と誠を色に現はして奏上したり。神澄彦はおほいに喜び、ただちに玉守彦を先頭に、あまたの神司を遣はし、白木の輿を作りて宝玉を納め、青雲山に奉迎せしめ、ここにあらためて立派なる遷座式を挙行し、玉守彦は疑ひ解けて晴天白日となり、かつその注意周到なる行動を激賞され、重く用ゐらるることとなり、天下に盛名を馳せにけり。
(大正一〇・一一・一八 旧一〇・一九 河津雄録)
(第一九章~第二〇章 昭和一〇・一・一六 於別府・亀の井旅館 王仁校正)
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