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文献名1霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
文献名2第1篇 八洲の川浪よみ(新仮名遣い)やすのかわなみ
文献名3第5章 議場の混乱〔155〕よみ(新仮名遣い)ぎじょうのこんらん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-04-29 17:25:39
あらすじ
行成彦は国祖が選定した八王・八頭を廃するなどという意見には絶対反対である、と憤然と述べ立てた。

八王大神は怒りに駆られて怒号し、行成彦を怒鳴りたてた。行成彦が反対意見を述べようと再び登壇するのを、八王大神は蹴り落とそうとした。

すると従者の道彦(大道別)が八王大神の腕をつかんで諌める振りをすると、八王大神は強力に締め上げられてその場に倒れてしまった。大鷹彦、美山彦はただちに駆け寄って、道彦を壇上から蹴り落とした。

ところが道彦の姿は煙と消え、代わりに壇の下に倒れて苦しんでいるのは、行成彦であった。八王大神はやっと立ち上がると、倒れている行成彦をはねのけようとした。すると行成彦の体から数個の玉が現れて、玉は天上へ昇って消えてしまった。

しかして、実際の行成彦は最初から自分の席に座ったままであった。また、道彦は八王大神の館の正門を守っており、会議の場にはいなかったのである。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月16日(旧11月18日) 口述場所 筆録者出口瑞月 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月30日 愛善世界社版31頁 八幡書店版第1輯 383頁 修補版 校定版33頁 普及版15頁 初版 ページ備考
OBC rm0405
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本文  行成彦は満場にむかつて慇懃に挨拶を述べ且つ、
『今回の大会議は世界永遠の平和を企図さるるため、八王大神および大自在天の発起されしものにして、じつに現今の世界の状況よりみて、まことに吾々は感謝に耐へないのである。これ全く二神が天下蒼生を愛したまふ大慈大悲心の発露にして大神の慈言に等し。我々は誠心誠意をもつて相終始しこの平和会議をして名実相伴ひ、真個世界の永遠平和の基礎たらしめざるべからず。この点においては、諸神司におかせられても吾々と同感なるべきことを信じて疑はない次第である。各自の武備を撤廃し、四海同胞和親の曙光に接するは実に同慶の至りである。ゆゑに我々は武備の撤廃については双手をあげて賛成するものである。されど吾々は八王廃止の件については、おほいに考ふべき余地の幾多存することと思ふ。そのゆゑは、かの八王なるものは、天地の大神の定められたる規定にして、それぞれに国魂を配置し、もつて神界現界御経綸の守護となしおかれ、八王は天地の律法をあまねく神人に宣伝し、かつ国魂を通じて国治立命に仕事するの聖職である。かかる聖職を神界大神の御神慮をも伺はず、軽々しくこれを提唱するごときは、第一天地の神明を無視したる反逆的行為なれば、吾らはこの議案にたいしては大々的反対である。各山各地の八王を撤廃するは、恰も扇子の要を抜きとりたると同様にして却つて、世界の四分五裂を招き、これより地上は一層の混乱、無明の天地と悪化せむ。吾々は世界の前途を思ふのあまり、一時も早くかくのごとき愚案は撤回されむことを望まざるべからず。いかに徳望高く、勢力旺盛にして旭日昇天の威望ある八王大神の提案なりとはいへ、かくのごとき天意に反したる議案には他人はいざ知らず、吾々は断じて盲従すること能はず』
とやや声を荒らげ、憤然として降壇した。
 ここに八王大神は烈火の如く憤りながら、強力の神道彦を従へ、ふたたび壇上に登り一座を瞰下し、恐ろしき眼を見はりつつ、視線を行成彦の方にむけたる時の容貌は実に六面八臂の邪鬼の面相そのままなりける。諸神司は固唾をのんで雨か、風か、はた洪水か、雷鳴か、地震かと、おそるおそる八王大神の顔色をのぞくやうにして、見上げてゐたり。
 このとき八王大神声を励まし雷鳴のごとくに怒号咆哮し、列座の諸神司をして恐怖の念に駆られしめたり。しかして行成彦をハツタとにらみ、
『汝は若年の身として小賢しくも屁理屈を百万陀羅述べ立るといへども、口角いまだ乳臭を脱せず。汝は律法を楯にとりて吾らの大慈旨を抹消せむとは片腹痛し。時世の大勢に透徹せざる迂遠狂愚の論議を、かかる尊き会議の席において蝶々喃々し、議席の神聖を汚し、天下の神人万有を安住せしめ、真個の天国を地上に顕出せむとする大自在天大国彦および吾らの神策の実行を妨害せむとする、その心事の陋劣にして悪逆無道なる実に汝の言辞といひ、精神といひ見下げ果てたるその振舞ひ、汝のごとき邪心を包蔵する愚者は、この席に列するの資格なし、一時もはやく退場せよ』
と厳命し、かつ諸神司の方に眼を転じていふ、
『諸神司は彼行成彦の言をもつて、天地経綸の神策を破壊するものと見做さざるや。諸神司にして我が説に賛成ならば、手をあげて以て誠意を示されたし』
と傍若無人の暴言をはき、場の四隅を見渡しける。諸神司はその権幕の猛烈さに、ますます気をのまれ、猫に出あひし鼠のごとく、戦々兢々として縮みあがり片言隻句も発し得ざるの卑怯さを遺憾なく発露したりける。
 行成彦は憤然として立ち上り、何事か自席より発言せむとするや、八王大神大に怒り、
『汝は神聖なる議場を汚す曲人なり。意見あらば何ンぞ場内の規律を守り登壇してこれをなさざるや』
と叱咤したるにぞ、行成彦は、
『然らば御免あれ』
といひつつ自席をはなれ登壇せむとするや、八王大神は、
『この愚昧者』
といふより早く、壇上より蹴り落さむとする際、従者なる道彦は暫時の御猶予と言ひながら、八王大神の片腕を掴みける。八王大神は強力の道彦に利腕を固く握られ、全身麻痺してその場に顔をしかめて打ち倒れたり。この態を見たる大鷹彦、美山彦は矢庭に壇上に立ち上がり、道彦を蹴り落したり。蹴落されたるは道彦と思ひきや、行成彦なりき。しかして道彦の姿は煙と消えて跡形もなくなりぬ。八王大神は痛さをこらへ、やうやくにして立上り、道彦を叱咤せむとし四辺を見れば、道彦の姿は見えず、行成彦が壇下に倒れて七転八倒し居たりける。八王大神は心地よげに打ながめ、
『汝は若年の分際として、老練なる神政者の我にむかつて抗弁せり。天地の大神は汝の暴逆を悪みたまひて、その高き鼻梁をうち砕きたまふ。今より汝は良心に立かへり、我主張に賛成せば汝のいまの無礼を許し与へむ』
と欣然として降壇する際、八王大神は吾が足をもつて行成彦の倒れたる身体をはね退けむとする刹那、行成彦の身体より数個の玉現はれ満場を照して天上へ上ると見るまに玉はその姿をかくしたりける。
 行成彦は、依然として最前より自分の議席に静まりゐたるなり。また道彦は八王大神の館の正門を離れず厳守しゐたりける。アヽこれ何物の所為なりしならむか。
(大正一〇・一二・一六 旧一一・一八 出口瑞月)
(序~第五章 昭和一〇・一・一九 於鹿児島市錦江支部 王仁校正)
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