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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第7篇 崑崙山よみ(新仮名遣い)こんろんざん
文献名3第23章 鶴の一声〔123〕よみ(新仮名遣い)つるのひとこえ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月20日(旧10月21日) 口述場所 筆録者出口瑞月 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版135頁 八幡書店版第1輯 309頁 修補版 校定版139頁 普及版60頁 初版 ページ備考
OBC rm0323
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本文  崑崙山には紅色の国魂を、紅能宮を造営して鄭重に鎮祭され、八王神には磐玉彦を任じ、妻磐玉姫は神務を輔佐し、八頭神は大島彦が任ぜられ、大島姫妻として神政を内助し、紅能宮の司には明世彦、明世姫の二神奉仕し、崑崙山一帯の地方は、きはめて太平無事に治まりゐたりける。
 磐玉彦は名利に薄く、かつ忠誠無比にして、一切の宝玉、珍品を地の高天原に献納し、自己を薄くし、下を憐み、善政を布きたまひて、四辺よく治まり、鼓腹撃壌して神人その業を楽み、小弥勒の神政は樹立されたる姿なり。ために天上の日月は清く晴れわたり、蒼空一点の妖気をとどめず、五風十雨の順序ととのひ、地には蒼々として樹草繁茂し、五穀ゆたかに、鳥啼き花笑ひ、四季ともに春陽の気充ちて、世界第一の楽土と羨望さるるにいたりける。
 磐玉彦は、
『天下克く治まり、神人みづから田を耕して食し、井を穿つて飲み、室に憤怨の声なく、神人和楽の色あり。かかる瑞祥の世には、天地の律法も徒に空文と化し、八王神の聖職もまた無用の長物たるに似たり。日夜無事に苦しみつつ高位にあるは、天地に対し何ンとなく心愧かしさに堪へず。すみやかに八王神の聖職を辞退して下に降り、神人とともに神業を楽まむ』
と決意し、ひそかに八頭神大島彦を招き、その意を告げたまひける。
 大島彦はこの言を聞きておほいに驚き、暫時黙然として何の答弁もなく、八王神の顔を眺めつつありしが、たちまち首を左右に振り涙を流して諫めていふ。
『崑崙山一帯の今日の至治太平なる祥運は、貴神司の神徳の致すところにして、我らをはじめ下万神万民の貴神司を慕ひたてまつりて、感謝措く能はざるところなり。しかるに貴神司にして聖位を捨て、野に下らせたまへば、いづれの神司か、よくこの国土を治むべき。上を敬ひ下を愛撫し、もつて社稷を安全に保つは聖者の天賦的聖職なり。願はくば大慈大悲の聖徳によりて、なにとぞ退位の儀は、断念させたまへ』
と声涙交々下つて、諫言よく努めけるに、磐玉彦は答へて、
『我は八王神として、高天原の大神より重職を忝なうし、何の功労もつくさず、日夜神恩の深きを思ふごとに、慙愧の念胸に迫りて苦しく、一日として心を安んずることあたはず。下神人は日夜営々兀々として神業に奉仕し、汗油をしぼりて勤勉神業を励むなる世に、吾はいたづらに雲深く殿中にありて安逸の生を送り、何の活動をもなさず、曠職いたづらに光陰を消するは、天地の大神に対したてまつり恐懼にたへず。今日の至治泰平は、要するに貴下らが誠実と苦心の賜なり。すみやかに吾の思望を許し、貴下は直ちに八王神の位に昇りて神務を主管されたし。吾はこれより夫妻ともに山野に隠れ、修験者となりて神明に祈り、神政の万歳を守らむ。男子たるもの一度決心したるうへは、いかなる諫言も拒止も耳にはいり難し』
と決心の色面に現はれ容易に動かすべからず。大島彦も、平素寡欲にして恬淡水のごとき八王神なれば、如何ともするに由なく、ただ黙然として深き憂に沈みゐたりしが、ヤヽありて大島彦は口をひらき、
『貴神司の潔白なる御神慮は、神人ともに常に歎賞おかざるところ、今更いかに諫めたてまつるとも、初志を翻させ給ふことなからむ。されど貴神司の身魂は貴神司の単独に処置さるべき軽々しきものに非ず、遠き神世の因縁によりて上下の名分定まり、天地の大神の優渥なる御委任に出づるものなれば、吾らはこれより直ちに地の高天原に参上がり神示を蒙りしうへ、その結果を詳しく奏上せむ。何はともあれ、それまでは何事も吾らに一任あらむことを』
と力をこめて歎願したりしに、磐玉彦は、
『貴下の言道理にかなへり、万事は一任すべし。よきやうに計らひくれよ』
と言を残して奥深く姿をかくしたまひける。
 大島彦はただちに天の磐船に乗り、従者をともなひ空中風をきつて竜宮城に到着し、大八洲彦命に謁をこひ、八王神の退隠の件につき、裁断を下されむことを奏請したりける。ここに大八洲彦命は、すぐさま地の高天原の大宮にいたりて国直姫命に拝謁し、前述の次第を逐一奏上し、神勅の降下を願ひしに、国直姫命は衣服を更め、身体を清め、大神殿に進みいり、恭しく神勅を乞ひたまひ、大八洲彦命を近く召し、容姿をあらため厳かに神示のおもむきを伝達されたり。その神示の大要は、
『磐玉彦は遠き神代よりの御魂の因縁によりて、崑崙山に八王神の聖職を拝するは動かすべからざる神界の一定不変の経綸なり。君は万古君たるべく、臣はまた万古末代臣たるべし。王にして臣となり、あるひは下賤の地位に降り、臣にしてたちまち王の位に進むごときは、天地の真理に違反し、かつ大神の御神慮を無視するものなり。神勅一度出てはふたたびこれを更改すべからず。神の一言は日月のごとく明らかにして一毫も犯すべからず。かつ名位は神の賦与する正欲にして、長者たるものの欠くべからざる栄誉なり。磐玉彦いかなればかかる明瞭なる問題を提出して、大神の御神慮を悩ませ奉るぞ。たとへ生くるも死するもみな大神の御心のままなり。一時も早く片時もすみやかに神慮を反省し、もつて神勅のまにまに八王神の聖職を奉仕し、今後ふたたびかかる問題を提出し神慮を煩はすこと勿れ』
との厳命なりける。
 大八洲彦命は神示を拝し、恭しく礼を述べ、大島彦を近く招きて、神示を詳細に諭達したまへり。
 大島彦はおほいに歓び急ぎ崑崙山に飛還し、八王神に一切の神示を恭しく復命奏上したりけり。素より正義純直の八王神は、神勅を重ンじ前非を悔い、ふたたび元の聖職につき、その後数百年のあひだは、実に至治至楽、泰平の聖代は継続されたり。神命の犯すべからざるは、これにても窺ひ知らるべし。
(大正一〇・一一・二〇 旧一〇・二一 出口瑞月録)
(第二一章~二三章 昭和一〇・一・一六 於亀の井旅館 王仁校正)
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