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文献名1霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
文献名2第1篇 智利の都よみ(新仮名遣い)てるのみやこ
文献名3第5章 三人世の元〔355〕よみ(新仮名遣い)さんにんよのもと
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
日の出神は、面那芸の司を救うために急遽竜宮に渡ることとし、智利の都への出張を見合わせる、と清彦に伝えた。そして、自分の代わりに智利の都へ入り、三五教を宣伝するように、と言い含めた。

高砂洲には竜世姫神、月照彦神が守護しているので、勇んで行くように、と述べた。そして猿世彦、駒山彦も改心して神の教えに従え、と諭すと、海中に身を躍らせて飛び込んだ。

船中の人々は、すわ身投げ、と驚いたが、よくよく見れば日の出神は巨大な亀の背に乗って、悠々と彼方を指して行ってしまった。

清彦は、自分が日の出神の代理に指名されたことを、猿世彦・駒山彦に自慢している。三人はおかしな問答を交わしているうちに、船は智利の国の港に着いた。

三人は一目散に船を飛び出して、どんどんと奥深くに進んで行く。

清彦は、ここで三人分かれてそれぞれ宣伝しよう、と提案する。猿世彦は清彦を頼って、泣き言を言う。清彦は闇にまぎれて二人を置き去りにしてどこかへ行ってしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月06日(旧01月10日) 口述場所 筆録者河津雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年6月15日 愛善世界社版33頁 八幡書店版第2輯 163頁 修補版 校定版35頁 普及版15頁 初版 ページ備考
OBC rm0805
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本文  日の出神はこの雑談を聴き、黙然として、稍しばし思ひに沈みけるが、忽ち清彦に向ひ、言葉厳かに、
『清彦、吾はこれより智利の都に出張することを見合せ、面那芸の司を救はむため一先づ竜宮を探険せむと思ふ。吾れは汝の身辺を守護するから、心配なく智利の都に致つて三五教を宣伝せよ。高砂の島には竜世姫神、月照彦神守護し給へば勇むで行け。また猿世彦、駒山彦も、今迄の心を改め神の教に随へよ。船の諸人よ。吾れはこれよりお別れ申さむ』
と云ふより早く身を躍らして、海中へ飛び込み玉へば、清彦を始め諸人は、周章狼狽、
『あゝ身投げだ身投げだ』
と口々に叫ぶ。清彦は舷頭に立ち、声を限りに、
『日の出神様 日の出神様』
と号泣したりしが、遥の海面に忽然として人影現はれたり。よくよく見れば日の出神は、巨大なる亀の背に乗り、悠々として、彼方を指して進み行く。清彦は、猿世彦、駒山彦に向ひ、
『あの方は日の出神だぞ。今のお詞を聞いたか。俺はこれから竜宮へ往つて来るからお前たちは心配するな、清彦守つてやらうと仰しやつたであらうがナ。日の出神の御魂の憑依つた清彦は今迄とは違ふぞ。これから俺を日の出神と崇めまつれよ。ドンナ御神徳でもお目にかけてやる』
猿世彦『フム、目から火の出の神の、臀から屁の出の神奴が、人を盲目にしよつて、尻が呆れるわい』
駒山彦『尻から屁の出の、何んにもよう宣伝使様、宣伝歌とやらを聴かして貰はうかい』
清彦『日の出神は、亀に乗つて竜宮へ往かれた。そこであの広い高砂の都を、俺が拓くのだ。貴様もこれから高砂の島へ行くのなら、俺の許しがなくては上陸する事はまかりならぬぞ』
駒山彦『俄に、鉛の天神様見たいに、燥ぎよつて、ちつと海の水でもぶつかけて湿してやらうか』
猿世彦『コラコラ ソンナ暴言を吐くな、結構な宣伝使様だ。然し俺らも三五教の、一つ宣伝使に化けて、高砂の島を宣伝したらどうだらう』
駒山彦『面白からう、オイ日の出神さま、ドツコイドツコイ。モシモシ日の出宣伝使様、わたしを貴所の弟子にして下されいな』
清彦『改心いたせば許してやらう』
猿世彦『ヘン、偉さうに仰せられますワイ。改心が聞いて呆れるワ』
 清彦は得意然として宣伝歌を歌ひ出したり。
『神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 この世を造りし神直日  御魂も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直せ聞き直せ
 身の過ちは宣り直せ』
駒山彦『結構な歌だ喃、一つやつて見やうかい、……亀が表に現はれて、日の出神を乗せて行く……』
猿世彦『オイ違ふぞ……亀が表に現はれて、日の出神を乗せて行く、……ソンナ馬鹿な事があるかい、神が表に現はれてと言ふのだよ』
駒山彦『嬶が表に現はれて、猿世を棄てて鹿に従く。ただ何事も人の世は、嬶のすべたに身を任せ、船から亀に乗り直せ』
猿世彦『馬鹿ツ、ソンナ事で宣伝使になれるかい。貴様の耳は木耳か、節穴かイ』
駒山彦『猿世の泣き声きくらげの、嬶左衛門鹿が奪る、嬶左衛門鹿が奪る、鹿がお亀と乗りかへて……』
猿世彦『またソンナ事を言うと風だぞ、浪が立つぞ』
駒山彦『大丈夫だ。日の出神さまがいらつしやるもの』
猿世彦『コンナ日の出神が何になるかい、俄日の出神だ。まあまあ前のが日の出神なら、こいつは、ドツコイこの御方は日暮神位なものだよ。そして貴様は夜半の神だよ』
と無駄口を叩いてゐる。船は漸くにして智利の国の港に着きぬ。三人は一目散に船を飛び出し、どんどんと奥深く進みゆく。
清彦『貴様ら二人は日の出神の御伴は叶はぬぞ。貴様みたやうな、瓢箪や、徳利面した奴を美人の叢淵地たる高砂島を伴れて歩くと、俺までが馬鹿に見えて仕方がないから、ここで三人は別れて、思ひ思ひに宣伝に行かうかい』
猿世彦『オイ清彦、そりやあんまりじやないか。今まで俺の居つた鬼城山に世話になつて居つて、ちつたあ恩も知つとらう。なぜ伴れて行かぬか、幸ひ高砂の人間は吾々の素性はちつとも知らないから、清彦は天下に声望高き日の出神さまとなり、この方さまは荒のカミとなり、駒山彦は雨のカミとなつて、一つ高砂島を日和にしたり、大風にしたり雨にしたりして、神力を現はし、肝玉を潰さしてやつたら、感心するかも知れぬよ。さうだ三人寄れば文殊の智慧、我々三人は三人世の元だ。結構々々と言はれて、一つ無鳥郷の蝙蝠でも気取つたら何うだらうナア』
清彦『蝙蝠は御免だ、あいつは日の暮ばかり出る奴だ。俺は日の暮のカミぢやない。日の出神じやからなあ、まあ山奥にでも這入つて、今晩はゆつくり相談でもしようかい』
と言ひながら樹木鬱蒼たる森林を目がけて、清彦は足を速めける。二人はぶつぶつ小言を言ひながら、清彦の後を追ふ。日は西山に没し、鼻を抓まれても判らぬやうな闇の帳に鎖されたるに、清彦は闇に紛れて、二人を置去りにし、何処ともなく姿を隠したりけり。
(大正一一・二・六 旧一・一〇 河津雄録)
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