森鷹彦のこの演説は、白狐出身の神使・鬼武彦という猛神の変化の現れであった。鬼武彦は大江山の守り神で、悪魔征服の強神である。鬼武彦は地の高天原の神命を奉じて、常世会議を改めるべく使わされたのであった。
鬼武彦の働きにより、常世姫の反歌の効力は消え去り、邪神の魔力も発揮する機会がなくなってしまった。天地の間はすべて、宇宙の大元神たる大神のお許しないときは、九分九厘で打ち返されるのである。
大神は自ら創造したこの世界を修理固成し、無限の霊徳によって生み出した神人を天地経綸の司宰として、大神に代わって至善・至美・至安・至楽の神境となすのが主願なのである。
それがいつしか利己的精神が生じ、自由行動・優勝劣敗の悪風によって、八王大神のように天下を掌握しようという強権的な神が現れるに至ったのである。
神人とは人の形に造られた神の事を言う。その本性は猛虎、獅子、竜、白蛇などであり、危急のときは元の姿に還元することもあるが、人の姿を捨てて元の姿を現すのは重大な天測違反であり、畜生道に落ちる恐れがある。
人間にしても、危急の際に自暴自棄的な行動により玉砕主義を取るものもあるが、これは自己の滅亡に他ならない。霊魂の人格までも失墜するに至る、愚かな行為である。天地経綸の大司宰として生まれた人間は、いかなる場合も荒魂の忍耐力をふるって玉全をはかるべきである。
国祖にしても、万一憤りによって太初の姿に還元したなら、この世界を破壊してしまうほどの神威を発揮してしまうので、そのようなことがないようご神慮により、あくまでも忍耐に忍耐を重ねて天地の規則を遵守しているのである。