中国一の大高山である大台ケ原の中央に、雲突くばかりの大岩窟があった。日の出神は踏み分け踏み分け、この岩窟の前にやってきた。
折から、天地も崩れるばかりの大音響ものすごく、八岐の大蛇を先頭にして大蛇の群れが渓谷を這い、岩窟を指して進んでくる。凄まじい光景の中、日の出神は黙然として瞑目静座不動の姿勢を保っている。
忽然として白髪異様の妖神が現れ、この山は盤古神王・塩長彦の娘・塩治姫が鎮まる霊山であれば、即刻に立ち去るように日の出神に警告した。
日の出神はむっくと立ち上がり、盤古神王は地教山に隠れており、エルサレムには国治立命の従者・紅葉別が盤古神王と名乗って天下の形成を観望している、と明かした。そしてその事実を知らない妖神は、偽盤古神王・ウラル彦の邪神一派ではないかと詰め寄った。
妖神は日の出神に喝破されて、自分は大事忍男であると正体を明かした。そして大蛇悪鬼を呼び寄せ、日の出神に降伏を迫った。
日の出神は刀の柄に手をかけて、あくまで徹底抗戦の意を表した。すると大事忍男はその勢いにおされ、岩窟に逃げ入ってしまった。悪鬼邪神の姿は煙となって消えうせた。