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文献名1霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻
文献名2第6篇 聖地の憧憬よみ(新仮名遣い)せいちのどうけい
文献名3第42章 神玉両純〔242〕よみ(新仮名遣い)しんぎょくりょうじゅん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-04-03 02:43:49
あらすじ
神澄彦宣伝使は、一面の銀世界の中、雪をかきわけて南高山へとやってきた。みすぼらしい蓑笠姿で夜に門を叩くが、門番神は取り合わない。

神澄彦は大音声で出任せ歌を歌いながら、南高山の大島別を呼ばわった。大島別の娘夫婦、玉純彦と八島姫は、ただちに宣伝使を館内に招き入れた。夫妻はそれが神澄彦であることを認めた。

神澄彦は、天教山の宣伝使となって旅をしていることを打ち明けた。夫妻は神澄彦の宣伝に熱心に耳を傾けていた。

しばらくして、奥殿にそうぞうしい声が聞こえた。見れば、南高山の大島別は、憑依していた邪神が神澄彦の宣伝歌に驚いて逃げ出した刹那、老衰のために帰幽してしまっていた。

これより、玉純彦、八島姫夫妻は神澄彦の誠心に感じ、宣伝使となって南高山城内をはじめ諸方を遍歴し、神の福音を伝えることとなった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月13日(旧12月16日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年4月15日 愛善世界社版255頁 八幡書店版第1輯 607頁 修補版 校定版260頁 普及版108頁 初版 ページ備考
OBC rm0542
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本文  雪は翩翻として降りしきり、地は一面の銀世界、南高山の鐘の音は、諸行無常と鳴り響き、黄昏告ぐる寂寥の、山路を辿る簑笠も、宣伝使は唯一人、雪押分けて上り来る、冷酷無残の浮世をば、天地の神の暖かき、その懐に救はむと、身の苦しみも打忘れ、神澄彦の宣伝使は、雲つく山を上り来る、南高山は大島別の管掌する聖地なり。
 ここに神澄彦は、旧知の神人を救はむと、見るも淋しき簑笠の、浮世を忍ぶ仮姿、漸う山頂に上りつき、表門に立つて力限りに門戸を打叩いた。華胥の国に遊楽せる門番は暖かき夢を破られ、目をこすりながら、仏頂面して出で来り、
『殊更寒き冬の夜の、この真夜中に門戸を叩くは何者ぞ。御用あらば明日来られよ』
と膠も杓子もなき挨拶なり。
 神澄彦神は、已むを得ず門外に立ちて声を限りに、
『三千世界一度に開く梅の花  南高山は高くとも
 天の星より未だ低い  大島別は偉くとも
 蚤に喰はれる浅ましさ  蚤に喰はれる弱虫の
 門戸を守る弱虫は  雪隠の虫か糞虫か』
と歌ひ始めた。門番は声荒らげて、
『この真夜中に、漂浪の身を持ちながら、雪に鎖され、降り積る門を叩いて救ひをねだるその弱虫は何虫ぞ。蚤より弱い大島別に、助けて呉れと吐す奴、蚤の糞から湧き出す糞より弱い弱虫の、身の分際も弁へず、何の詮方涙の果は、乞食となつた今のざま、この門開くること罷りならぬ』
と門内より呶鳴りつけたり。
 この声は寝殿に眠れる玉純彦、八島姫の耳に雷の如く轟いた。二神司は夢を破られて、むつくとばかり起上り、
『熊若、々々』
と呼ばはれば、門番は、
『ハイ』
と答へて寝殿指して一目散に駈入りぬ。神澄彦は雪の門前に立ちながら、大音声を張り上げて、
『常世の国に現はれし  八島の姫の身の果は
 流れながれてエデン河  流れの果は道彦の
 国の命に助けられ  恵みも深き顕恩の
 郷に隠れて世を送る  雪より白き玉純彦の
 従者の神に救はれて  今は全く妻となり
 南高山に立帰り  大島別の禿八王
 八王の位を奪りはがれ  今は僅に大島別
 世の諸神人は理知らず  大神様と敬へど
 誠の神に非ずして  顔色黒き渋紙か
 荒野に猛る狼か  門番までが嗅ぎつける
 鼻紙渋紙奴神  神々吐かすは狼か
 もしも違うたら貧乏神  弱みにつけこむ風の神
 それに引換へ吾々は  天地に耻ぢぬ神の裔
 神澄彦の神なるぞ  障子一枚ままならぬ
 破れた神の分際で  馬鹿にするにも程がある
 玉純彦や八島姫  常世の会議の泥田圃
 よくだまされた耻を知れ  さは云ふものの吾々も
 同じ泥田の奴狐に  だまされ切つた仲間ぞよ
 玉純彦は何処に居る  八島の狐は未だ来ぬか
 こんこんこんと寒狐  怪々々と寒狐
 狐の嫁入り尾も白く  頭も白い古狐』
と口から出任せに歌つてゐる。
 玉純彦、八島姫は耳を澄まし、一言々々胸を躍らせ、顔を顰め首を傾げて、この声に聴き入りぬ。玉純彦は門番に厳命し直に表門を開かしめ、歌へる神人を導きてわが寝殿に伴はしめた。
 神澄彦神は二神司を見るなり、
『ヤア久し振りです』
と無雑作に言葉をかけた。
 二神司は驚いて、つくづく顔を見詰めた。神澄彦は、忽ち天道別命より分与されたる黒の被面布を無雑作に剥ぎ取り「これ見よ」と云はぬばかりに、黒い顔を二神司の前に差し出した。二神司は、
『ヤア、貴下は青雲山の八王神澄彦ならずや。夜中といひ、思はぬ御来訪といひ、失礼いたしました』
と恟々として、二人は手を座に突き詫び入る。神澄彦は春の雪の如く、忽ち打解けて天教山の神示を天下に宣伝すべく、青雲山を後にして霜雪を凌ぎ、艱難と戦ひ諸神人を救済せむため、山野河海を跋渉遍歴する旨を答へた。
 二神司は大に驚き、奥殿に神澄彦を導き鄭重に歓待し乍ら、天教山の神示を畏敬の態度を以て一言も洩らさじと聴問し、且つ其の勇気を激賞した。神澄彦は諄々として、世の終りに近づける事を説き諭し且つ改悛を迫つた。時しも奥殿に当つて騒々しき声が聞えた。さうして母の声として、
『玉純彦、八島姫』
と呼ばはつてゐる。
 玉純彦は、
『暫く失礼致します』
と云つて、八島姫を側に侍せしめ置き、急いで奥殿に入りぬ。
 見れば大島別は、年古く憑依せし荒河の宮の邪神の神澄彦の宣伝歌に怖れて脱出したその刹那、老衰の大島別は、身体氷の如くなつて帰幽した。これより玉純彦、八島姫は、神澄彦の誠心に感じ、宣伝使となつて、南高山の城内は云ふに及ばず、諸方を遍歴し、神の福音を伝ふる事となりける。
(大正一一・一・一三 旧大正一〇・一二・一六 外山豊二録)
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