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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第2篇 常世の波よみ(新仮名遣い)とこよのなみ
文献名3第8章 春の海面〔258〕よみ(新仮名遣い)はるのかいめん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-04-11 16:09:37
あらすじ
船の安着に、宣伝使は白扇を広げて祝の宣伝歌を歌った。春日姫はその歌に耳を傾けて聞き入っていた。

宣伝使は弘子彦神であった。そして、港に春日姫の姿を認めると、姫に歌いかけた。春日姫もまた、弘子彦に鬼城山での出来事を歌に歌い返した。

弘子彦が岸に着くと、二人は傍らの森林に入って人目を避けた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月17日(旧12月20日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版51頁 八幡書店版第1輯 649頁 修補版 校定版51頁 普及版22頁 初版 ページ備考
OBC rm0608
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本文の文字数1548
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本文  船はやうやく岸に着きぬ。舟守は静かに白帆を巻き上ぐる。船の舳に白扇を拡げて無事の着陸を祝しながら謡ひゐる宣伝使の歌に、春日姫は耳を傾け、床しげに聴き入りぬ。
『海洋万里の波の上  天津御空も海原も
 なべて静かな今日の旅  科戸の風に真帆方帆
 神の恵みをはらみつつ  彼岸に着きし悦びは
 神の教を宣り伝ふ  旅の心も弘子彦の
 清きは神の心かな  広きは神の恵みかな
 仰げば高し久方の  天津御空に照る月の
 隈なき光身に浴びつ  渡る浮世は船の上
 操る舵の波の間に  浮きつ沈みつ常闇の
 憂ひに悩む神人を  救はむための鹿島立ち
 かすかな空に照る朝日  世の荒波も照妙の
 衣を捨てて蓑笠の  心も軽き旅の空
 浪立ち騒ぐ荒海も  本津御神の御恵みに
 安けく凪ぎし今朝の春  雪遠山に残れども
 海辺は春の気配して  梅咲き匂ひ鶯の
 谷の戸開けて出潮の  潮踏み砕く旅衣
 空に輝く春日姫  かすかに夫と分らねど
 埠頭に立てる姫人は  神の誠の道貫彦の
 八王神の御娘  稜威も高き鷹住別の
 君の妻神にや坐さざるか  浪立ち騒ぐ村千鳥
 浪も和とりのしとやかに  出でます姿ぞ雄々しけれ
 われは此の世を救ふてふ  神の教を世の中に
 弘子彦の長の旅  空行く鳥も憚りし
 貴の都の宣伝使  神国別の司ぞや
 名乗らせ給へさやさやに  月の御影の隈もなく
 心の雲を吹き払ひ  払ひ清めむ神の国
 雲路別てふ宣伝使  弘子彦の旅姿
 眼をかけ給へ春日姫』
と、謡ひ終るや、春日姫は、岸辺に立つて白扇を開きながら、優しき花の唇を静かに開き、歌もてこれに答ふ。その歌、
『神代の昔高天原の  神の祖と生れませる
 国治立の大神の  隠れましたる其の日より
 吹き来る風は腥く  荒振る神の音なひは
 絶間もあはれ諸神の  涙は雨と降り頻り
 河海溢れ山崩れ  百の樹草の色も褪せ
 常世の闇の現世を  照さむためとモスコーの
 道貫彦の司の子と  生れ出でたる手弱女の
 女の身をも打忘れ  世界を思ふ一筋の
 誠の綱に繋がれて  心の手綱ゆるみなく
 曳かれて進む馬の背の  危き山路を踏みさくみ
 荒波吼る海原の  潮を浴みつつ降り積る
 雪より白き顔容も  大根のごとき白腕も
 若やぐ胸を素抱きて  真玉手、玉出相抱き
 休らふ間なく生別れ  神の稜威も鷹住別の
 教へ司の宣伝使  嬉し悲しの袖絞り
 右と左に別れ路の  潮の八百路の八塩路や
 浪路を渡り常世国  隈なくひびく宣伝歌
 三千世界の梅の花  一度に開く常磐樹の
 松の操の色深く  降り積む深雪の友白髪
 誓ふひまさへ嵐吹く  山路や野辺に漂浪の
 夫の苦しみ思ひ遣り  住み心地よきモスコーの
 都を捨ててかすかなる  風にも心を痛めつつ
 八千八声の杜鵑  呼べど叫べど現世の
 曇り果てたる人心  聞く人さへも夏の夜の
 月を力に鬼城山  蚊取の別の曲人に
 誘拐されて奥山の  曲の砦に捕はれの
 三年の憂を忍びつつ  悲しき月日を送る間に
 深山の奥の美山彦  彼らが運命月照彦の
 天使の司に救はれて  心に懸る村雲も
 吹き払ひたるナイヤガラ  滝津涙と諸共に
 別れてここに紀井の海  孱弱き女の一人旅
 虎狼の囁きに  心淋しきこの砌
 アヽ懐かしき宣伝使  神国別の成れの果
 小さき胸も弘子彦の  神の司に相生の
 松に朝日の昇るごと  心の空も照り渡る
 長閑な春の春日姫  長閑な春の春日姫』
と歌を以て、その素性を明したりける。
 かくて舟守は、小舟を釣り下し、数多の旅客を陸に向つて運ぶ。弘子彦は真先に小舟に乗せられ岸に着き、二人は何事か目配せしつつ、傍の森林にその姿を没したりける。
(大正一一・一・一七 旧大正一〇・一二・二〇 外山豊二録)
(第三章~第八章 昭和一〇・一・三〇 於筑紫別院 王仁校正)
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