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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第8篇 五伴緒神よみ(新仮名遣い)いつとものおのかみ
文献名3第49章 膝栗毛〔299〕よみ(新仮名遣い)ひざくりげ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
宣伝使たちは、元照別従者とともに、都大路を城に向かって進んでいった。都の人々は、この様子を見て口々に噂をしあっている。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月24日(旧12月27日) 口述場所 筆録者藤原勇造 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版297頁 八幡書店版第1輯 732頁 修補版 校定版298頁 普及版124頁 初版 ページ備考
OBC rm0649
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本文  広道別天使、出雲姫は、城内の役人に向つて、
『御親切は有難う存じます。然しながら、吾々はこの世を救ふ神の任しの宣伝使の身の上、艱難苦労を致すのが、吾々の本意でありますから、御用があれば、喜びて何処までも参りますが、乗物だけは御免を蒙りたい』
と断りける。役人は、
『御説は御尤もなれど、吾々は、城主の命令で、駕籠を持つて御迎ひに参つたもの、是非乗つて頂かぬと、帰つてから叱られますから、どうぞ御乗り下さい。お願ひです』
と頼み入る。広道別天使は、
『あなたの御言葉は御尤もなれど、この暑いのに百姓は熱湯のやうな田の中で、草除りをしてをることを思へば、勿体なくてそんな奢つたことはできませぬ。吾々は神様から頂いた立派な脚を持つて居りますから、この膝栗毛に鞭韃つて参ります。乗物は真平御免を蒙りたい』
と固く辞して応ぜざりければ、役人はやむを得ず、
『斯程に御頼み申すを、御聞きいれなくば是非はありませぬ。オイ駕籠舁ども、この駕籠を担いで直に帰つたがよからう。吾々はこの御方の御伴をして徒歩で帰るから、右守神にこの由御伝へ申せ』
 駕籠舁は、
『ハイ』
と答へて、すぐ駕籠を担いて一目散に駆け出したり。
 二人の宣伝使と、岩彦および大の男熊公は、四五の役人と共に、都大路をトボトボと進み行く。さうして広道別天使および出雲姫は、代る代る互ひに宣伝歌を謳ひつつ進み行く。
 大路の両側には彼方に三人、此方に五人十人と立つて、この一行の姿を見て口々に下馬評を試みてゐる。
甲『あれ見い、あの宣伝使とかいふ奴が、城主様の御通行を妨げよつたので、役人に引張られて行きよるのだ。アレアレ、仁王のやうな大男が二人も従いて行きアがらア。いづれ彼奴ア、御城内へ引張られて、ふりつけに逢ひよるのだ』
乙『何だい、芝居でも教へるのか、御城主様もよつぽど物好きだな。あンな奴に振り付けして貰つたつて、碌な芝居は打てはしないぞ』
丙『振りつけなんて、そんな気楽なことかい。磔のことだい』
乙『ウンさうか、男の癖して、裁縫でもするのかい。俺とこの尼つちよも、この間から縫ひ物稽古するといつてな、お玉さま処で張り付けをやつて貰つたのだ』
甲『そんな気楽なことかい、えらい目にあはされるのだ』
丙『えらい目にあはされるのも知らずに、気楽さうに歌でも謳ひやがつて、よつぽど暢気な奴だな』
乙『ナーニ、ありや自暴自棄だよ。引かれものの小歌てな、屠所の羊のやうに悄々とこの大路を通るのは、見つともないものだから、痩我慢を出しアがつてるのよ。あの声を聞いて見い、何だか見逃せ聞逃せなんて泣き言いつとるぢやないか』
 宣伝使の一行は、この下馬評を聞きながら、役人と共にドンドンと進みゆく。
 また此方の方には、一群の男女があつて、一行の姿を見て囁き合うてゐる。
甲『今日は目出度い結構な、御城主様の御誕生日で、仰山の供を伴れて、立派な御輿に乗つて、一ツ島とかへ御参拝になるので、町のものはみんな御祝ひのため、家々に旗を立て、御神酒を頂いて、踊り廻つてをるところへ、肩の凝るやうな歌を謳ひやがる宣伝使とかがやつて来て、御城主様の行列を邪魔したとかで、今引張られて行くのだ。彼奴ア別に酒に酔つたやうな顔もして居やアしないが、何であんな馬鹿な事をするのだらう、命知らずだなア』
乙『飛ンで火に入る夏の虫かい。然しこのごろ余り悪神が覇張るので、彼方にも此方にもドエラい騒動がオツ初まつて、人民は塗炭とか炭団とかの、苦しみとか黒玉とかを嘗めて、眼を白黒玉にして、彼方にも此方にも泣いたり怒つたり悔んだりするので、御天道様は御機嫌をそこね、毎日日日雨が降り続いて、とうとう此の世の御大将国の御柱の神さまとか、伊邪那美命様とかいふ御方が、この世に愛想を御尽かし遊ばして黄泉国とか、塵芥の国とか何でも汚い国へ、御越し遊ばしたといふことだ。それに今日は御城主様の御誕生日で、たまたまの結構なお日和だ。御城主さまの御威徳は、天道様でも御感心遊ばして、こんな世界晴の結構なお日和さまだ。それに陰気な歌を謳ひよつて邪魔するものだから、罰は覿面、己の刀で己が首、馬鹿な奴もありや有るものだな』
と口々に罵り居る。一行は委細構はずドンドンと進み、羅馬城内に姿を隠しける。
(大正一一・一・二四 旧大正一〇・一二・二七 藤原勇造録)
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