高月彦は長じて徳を発揮し、父の常世彦命を助けて善政を敷いたが、悪魔は絶えず身魂をつけねらっている。
舟遊びの際に八頭八尾の大蛇は高月彦と変化して現われた。父の常世彦命もどちらが本物を区別することができなかった。そこでやむをえず、一人は邪霊の化身と知りながら、両者を立てざるを得なくなっていた。
常世彦命はこのことに心を痛め、過去の悪事を懺悔し、国祖の仁慈を感謝しつつ帰幽してしまった。
神々らは後任の天使長に高月彦を望んだが、二人の高月彦が現れて、諸神人らは真偽の判別に苦しんだ。
本物の高月彦は、妹五月姫の策を用い、父から守り袋と称する袋を取り出して、本物の証とした。偽高月彦の大蛇の霊は思わぬ展開に狼狽して、高月彦に襲い掛かったが、これを神言によって撃退した。
しかしこのような策略を用いることは、神人としてはもっとも慎むべきことである。高月彦は直後に悪寒に襲われて倒れてしまうが、これはいったんは逃げ出した八頭八尾の大蛇の霊が間髪を入れずに戻り、今度は高月彦に憑依してしまったのであった。