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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第11篇 新規蒔直しよみ(新仮名遣い)しんきまきなおし
文献名3第45章 猿猴と渋柿〔145〕よみ(新仮名遣い)えんこうとしぶがき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
聖地の天変地異が一向に収まらない中、国照姫らは国祖に高照姫命らを律法違反で訴えた。国祖はまたしても、自ら定めた律法に背くわけにもいかず、四柱の天使たちをエデンの園に追放した。これにより、聖地の天変地異はぴたりと収まった。

ちなみに高照姫命は金勝要神の和魂であり、真澄姫命は幸魂、言霊姫命は荒魂、竜世姫命は奇魂である。金勝要神は大地神界の根神であったが、自我心が頑強であったためにエデンの園に押し込められ、次いで地底の穢き国に墜落して、三千年の辛苦を嘗めることになった。

邪神たちは、跡継ぎの天使長は八王大神・常世彦が任命されるであろうと期待していたが、国祖は天から沢田彦命を降し、天使長に任命した。沢田彦命は金神の首領にして、大将軍と称せられる神である。

天使には、同じく天より降した沢田彦命一派の真心彦らを任じた。

真心彦の部下、百照彦は、主人を慰めようと日夜焦慮していた。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月09日(旧11月11日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版263頁 八幡書店版第1輯 353頁 修補版 校定版267頁 普及版119頁 初版 ページ備考
OBC rm0345
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本文  天使長高照姫命以下の女天使は、天地の激怒に狼狽し、ほとンど為すところを知らず、部下の神司らは残らず驚きのあまり右往左往に逃げまはり、或ひはつまづき或ひは失神し、とかげの欠伸したるごとき怪しき顔にて呆れ仰天するもあり、石亀の酒壺におちいりて溺れし時のごとき顔付にて、じつに見るも滑稽至極のいたりなりける。
 雷鳴は容易にやまざるのみならず、ますます激烈に鳴りとどろき、東北の強風しきりに吹き荒み、暗雲天地に閉してすさまじく、常夜の暗のごとく神人戦慄し、禽獣虫族にいたるまで、いづれも地に俯伏して息をも発せざるの惨状を現出したるぞ畏こけれ。また四柱の女天使は自我心もつとも強くして、神命さへも抗拒し律法を破りたれば、天地の大神の怒りに触れ、かかる混乱状態に陥りたるぞ是非なき次第なりけり。
 待ちまうけたる常世姫の部下、国照姫、杵築姫は、平素の願望を成就するはこの時を逸すべからずとし、国治立命の奥殿に参向し、高照姫命以下の女天使らの神勅を無視し、律法に違反せる罪科を詳細に陳述し、すみやかに四柱の女天使の職を免じ、聖地聖城を追放されたしと進言したり。神明に依怙なし、大神は天地の律法に対し、情に訴へて四天使を赦すわけにもゆかず、つひに涙をのンで四人の聖職を免じ、かつ四人に対し、改心のためとてエデンの園に籠居を厳命したまひける。
 四天使は神命と律法にたいしては抗弁するの余地なく、唯々として厳命を拝受し、命のまにまにエデンの園に籠居の憂目を味はふの止むなきに立いたりけり。
 四天使の追放とともに、さしも激烈なりし雷鳴も、凄じかりし電火も、烈風強雨も、たちまち鎮まりて清澄なる天地と化し、宇宙は夢の醒めたるごとき光景となりにける。
 エデンの園は、東北西の三方青山をもつて囲まれ、南方のみ広く展開して一条の大川清く流れ、自然の城壁を造られあり。四人はこの一定の場所に押込められ、草木の実を食用に供しつつ楽からぬ光陰を送りけり。
 エデンの園は、かつて邪神の棟梁竹熊の割拠せし所にして、鬼熊のために占領せられしが、鬼熊、鬼姫の没落後まつたく竜宮城の管下になりゐたりしところなり。
 因に、高照姫命は金勝要の神の和魂であり、
 真澄姫命は幸魂であり、
 言霊姫命は荒魂であり、
 竜世姫命は奇魂である。
 今まで四魂合一して、神業に奉仕されつつありしが、自我心の強烈なりしために、聖地聖城を追放され、さびしき配所の月に心を慰め、時を待ちたまふの止むをえざるに立いたりしは実に残念のいたりなりける。これについても慎むべきは、自我心と驕慢心なれ。神諭の各所に、
『金勝要之神もあまり自我心が強かつたゆゑに、狭い処へ押込められなさつたぞよ』
とあるも、この消息を漏らされたるなり。
 しかるに金勝要の神は、一旦大地神界の根神とまでなりたまひしに、自我心の頑強なりしため、エデンの園に押こめられ、なほも自我を頑強に張りしため、つひには地底の醜めき穢なき国に墜落し、三千年の辛苦をなめたまふに至りしなり。
 美山彦、国照姫の一派は、時運の到来をよろこびつつ、かならずや後継の天使長は、常世彦に新任され、自分らの一派は天使の聖職を命ぜらるるものと期待し、肩を怒らし鼻をうごめかし、得意頂点に達し、その吉報を今か、いまかと指をり数へて楽しみ待ちゐたりける。
 しかるに豈計らむや、後継の神司は常世彦一派に下らずして、天上より降りきたれる金神の首領なる沢田彦命の一派に降りける。沢田彦命は一名大将軍と諸神将より賞揚されつつありし英雄神におはせり。
 常世彦の一派は、案に相違し、猿猴が渋柿を口一杯に含みしごとく、頬をふくらせ渋面を造りながら、悄然として引下がりたるその状、見るも気の毒なる次第なりける。
 ここに国治立命は沢田彦命を天使長に任じ、妻沢田姫命を輔佐神司となし、真心彦を天使に任じ、妻の事足姫をして神務を輔佐せしめたまひける。
 また沢田彦命の従臣に、八雲彦、八雲姫の夫婦ありしが抜擢されて用ひられ、また真心彦には国比古、国比女の夫婦および百照彦を従臣として奉仕せしめられたり。
 百照彦は、真心彦のもつとも寵愛深かりし者にして、真心彦は霜の朝、月の夕に無聊を晴らすためと、百照彦を居室に招き、種々の面白き物語を聞きて心の労を慰めゐたり。百照彦は、いかにして主の心労を慰安せむかと常に焦慮しゐたれども、主の機嫌とるべき物語も、もはや種絶れとなりにける。
 いかにせば良からむやと我が居間に端座し、双手を組みて吐息をもらし、思案に沈みてゐたるを、妻なる春子姫は夫の近ごろの様子をうかがひ、夫には何か一大事の出来し、それがために朝夕苦慮をめぐらしたまふならむかと、心も心ならず、思ひきりて夫にむかひ言ふやう、
『近ごろの夫の様子を伺ひまつるに、よほど御心痛のていに見受けたてまつる。天地の間にかけがへなき水ももらさぬ夫婦のあひだに、なにの遠慮懸念のあるべきぞ、苦楽を共にすべき偕老同穴の契を結びたる妻に、心の苦衷を隠したまふは、実に冷酷無慈悲の御仕打ち、妾はこれを恨みまつる』
と涙片手に口説き立つれば、百照彦はやうやく口を開き、
『吾は主の仁慈と恩徳の深きに昼夜感謝の念を断たず。しかるに主真心彦は神務の繁忙に心身を疲労し、日をおひて身体やつれ弱らせたまふを見るにつけ、従臣の身として、これを対岸の火災視するあたはず、いかにもして主の御心を慰め奉らむと日々御側に侍し、神務の閑暇には面白き四方山の物語を御聞に達し、御心を幾分か慰め奉りきたりしに、もはや吾はめづらしき物語もつきたれば、今後はいかにして御心を慰め奉らむと、とつおいつ思案にくるるなり』
と語りて太き吐息をつく。春子姫は何事か期するところあるもののごとく、夫にむかひ笑顔をたたへ見せゐたりけり。
(大正一〇・一二・九 旧一一・一一 加藤明子録)
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