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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第9篇 隠神の活動よみ(新仮名遣い)いんしんのかつどう
文献名3第39章 乗合舟〔139〕よみ(新仮名遣い)のりあいぶね
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
道彦は高白山を出てから、常世の国・スペリオル湖の北岸に出で、ロッキー山に向かって渡し船に乗り合わせた。

船の中には、長高山で行き分かれた八島姫も乗り合わせていた。八島姫は船の中で南高山の従神に見つかり、父母兄の困窮を聞かされる。国直姫命から授かった神命と、父母兄弟への思いの間で苦しむのであった。

道彦は姫を認めたが、ついに正体を明かさずに船を降りた。一方、南高山の従神に国に帰るように詰め寄られた八島姫は進退窮まるが、白狐が姫の身代わりとなって現れ、本物の八島姫はその場を逃れることができた。

従神はそうとは知らずに姫の身代わりを南高山に連れて帰るが、身代わりの姫の帰城に安心した父・大島別は病気本復し、後日神政成就の神業に参加することになる。

一方、道彦は常世城に従僕となって八王大神の側近く仕え、悪神の計画を探知することになる。一方本物の八島姫も常世城に潜入して常世姫の侍女となり、邪神の計画一切を探って後に偉勲を立てることになる。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月07日(旧11月09日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版229頁 八幡書店版第1輯 341頁 修補版 校定版234頁 普及版103頁 初版 ページ備考
OBC rm0339
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本文  道彦は高白山を出でしより、諸方を遍歴し艱難辛苦を重ねて、やうやく常世国スペリオル湖の北岸に出たり。ここに船を傭ひ、ロツキー山に向はむとしたり。船中には沢山の神人乗りゐたり。八島姫もいつの間にか、この船の客となり居たりしが、道彦はわざと空とぼけて、素知らぬ顔をなしゐたり。八島姫は道彦の変りはてたる姿を見て、少しも気付かざりける。
 この時船の舳先よりすつくと立ちて、八島姫の傍に近づききたる神人あり、これは南高山の従臣玉純彦なりき。南高山は八島姫の出城以来、四方八方に神人を派遣して姫の行方を探しゐたりしなり。玉純彦は八島姫にむかひ、飛つくばかりの声を発し、
『貴女は八島姫にましまさずや』
といふ。八島姫も風采容貌ともに激変して、ほとンど真偽を判別するに苦しむくらゐなりしかば、八島姫は首を左右に振り、
『われは旭姫といふ常世城の従臣にして、南高山のものに非ず、見違へたまふな』
と、つンとして背を向けたるを玉純彦は、どことなく八島姫の容貌に似たるを訝かり、姫の前方にまはりて首を左右にかたむけ、穴のあくばかり千鳥のごとき鋭き目を見はり、
『如何にかくしたまふとも、貴女の額には巴形の斑点今なほ微に残れり。われは主命により貴女を尋ねむとして、櫛風沐雨、東奔西走あらゆる艱難をなめつくし、今ここに拝顔し得たるは、天の授くる時運の到来せしならむ。袖振り合ふも他生の縁といふ。況ンや天地のあひだに二柱と無き主の御子においてをや。今この寒き湖の中に一蓮托生の船客となるも、かならず国治立命の御引き合せならむ、是非々々、名乗らせたまへ』
と、涙を流して男泣きに泣く。
 八島姫は名乗りたきは山々なれども、国直姫命の神命を遂行し、地の高天原に復命を終るまで、なまじひに名乗りをあげ、神業の妨害とならむことをおそれ、断乎としてその実を告げざりし。八島姫の胸中はじつに熱鉄をのむ心地なり。玉純彦はなほも言葉をついで、
『貴女はいかに隠させたまふとも、吾は正しく八島姫と拝察したてまつる。貴女の出城されしより、御父は煩悶のあまり、重き病の床につかせたまひ、御母また逆臣豊彦のために弑せられ、御父大島別は老いゆくとともに世をはかなみ、ぜひ一度八島姫に面会せざれば死すること能はずと、日夜悲嘆の涙にくれたまふのみならず、御兄八島彦は、瓢然として出城されしまま、行方不明とならせ給ふ。海山の大恩ある御父の難儀をふりすて、わが意中の道彦の後を追はせたまふは、実に破倫の行為にして天則に違反するものに非ずや』
と言葉をつくして述べたてける。
 姫の胸中は暗黒無明の雲にとざされにけり。ほどなく船は南の岸に近づきぬ。この対話を聞きゐたる道彦は、はじめて様子を知り、いよいよ八島姫なることを悟り、つくづくその面を見れば、かすかに巴形の斑点を認むることを得たり。
 船はやうやく岸に着き、神人は先を争ふて上陸したり。道彦は八島姫に悟られじと直ちにその姿を物陰に隠したるに、玉純彦は姫の手を固く取りて離さざりけり。
 八島姫は進退きはまり、国治立命の神霊にむかひて、この場を無事にのがれむことをと祈願したるに、たちまち白色の玉天より下り、二人の前に落下し白煙濛々としてたち昇り、四辺をつつみける。玉純彦は驚きて、姫の手を離したるを幸ひ、姫は白煙のなかを一目散に南方さして逃げ去りにける。
 ややありて白煙は四方に散り、後には八島姫地に伏して泣き倒れてゐたり。これは白狐旭の変化なりき。玉純彦はふたたび傍に寄り、千言万語をつくして帰城をすすめたれば、姫はやうやう納得して、玉純彦とともに帰城の途につきにける。
 数多の山河を跋渉し、やうやく南高山の城内にたち帰り、八島姫は久しぶりにて父に面会し、無断出城の罪を謝したりしが、父はおほいに喜び、かつ玉純彦の功績を賞揚し、城内にはかに春陽の気満ち神人らは祝宴をひらいて万歳を唱へ、大島別はここに元気回復して、後日神政成就の神業に参加することとなりける。
 道彦は八島姫の目を免がれ、常世城に入り、従僕となり遂に抜擢せられて、八王大神の給仕役となり、総ての計画を探知するを得たり。また白狐の変化ならざる八島姫も同じく常世城に入り、常世姫の侍女となり、一切の邪神の計画を探り、地の高天原に復命し、偉勲を樹つる次第は後日明瞭となるべし。
(大正一〇・一二・七 旧一一・九 加藤明子録)
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