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文献名1霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
文献名2第4篇 鬼門より竜宮へよみ(新仮名遣い)きもんよりりゅうぐうへ
文献名3第22章 竜宮の宝〔322〕よみ(新仮名遣い)りゅうぐうのたから
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-06 18:04:36
あらすじ
日の出神は、飯依彦に竜宮島の国魂・真澄姫の鎮祭を命じた。そして面那芸、天久比奢母智、国久比奢母智を伴い、西南指して船出していった。

飯依彦は埠頭に立って、白扇を開いて船を見送る歌を歌った。飯依彦はかつて田依彦と呼ばれていたときとは違い、真澄姫神の神徳に感じて身魂は向上し、優長な歌で日の出神一行を送った。

久々司はまた見送りの歌を歌い、久木司は面白く踊り狂って一行を送った。

沖へ出ると、船頭はこのあたりは竜宮の大海原で、宝が海の底に眠っている、と歌を歌った。

日の出神が問いただすと、船から海底の宝が見えるのだが、恐ろしい竜神が宝を守っているのだという。このあたりの魚介類は金や銀の色をしているが、一匹でも取ると竜神の怒りを買って、海が荒れる。また、歌なら歌ってもよいが、大きな声で話をしたりすると、やはり竜神の怒りに触れる、とのことであった。

それを聞いた日の出神は竜神に向かって名乗ると、宝を見せてくれないか、と頼みかけた。すると海面には数限りない宝珠・宝玉が浮かび出た。

日の出神が「もうよい」と言うと宝はまたしても海底に沈んでいった。船中の人々は手を打ってその美観を褒め称えた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月31日(旧01月04日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月31日 愛善世界社版135頁 八幡書店版第2輯 84頁 修補版 校定版141頁 普及版58頁 初版 ページ備考
OBC rm0722
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本文  日の出神は飯依彦をして、竜宮島の国魂、真澄姫の御魂を宮柱太敷立て、鎮め祭らしめ、ここに祝姫、面那芸、天久比奢母智、国久比奢母智を伴ひ、順風に帆を揚げ西南を指して進み行く勇ましさ。飯依彦を始め久久司、久木司は埠頭に立つて、この船を名残惜し気に見送つた。飯依彦は白扇をひらいて歌ひながら此の一行を見送りぬ。
『高天原に宮柱  千木高知りて永久に
 鎮まり居ます伊弉諾の  神の命や木花姫の
 貴の命の御教を  造り固めて黄金の
 山の麓に現れませる  三五教の大神の
 教を四方に敷島の  心も清き宣伝使
 世は常暗となるとても  御稜威輝く大空の
 日の出神や祝姫  外三柱の神人が
 常世の国へ鹿島立  見送りまつる我心
 風も凪げ凪げまた雨も  降らずに波も平けく
 いと安らけく出でませよ  神徳の波に照らされて
 心の暗も晴れ渡り  名さへ目出度き飯依彦の
 命と貴き名を負ひて  依さし玉ひし竜宮の
 常磐堅磐の島守は  心も真澄の姫神の
 宮に仕へて三五の  清き教を遠近に
 心を尽し身を尽し  仕へまつらせ日の出神
 名残は尽きぬ波の上  いと安らけく出でませよ
 うら安らけく渡りませ』
と挨拶にかへて歌ふ。今まで田依彦と云はれし時にはその身魂も下劣にして、一つの歌を歌ふにも野趣を帯び居たるが、ここに飯依彦と云ふ神名をたまひ、この島の守神たる御魂の真澄姫神の神徳に感じて、かくも優長なる歌を歌ふことを得たるは身魂の向上したる証拠なるべし。
 久久司は又もや歌を歌ふ。
『時は待たねばならぬもの  時が来た来た時彦の
 好な酒まで止める時  時のお蔭で時彦も
 天から下つた生神の  お目に留まつて久久司
 飯依彦に従うて  真澄の姫によく仕へ
 きつとこの島守ります  後に心は沖の船
 馳せ行く帆柱打ち眺め  隠るるまでも拝みます
 どうぞ御無事でお達者で  この海御渡り遊ばせよ
 また逢ふ時もありませう  逢うたその時や百年目
 二人の仲は芳彦の  離れぬ私は釘鎹
 必ず案じて下さるな  尊き日の出神様よ
 その他の尊い宣伝使  これでお別れ致します』
と扇をひらいて歌ひ、舞ひ、この船を見送りぬ。久木司は、
『私は歌は出来ませぬ、踊つてお別れいたします』
と口の奥にて何か小声に囁きながら、大地を踏み轟かせ、汗をしぼつて手振足振面白く踊り狂ひぬ。船中の人々も見送る数多の神人も一度にどつと哄笑したり。船は容赦なく纜を解いて櫓の音ぎいぎいと響かせながら、追々岸を遠ざかり行く。船頭は舳に立ちて唄ふ。
『ここは竜宮の大海原よ、可惜宝は海の底』
と海上の風に慣れたる声を張り上げて繰り返し繰り返し唄ふ。日の出神は、
『オイ船頭、今お前の唄つた歌は、あたら宝は海の底といつたなあ、それや又どういふ訳か聞かして呉れないか』
『ハイ左様でございます。この頃のやうな春の海では判りませぬが、やがて秋が来ると海の底がハツキリと見えます。それはそれは綺麗な金や銀が海の底一面に山のやうになつて居ます。恰度この下辺りは最も多い処です』
『お前たちはその綺麗な宝をどうして採らぬのか』
『エイ滅相もない。この海の底には結構な宝も沢山ありますが、恐いものも沢山ゐます。太い太い竜神さまが、金や銀の鱗をぴかぴかさして誰れも採らないやうに守つてゐらつしやる。この海の底に居るものは、鯛でも、蝦でも、蛸でも皆金や銀の色をしてゐます。蝦一匹でも釣つたが最後、竜宮様が怒つてそれはそれは豪いこと海が荒れます。それで誰も雑魚一匹この辺では捕りませぬ。大きな声で物いつても此処では竜宮様に怒られます。竜宮さまの好きなのは只歌ばかりです。歌ならどんな大きな声で唄つても構やせぬが、妙な話をしたり、欲な話でもしやうものなら、それはそれは恐ろしい目に遭はされます』
『さうかい。竜神といふ奴よほど歌の好な奴と見えるな』
『もしもしそンな失礼な事をおつしやつたら竜神さまに怒られますよ。竜神様はよほど暢気な御神ぢやと云ひ直して下さいませ』
と云ひながら顔の色を変へて、ぶるぶる慄ひゐる。
『何心配するにや及ばぬ。俺がこれから竜神に一つ談判して、その宝を見せて貰はう。モシ竜神殿、乙姫の眷属殿、我は日の出神ぢや、宝を一遍見せて呉れよ』
と云ひも終らず、たちまち海面は四方八方にまン円き渦を巻ききたりぬ。船頭は驚いてますます慄ひ上りゐる。ブクツと音がすると共に大きな金塊が波の上に浮き出て、次で右にも左にも、前にも後にも数限りのなき金銀、真珠、瑪瑙、瑠璃、硨磲などの立派な宝玉は、水面に浮き上り、実に何とも知れぬ美観なりける。日の出神は、
『もうよろしい、乙姫殿に宜敷云うて下さい』
と言葉終ると共に浮き出たる諸々の宝は又もやぶくぶくと音をさせて海底に残らず潜みける。船客一同は手を拍つてその美観を褒めたり。船は悠々として西南に向つて進み行く。
(大正一一・一・三一 旧一・四 加藤明子録)
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