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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第9篇 隠神の活動よみ(新仮名遣い)いんしんのかつどう
文献名3第38章 四十八滝〔138〕よみ(新仮名遣い)しじゅうはちたき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
長高山を出た道彦は、白狐・高倉の後を追って東北に進み、氷の張り詰めた開教を渡ってアラスカの高白山の谷間にやってきた。

すると、高白山の主将である荒熊彦(長白山の清照彦の実父)が谷底に落ちて重傷を負っているところに出くわした。

道彦は高倉の助けによって荒熊彦を谷から救い上げた。この功により、荒熊彦から信頼されて、聾唖痴呆の従僕となって高白山に仕えることになった。

高白山の重臣・八十熊別は実は、常世姫の間者で、長い間密かに高白山に潜んで機会をうかがっていた。

ときしも、ローマの戦いに敗れた言霊別命が、高白山に忍んできた。言霊別命は常世の国に捕虜として送られたが、言代別命によって救われ、密かに高白山に身を隠したのである(言霊別命の妹は、荒熊彦の実の息子・清照彦に嫁いでいるため、荒熊彦とは縁戚にあたる)。

言霊別命は名を変えて高白山の「賓客」として潜伏していたが、八十熊別は醜女の報告によってこのことを知ると、荒熊彦・言霊別命を毒殺しようと企んだ。

しかし道彦がその計略を暴くと、八十熊別は部下の邪軍に荒熊彦・言霊別命を襲わせた。道彦は高倉の術の助けを借りて、邪軍をさんざんに打ち負かした。そして逃げようとする八十熊別を倒した。

言霊別命はしばらく地の高天原にも居所を隠し、高白山の主将となった。道彦は活躍の後、またしても高白山から姿をくらました。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月07日(旧11月09日) 口述場所 筆録者栗原七蔵 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版224頁 八幡書店版第1輯 340頁 修補版 校定版229頁 普及版100頁 初版 ページ備考
OBC rm0338
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本文  長高山の城塞より煙のごとく消え失せたる道彦は、高倉のあとを追ふて、遠く東北にすすみ、氷のはりつめたる海峡を渡りて、アラスカの高白山の谷間に進みたりしが、すこしく谷川の上流にあたりて喧騒の声聞え来たる。道彦はその声をしるべに谷川をどんどん上りゆきみれば、谷の両側はあたかも鏡を立てたるごとく、断巌絶壁の一方に、あまたの人々寄り集まり、右往左往に声を放ちて騒ぎゐたり。
 見れば、高白山の主将荒熊彦は、谷間に顛落して大負傷をなし、谷水を鮮血にそめ苦しみつつありしなり。
 神司らはこれを救はむとすれども、名におふ断巌絶壁、いかんともすることあたはず途方にくれゐたりける。
 このとき白狐の高倉は、金色の槌と変化し、絶壁をうち砕き、足のかかるべき穴を穿ちつつ谷底に下り行く。道彦は傍なる山林に生茂れる藤葛を長く結び、谷川のほとりの老木の根にその一端を結びつけ、みづからその蔓を谷底に垂れ、高倉の穿ちおきたる巌壁の穴に足をかけ、やうやく谷底に下りつき、荒熊彦のかたはらに寄りそひ、水を口にふくみて面上に吹きかけ、かつ天津祝詞を奏上し、鎮魂の神術をほどこし、やうやく正気づき、出血もただちに止りたれば、右の脇に引抱へ、藤葛を左の手に持ち、巌壁の穴に足をかけ上りきたりぬ。神司らの喜びの声、感歎の声は天地も崩るるばかりなり。荒熊彦は道彦を命の親として尊敬し城内にともなひ帰り、山海の珍味を出して饗応し、救命の恩を感謝したりける。
 さて荒熊彦は衆とともに、この谷間の絶景を眺めて酒宴を催し、興に乗じて踊り狂ひ眼くらンで、この千仭の谷間に顛落したりしなりけり。この谷川は四十八滝と称し、いたる所に奇岩、怪石散在して、大小四十八個の荘厳なる瀑布が出現し、風光絶佳の遊覧所となりゐたりけり。
 道彦は荒熊彦の信任を得、聾唖痴呆の強力として侍臣のうちに加へられ、つひには炊事の用務を命ぜられ、まめまめしく奉仕しゐたり。
 高白山の城内の宰相に、八十熊別といふ徳望高き人あり。この人は常世姫の間諜にして、古くより高白山に謀計をもつて忍び入り、時をみて高白山を顛覆せむと企てゐたりける。
 ここにローマの戦に敗れ、常世の国に送られたる言霊別命は、中途にて、言代別命のために救はれ、身を変じて高白山にのがれ、賓客として、荘厳なる別殿に迎へられ、時機を待ちつつありしが、八十熊別は、言霊別命の素性を探知せむと、探女を使役して常にその行動を注視せしめゐたり。探女の名を月の姫といふ。月の姫は常に八十熊別の命により、言霊別命の侍女として、表面まめまめしく仕へゐたりぬ。
 ある夜、言霊別命と荒熊彦の密談を立聴きしてをり、ひそかにその詳細を八十熊別に報告しければ、八十熊別は月の姫に耳語して何事か命令を下しける。
 時に八十熊別は、茶の湯の饗応に言寄せて荒熊彦夫妻を招待し、かつ賓客なる玉照彦を招待したり。玉照彦は言霊別命の仮名なり。道彦は荒熊彦の侍者として宴席に現はれしが、彼はただちに炊事場にいたり、水をくみ茶を沸かすなど、まめまめしくたち働きける。
 八十熊別の侍者は、道彦の聾唖と痴呆とに心をゆるし、よろこびて炊事一切をうち任せける。月の姫は客人に茶をたて、これをすすめむとするとき、懐中よりひそかに毒薬をとり出し、茶の湯に投じたるを道彦は素知らぬ顔にこれを眺めゐたりける。月の姫はうやうやしく茶の湯を両手にささげ、玉照彦、荒熊彦らの前にすゑ、一礼して座を立ちにける。
 道彦はただちに月の姫を強力に任せてひきつかみ、茶席の前に現はれ出で、仰向に押し倒し、その茶を取るより早く、月の姫の口に無理やりに飲ませたり。
 月の姫はたちまち手足をもがき、黒血を吐きことぎれにける。
 八十熊別は謀計の暴露せむことを恐れ、合図の磬盤を打つやいなや、どこともなく数多の邪軍現はれ、玉照彦、荒熊彦らを目がけて前後左右より、長刀を抜き放つて切り込みぬ。このとき道彦は、高倉の妙術により、数百の道彦となつて現はれたれば、八十熊別の味方の邪軍は、縦横無尽に、道彦を目がけて切りこめども、いづれも皆空を斬り、影を追ひ、勢あまつて階上より地上に顛落し、さんざんに敗北したりける。
 八十熊別はこの態を見て、裏門よりのがれ出むとするや否や、幾千丈とも限りなき深き広き池沼にはかに現出して、遁るるの道なかりける。これは高倉白狐の謀計的幻影なりける。
 八十熊別はやむをえず、あとへ引返すとたんに、真正の道彦のために、八つ割にされ、ここに高白山の妖雲はまつたく晴れわたり、真如の明月は、高く中天に輝きはじめたり。
 言霊別命は、高白山の主将となり、しばらく地の高天原の神司らにも行衛を秘密にしゐたまひける。
 荒熊彦、荒熊姫は、言霊別命に一切を譲り、みづから従臣となり忠実に奉仕したりしが、道彦の姿はまたもや煙と消えにける。
(大正一〇・一二・七 旧一一・九 栗原七蔵録)
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