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文献名1霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
文献名2第3篇 正邪混交よみ(新仮名遣い)せいじゃこんこう
文献名3第16章 善言美辞〔166〕よみ(新仮名遣い)ぜんげんびじ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-04-05 00:56:33
あらすじ
常世姫は出雲姫の歌に対して、答歌を返すことになった。その歌は、世界の混乱を治めて平和な世を作る願いを、八王大神の思いとして歌いこんだものであった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月19日(旧11月21日) 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月30日 愛善世界社版99頁 八幡書店版第1輯 408頁 修補版 校定版105頁 普及版46頁 初版 ページ備考
OBC rm0416
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本文  出雲姫は口演に代へ優雅と、皮肉との混交歌を歌つて、自己の憤怒と、所信とを遺憾なく、諸神の前に訴へたるにぞ、常世彦、常世姫は心中甚だ面白からず、冷然として出雲姫の歌を聞くともなしに聞き入りにける。
 凡て歌は天地神明の聖慮を和げ、万有に陽気を与へ、神人の心魂を照り明かす言霊の精華なり。ゆゑに常世彦もこれに向つて憤怒を発し、叱責するの余地無かりしなり。
 現代の人間同士の会議は、すべて言論のみを用ゐ、決して歌なぞの風雅の声に耳を藉すものはなく、却つてこれを禁止するにいたれり。それゆゑに現代の会議は何事にも口角泡を飛ばし、眼を釣り争論の花を散らせ、鎬をけづりて快哉を叫び、如何なる問題に関しても言葉冷たく尖どく不平不満の間に優勝劣敗的多数決てふ、衆愚本位の議決に甘ンじ居らざるべからず。秋津嶋浦安国の神国の遠き昔は言霊の幸ひ、助け、天照り渡り生ける国にして、善言美詞をもつて相終始したりしに、最早この時代は、天地神明の大道なる言霊の応用も乱れ乱れてつひにはその跡を絶つに至れり。今日にては神人が優雅にして高潔なる歌をもつて、その意志を述ぶるもの甚だ尠く、ただ上位の神人の間にわづかに行はれ居たりける。ゆゑに今回の常世の会議においても、神人の自由にまかせ、直接の言辞によるものと、単に歌のみに依つて意志を表白するものと、言辞と歌とを混合して口演するものとありしなり。言霊の清く朗かなる神人は、凡て和歌によりて難問題を解決せむと努力したりける。
 ここに常世姫は、出雲姫の意見表示の歌にたいして、答歌を歌はねばならぬ破目となりければ、常世姫は長袖を壇上に曳摺りながら、声音清く滑かにその主張を歌ひける。その歌、
『天地を造りかためし大御祖  国治立の大神の
 千々の恵に生れし国  国とふ国は多けれど
 神とふ神は沢ませど  真の神は一はしら
 神の造りて神の住む  常磐の松の生ひ茂り
 色香妙なる白梅の  咲きて賑ふ神国は
 常世の国を余所にして  尊き国はあらざらめ
 常世の国はとこしへに  開け栄えて天の下
 四方の国々嶋々も  東の空ゆきらきらと
 輝き昇る朝日子の  光と共に明けく
 治る国は天地の  その真秀良場や常世国
 常世の国の空高く  そそり立ちたるロッキーの
 山よりたかきそのほまれ  空行く雲も憚りて
 避くる斗りの大稜威  常永に照る日の常世彦
 心は清く身も清く  雪より清き常世姫
 常夜の暗を照らさむと  赤き心をふり起し
 世の叢雲を払ひつつ  千々に思ひを筑紫潟
 深き恵も不知火の  波に漂ふ神人の
 苦しみ叫ぶ声あはれ  あはれを余所に見捨かね
 ここに八王の大神は  山より高く海よりも
 深き恵の神の露  諸々の千草にそそがむと
 神と親との心もて  開きたまひしこの集ひ
 集ひたまひし山と野の  つかさと居ます八王の
 神に仕ふる八頭  国魂神や百の神
 集まる数は八百柱  八十八柱の真心を
 一つに協せ活力を  一つに固めて天の下
 四方の醜草薙ぎ払ひ  はらひ清めて天に坐す
 天の御柱神の前  国治立の知ろしめす
 豊葦原の瑞穂国  いや常永に平けく
 安く治めて浦安の  神の御国を守らむと
 常世の城の神集ひ  先づ八王の聖職をば
 科戸の風の朝なさな  霊霧四方に吹きはらひ
 天明けく地清く  高き低きの差別無く
 親と児のごと親しみて  神の恵を嬉しみつ
 治まる御代を松ばかり  時じく薫る白梅の
 世は照妙の神の国  開く常世の神集ひ
 かくも尊き神人の  清き集ひを怪しみて
 きたなき心と言挙し  心にかかる黄昏の
 空に湧き立つ出雲姫  暗き御魂の戸を開き
 常世の神の赤心を  諾ひ神と国のため
 うたがふ胸の雲霧と  暗の戸張を引上げて
 神の定めしこの度の  集ひの功すくすくと
 言問ひ和ごめ天津神  国の御祖と坐しませる
 国治立のみこころに  叶ひ奉れよ百の神
 叶ひ奉れよ百の神  これぞ常世の願なり
 これぞ常世の願なり』
 斯くうたひて列座の神司に一礼し、
『今回の八王大神の救世的提案に奮つて賛成されむことを望む』
と優しき花の唇を閉ぢ、壇上なる己が設けの席におもむろに着きにける。
(大正一〇・一二・一九 旧一一・二一 出口瑞月)
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