この大異変により、天柱は砕けて地軸は裂け、宇宙大地の位置は、やや西南に傾斜して天上の星の位置も変化してしまった。
大国治立尊は、この海月成す漂える国を修理固成しようとして、日月界の主宰神である伊邪那岐尊および伊邪那美尊に命じて、天の瓊矛を賜り、天の浮き橋に立たせて地上の海原を掻きなさしめた。
天の瓊矛とは、今の北斗星である。北極星は宇宙の中空の位置を占めて月の呼吸を助け、地上の水を盛んに吸引させた。北斗星の先端にある天教山は次第に水かさを減じた。
数年を経て洪水は減じ、地上は再びもとの陸地を現した。神典に「矛の先より滴る雫凝りて、一つの島を成す」というのは、北斗星の切っ先の真下の国土から、修理固成が行われた、という意味である。
水が引くと一切の草木は蘇生し、地上の万物は、野立彦命・野立姫命の犠牲的な仁慈の徳によって、残らず救われたのである。