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文献名1霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
文献名2第3篇 正邪混交よみ(新仮名遣い)せいじゃこんこう
文献名3第22章 窮策の替玉〔172〕よみ(新仮名遣い)きゅうさくのかえだま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
いかなる善なる事業も、神明の許諾を得なければ実現することは難しいのである。八王大神が野心を内蔵している以上、常世会議が紛糾するのも当然のことである。

八王大神の急病は、鬼武彦の国祖の神命にしたがった活動の結果であった。八王大神の容態は激烈で、苦悶にあえぎながらも自らの野心に執着していた。

常世姫は、自分だけの力量では会議を意図通りに操縦することが難しいことを不安に思っていた。そこで、八王大神と体格の似た道彦を変装させ、八王大神として会議に出席させるよう謀議が決まった。

八王大神の扮装をした道彦は、顔も姿形も八王大神によく似ていることに、常世姫も驚いた。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月23日(旧11月25日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月30日 愛善世界社版141頁 八幡書店版第1輯 423頁 修補版 校定版149頁 普及版64頁 初版 ページ備考
OBC rm0422
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本文  いかなる美事善事といへども、天地根本の大神の御許容なきときは、完全に何の事業といへども、成功すること不可能なり。世界の一切はすべて神の意志のままにして、神は宇宙一切をして至美至善の境界に転回せしめむとするが第一の理想にして、かつ生命なり。ゆゑに如何なる善なる事業といへども、第一に神明を祭り、神明の許諾を得て着手せざれば、その善も神をして悦ばしむることを得ず。つまり神の眼よりは、自由行動の所為と見られ、かつ宇宙の大本たる神明の尊厳を犯すものとなるがゆゑなり。いはンや、心中大なる野心を包蔵し、天下の神人を籠絡したる八王大神、および、大自在天一派の今回の常世会議における、紛糾混乱怪事百出するなどは、国祖の神の大御心に叶はざりし確なる證拠なるべし。これを思へば人間はいかなる善事をなすも、まづ神の許しを受けて、至誠至実の心をもつて熱心にとりかからざるべからざるものなり。
 ある信徒の中には、抜けがけの功名を夢み、神のため道のため、非常なる努力をはらひ九分九厘の域に達したるとき、その誠意は貫徹せずしてガラリとはづれることあり。その時にいふ、吾々は神のため、道のため、最善の努力をつくすにもかかはらず、神はこれを保護したまはず。神は果してこの世にありや。一歩をゆづつて神が果してありとせば、無力無能理義を解せざるものと嘲罵し、あるひは恨み、つひには信仰より離るる者多し。しかしそれこそ大なる誤解慢心と云ふべし。神が人間をこの世に下したまへる目的は、何事も神の命のまにまに、天地の経綸に当らしめむが為なり。もし、神にして善事ならば自由行動をなしても差支なしとする時は、ここに宇宙一切の秩序を破壊するの端を開くことを忌みたまふが故なり。ゆゑに、一旦神に祈願し着手したることは、たとへその事が万一失敗に終るとも、ふたたび芽を吹き出し、立派に花咲き実る時期あるものなり。これに反して自己の意志よりはじめて失敗したることは、決して回復の時期はなきのみならず、神の怒りに触れて、つひには身を亡ぼす結果をきたすものなり。
 八王大神はじめ、常世姫らの連日の献身的大活動も、最初に神の認可を得ず、加ふるに胸中に大野心を包蔵しての開催なれば、成功せざるは当然の理なり。しかして八王大神の壇上にて病気突発したるは、大江山の鬼武彦が、国祖の神命によつて、邪神の陰謀を根本的に破壊せむとしたる結果なり。八王大神の急病によりて、常世城の大奥は非常なる混雑を極め、そのためせつかくの会議も、一週間停会するのやむなきに立ちいたりぬ。八王八頭をはじめ、今回会議に集ひたる神人は、代るがはる八王大神の病気を伺ふべく、夜を日についで訪問したりしが、常世姫は代りてこれに応接し、一柱の神人もその病床に入ることを許さざりける。八王大神は、日に夜に幾回となく激烈なる吐瀉をはじめ、胸部、腹部の疼痛はげしく、苦悶の声は室外に漏れ聞へたり。かかる苦悶のうちにも、今回の大会議の成功せむことを夢寐にも忘れぬ執着心を持ちゐたるなり。大神の病は時々刻々に重るばかりにして、肉は落ち骨は立ち、ちようど田舎の破家のごとく骨の壁下地現はれ、バツチヤウ笠のごとく、骨と皮とに痩きり仕舞ひけり。
 常世姫は、重なる神人を八王大神の枕頭に集めて協議を凝らしたり。常世姫はいかに雄弁なりといへども、この大会議をして目的を達せしむるには、少しく物足りなく、不安の感あり。どうしても八王大神の顔が議場に現はれねば、たうてい進行しがたき議場の形勢なりける。
 ここに謀議の結果、八王大神と容貌、骨格、身長、態度、分厘の差もなき道彦に、八王大神の冠を戴かせ、正服を着用せしめて、身代りとすることの苦策を企てける。道彦は招かれて八王大神の病室に入りければ、常世姫は前述の結果を手真似で道彦に伝へけるに、道彦は嬉々として、ウーと一声、首を二三度も縦に振りて応諾の意を表しければ、神人らは道彦に衣冠束帯を着用せしめて見たるに、妻の常世姫さへも、そのあまりによく酷似せるに驚きにける。
(大正一〇・一二・二三 旧一一・二五 加藤明子録)
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