常治彦はエルサレムに帰還する前、エデンの河から這い上がって深い谷あいにやってきた。そこには、美しい女性のまわりに多数の鶴が舞っていた。
女性の側には湯が湧き出ており、女性は身体の傷を湯で治療していたのである。また、女性をよくよく見れば、塩治姫であった。
女性は常治彦を湯に招いた。常治彦が湯に入ると、前頭部の傷はすっかりいえて、角はなくなり、立派な神格の神となった。常治彦はこの塩治姫と夫婦の契りを結んだ。
温泉で養生を続けた二人は回復し、聖地に帰ることとした。すると一羽の鶴が降りてきて、常治彦の額を突いた。するとたちまち、たけのこのような角が額に生え出した。塩治姫はなぜか、常治彦の角を口を極めて賞賛した。
二人が聖地に帰ると、門を守っていた小島別が二人をさえぎった。常治彦は怒って、打ちかかってくる小島別を角で刺し殺した。
たちまち四方から、聖地の従者たちが得物をもって、常治彦に打ちかかった。常治彦は鋭い角で応戦した。
この騒ぎを聞きつけて、常世彦は殿内の常治彦・塩治姫とともに駆けつけた。すると、常治彦・塩治姫と瓜二つの者が、従者たちと争っていた。
常世彦は常治彦・塩治姫の手をとって宮殿の奥に引き返してしまった。