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文献名1霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻
文献名2第5篇 宇宙精神よみ(新仮名遣い)うちゅうせいしん
文献名3第29章 神慮洪遠〔229〕よみ(新仮名遣い)しんりょこうえん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
宣伝使が選定されて各地に配置された後、金銀銅の天橋の光は消えうせた。そして東北の天に十六個の黄金色に強く輝く大星が輝き、西南には銀色に輝く十六個の星が現れた。

たちまち天は墨を流したように暗黒となり、また血のように真紅の色となり、さまざまな色に変化した。そして暴風、日照り、寒風、火山、地震などの天変地異がしきりに発生した。

神人らは神頼みでいっせいに地に伏して嘆願する惨状を呈した。この天変地異は七十五日続いた。これは大神が地上神人の身魂を試したご経綸であったが、真の神の恩を感得した者は、千分の一にも満たなかった。

大神の悲嘆の涙と吐息は天変地異を発現させるため、穢れ曇った地上世界の様子をご覧になっても、泣くにも泣かれず隠忍していた。しかし数十万年のうちに体内に蓄積した涙と吐息は抑えきれず、ついにいつ体外に勃発するかもしれない事態に至った。

体内に溜め込んだ吐息は鼻腔よりかすかに漏れて大彗星となり、宇宙間に現れては消えていった。しかしその邪気なるガス体は宇宙間に飛散して、一切の生物の寿命を害するようになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月11日(旧12月14日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年4月15日 愛善世界社版171頁 八幡書店版第1輯 578頁 修補版 校定版173頁 普及版75頁 初版 ページ備考
OBC rm0529
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本文  天道別命、月照彦神以下の宣伝神選定され、各地に配置されてより、今まで天空を廻転しゐたる金銀銅の天橋の光は、忽然として虹のごとく消え失せ、再び元の蒼天に復し、銀河を中心に大小無数の星は燦然たる光輝を放射し出した。
 時しも東北の天にあたつて十六個の光芒強き大星一所に輝き始めた。その光色はあたかも黄金のごとくであつた。又もや西南の天にあたつて十六個の星光が一所に現はれた。その光色は純銀のごとくであつた。地上の神人は、この変異に対して或は五六七聖政の瑞祥と祝し、あるひは大地震の兆候となして怖れ、あるひは凶年の表徴となし、その観察は区々にして一定の判断を与ふるものがなかつた。
 忽ちにして蒼天墨を流せしごとく暗黒となり、また忽ちにして満天血を流せしごとく真紅の色と変じ、あるひは灰色の天と化し、黄色と化し、時々刻々に雲の色の変り行く様は、実に無常迅速の感を地上の神人に与へたのである。地は又たちまち暴風吹き荒み、樹木を倒し、岩石を飛ばし、神人を傷つけ、妖気地上を鎖すと見るまに、たちまち光熱強き太陽は東西南北に現出し、暑熱はなはだしく、地上の草木、神人その他の動物はほとんど枯死せむとするかと思へば、寒風俄に吹き来り、雹を降らし、雷鳴満天に轟き、轟然たる音響は各所に起り、遠近の火山は爆発し、地震、海嘯ついで起り、不安の念にかられざるものはなかつた。
 「かなはぬ時の神頼み」とでも云ふのか、今まで神を無視し、天地の恩を忘却しゐたる地上の神人は、天を仰いで合掌し、地に伏して歎願し、その窮状は実に名状すべからざる有様であつた。烈風の吹き通ふ音は、あたかも猛獣の咆哮するがごとく、浪の音は万雷の一斉に轟くがごとく、何時天地は崩壊せむも計り難き光景となつて来たのである。
 かくのごとき天地の変態は、七十五日を要した。このとき地上の神人は、神を畏れて救ひを求むるものあれば、妻子、眷属、財産を失ひて神を呪ふものも現はれた。中には自暴自棄となり、ウラル彦神の作成したる宣伝歌を高唱し、
『呑めよ騒げよ一寸先や暗よ
  暗の後には月が出る
 月には村雲花には嵐
  嵐過ぐれば春が来る
 ヨイトサ、ヨイトサ、ヨイトサノサツサ』
と焼糞になつて踊り狂ふ神は大多数に現はれた。
 そもそも七十五日間の天災地妖のありしは、野立彦神、野立姫神を始め、日の大神、月の大神の地上神人の身魂を試したまふ御経綸であつたのである。このとき真の月日の恩を知り、大地の徳を感得したる誠の神人は、千中の一にも如かざる形勢であつた。
 大国治立尊は、この光景を見て大に悲歎の涙にくれたまうた。
『アヽわが数十億年の艱難辛苦の結果成れる地上の世界は、かくも汚れかつ曇りたるか。如何にして此の地上を修祓し、払拭し、最初のわが理想たりし神国浄土に改造せむや』
と一夜悲歎の涙にくれ給うた。大神の吐息を吐き給ふ時は、その息は暴風となつて天地を吹きまくり、森羅万象を倒壊せしむるのである。大神の悲歎にくれ落涙し給ふ時は、たちまち強雨となりて地上に降りそそぎ、各地に氾濫の災害を来す事になるのである。
 大神はこの惨状を見給ひて、泣くにも泣かれず、涙を体内に流し、吐息を体内にもらして、地上の災害を少しにても軽減ならしめむと、隠忍し給ふこと幾十万年の久しきに亘つたのである。大国治立尊の堪忍袋は、もはや吐息と涙もて充され、何時破裂して体外に勃発せむも計りがたき状態となつた。
 されど至仁至愛の大神は、宇宙万有を憐れみ給ふ至情より、身の苦しさを抑へ、よく堪へ、よく忍び、もつて地上神人の根本的に革正するの時機を待たせ給ふのである。されど御腹の内に充ち満ちたる神の涙と慨歎の吐息は、もはや包むに由なく、少しの感激にも一時に勃発破裂の危機に瀕しつつあつた。アヽ宇宙の天地間は、実に危機一髪の境に時々刻々に迫りつつある。
 大神は多年の忍耐に忍耐を重ね給ひしより、その御煩慮の息は、鼻口よりかすかに洩れて大彗星となり、無限の大宇宙間に放出されたのである。一息ごとに一個の大彗星となつて現はれ、瞬くうちに宇宙間に数十万の彗星は、宇宙の各所に現はれ、漸次その光は稀薄となつて宇宙に消滅した。
 されどその邪気なる瓦斯体は、宇宙間に飛散し、遂には鬱積して大宇宙に妖邪の空気を充満し、一切の生物はその健康を害し、生命を知らず識らずの間に短縮する事となつた。ゆゑに古来の神人は、短くとも数千年の天寿を保ち、長きは数十万年の寿命を保ちしもの、漸次短縮して今は天地経綸の司宰者たる最高動物の人間さへも、僅かに百年の寿命を保し難き惨状を来すことになつた。
 アヽ無量寿を保ち、無限に至治泰平を楽しむ五六七出現の聖代は、何時の日か来るであらう。吾人は霊界における大神の御神慮と、その仁恵を洞察し奉る時は、実に万斛の涙のただよふを感ぜざるを得ない。
 神諭に、
『恋し恋しと松世は来いで、末法の世が来て門に立つ』
と述懐されたる大国治立尊の御聖慮を深く考へねばならぬ。
(大正一一・一・一一 旧大正一〇・一二・一四 外山豊二録)
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