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文献名1霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
文献名2第2篇 四十八文字よみ(新仮名遣い)しじゅうはちもじ
文献名3第10章 仮名手本〔360〕よみ(新仮名遣い)かなてほん
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
鏡の池の声はようやく鎮まり、狭依彦に対して、知らないことは知らないとへりくだって宣伝をするように、とたしなめた。そして、いろは歌で教えを説き始めた。

まずは、へりくだって理屈に走らず、生まれ赤子の心で祈れ、と狭依彦を諭した。狭依彦は神の説教に泣き言を言うが、鏡の池の声はさらに説教を続ける。

そして狭依彦に心底の改心を促し、自ら月照彦神であると名乗った。またこの高砂洲は金勝要大神の分霊・竜世姫神が守護する土地であると告げ、この国の司となって世界のために尽くせ、分からないことがあればまた尋ねに来い、と宣言した。

狭依彦ら一同は腰が立つようになり、喜び勇んで神言を鏡の池に奏上した。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月06日(旧01月10日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年6月15日 愛善世界社版62頁 八幡書店版第2輯 173頁 修補版 校定版64頁 普及版28頁 初版 ページ備考
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本文  鏡の池の唸り声は漸く静まりぬ。此度は荘重なる重みのある声にて、池の底より又もや大なる言葉、次ぎ次ぎに聞え来たる。
『猿の人真似を致す俄宣伝使の猿世彦、神の光も最と清く、智利の国へと渡り来て性に合はぬ三五教の宣伝使とは、よくもよくも吐いたなあ、汝の祈りは、実に立派なものだぞ。これからは大法螺を吹くなよ、知らぬことを知つた顔を致すと、今のやうな苦しき目に遇ふて、耻を曝さねばならぬぞ、何も理屈は云ふ事は要らぬ。ただ私は阿呆で御座います、神様にお祈りをする事より外には、いろはのいの字も存じませぬと謙遜つて宣伝を致すがよいぞよ。生兵法は大怪我の基だ。知らぬと云うても汝はあまり非道いぞ、ちつとは後学のために此方の申す事を聞いて置け。いろは四十八文字で開く神の道ぢや』
猿世彦『もしもし、池の底の神様、私は腰が立ちませぬ。腰を立たして下さいな』
 池の底から、
『いヽヽ祈らぬか、祈らぬか、祈りは命の基ぢや。万劫末代生通しの命が欲しくば、いつもかも祈れ祈れ。
ろヽヽ碌でもない間抜けた理屈を捏ねるより、身の行を慎みて人の鏡となれ。
はヽヽ早い改心ほど結構は無いぞよ。裸で生れた人間は、生れ赤子の心になれよ。
にヽヽ俄の信心は間に合ぬ。信心は常から致せよと教へてやれ。
ほヽヽ仏作つて眼の入らぬ汝の宣伝、発根から改心致して、本当の神心になれよ。
へヽヽ下手な長談義は大禁物だ。屁理屈を云ふな、途中で屁太張るな、屁古垂れな。
とヽヽトコトンまでも誠を貫き通せ。神の守りは遠い近いの隔てはないぞ、徳をもつて人を治めよ。
ちヽヽ智慧、学を頼りに致すな。力となるは神と信仰の力ばかりだ。近欲に迷ふな、畜生の肉を喰ふな。
りヽヽ理屈に走るな、利欲に迷ふな。吾身の立身出世ばかりに魂を抜かれて、誠の道を踏み外すな。
ぬヽヽ盗むな、ぬかるな、抜身の中に立つて居るやうな精神で神の道を歩めよ、抜駆けの功名を思ふな。
るヽヽ留守の家にも神は居るぞ。留守と思うて悪い心を出すな。
をヽヽ恐ろしいものは汝の心だ。心の持ちやう一つで鬼も大蛇も狼も出て来るぞ。臆病になるな、お互に気をつけて此世を渡れ。
わヽヽ吾身を後にして人のことを先にせよ。悪い事は塵程もしてはならぬぞ。吾儘を止めよ、私をすな、悪い事をして笑はれるな』
猿世彦『わヽヽ分りました。分りました。貴神のお言葉を聞くと何ともなしに、
かヽヽ悲しうなりました。堪忍して下さいませ、叶はぬ叶はぬ。
よヽヽよく分りました。もうよしにして下さい、欲な事は致しませぬ。世の中の事ならドンナ事でも致します。
たヽヽ助けて下さい、頼みます。誰人だつてコンナに恐い目に遇つたら、起つても居ても坐た怺つたものぢやありませぬ。
れヽヽ連続して水の中から屁をこいたやうな六ケ敷い説教を聞かされても、
そヽヽそれは汲みとれませぬ。そつと小さい声で耳の傍で聞かして下さいな、ソンナ破鐘のやうな声を出したり、竹筒を吹いたやうな声を出して貰つては、一寸も合点が行きませぬ。
つヽヽつまらぬ、つまらぬ、月照彦の神様か何か知らぬが、もうそれだけ仰言つたら、仰有る事はつきてる筈だのに。
ねヽヽ根つから、葉つから合点が行かぬ。お姿を現はして下さいな』
 池の底から、
『なヽヽ何を云ふか、泣き事言ふな、汝の如き弱き宣伝使は、もちつと苦労を致さねば、
らヽヽ楽にお道は開けぬぞ。
むヽヽ無理と思ふか、無理な事は神は申さぬぞ。
うヽヽ迂濶々々聞くな、美はしき神の心になつて、神の教を開く宣伝使になれ』
猿世彦『ゐヽヽ何時までもお説教は結構ですが、もう好い加減に止めて下さつたらどうですか、余りつらくて骨にびしびしこたへ、此の
のヽヽ喉から血を吐くやうな思が致します』
 池の底より、
『退引ならぬ釘鎹、
おヽヽ往生いたせ。よい加減に、
くヽヽ苦しい後には楽しい事があるぞよ。
やヽヽ矢釜敷う云うて聞かすのも、汝を可愛いと思ふからだ。
まヽヽ誠の神の言葉をよく聞け、神の言葉に二言は無いぞ。いま聞き外したら万古末代聞く事は出来ぬぞ。人民の暗い心で誠の神の経綸は、
けヽヽ見当は取れぬぞ、毛筋も違はぬ神の道、汚してはならぬぞ。
ふヽヽ深く考へ、魂を研いて御用に立てよ』
猿世彦『こヽヽこれで、もう結構で御座います。今日はまあ何と云ふ有難い、苦しい、結構なやうで結構に無いやうで、嬉しいやうで、嬉しう無いやうで』
 池の中より、
『えヽヽまだ分らぬか、
てヽヽ天地の神の教を伝ふる宣伝使では無いか、
あゝヽ悪を働いて来た猿世彦、これから心を入れ替へて、
さヽヽさつぱり身魂の洗濯いたしてさらつの生れ赤子になり変り、
きヽヽ清き正しき直き誠の心をもつて世人を助け導け、
ゆヽヽ夢々神の申す事を忘れなよ。いつも心を引き締て気は張り弓、
めヽヽ罪障の深い汝の身魂、苦労をさして、
みヽヽ見せしめを致して罪を取つてやらねば、
しヽヽ死んでも高天原へ行けぬぞよ。信心は夢の間も忘るなよ、知らぬ事は知らぬと明瞭云へ、尻の掃除も清らかにいたせ、
ゑヽヽ偉さうに云うでないぞ、この世の閻魔が現はれ高い鼻をへし折るぞ、
ひヽヽ昼も夜も神に祈れよ、
もヽヽもうこれでよいと神が申すまで身魂を磨け。神の目に止まつた上はドンナ神徳でも渡してやるぞ、
せヽヽ狭い心を持つな、広き、温かき神心になつて世人を導け、
すヽヽ澄み渡る大空の月照彦の神の御魂の申す事、無寐にも忘れな猿世彦、吾こそは元は竜宮城の天使長大八洲彦命なるぞ。汝も随分威張つたものだが、これからすつかり心を改めて此国の司となり、狭依彦司となつて世界のために尽せよ。この高砂島は金勝要大神の分霊竜世姫神の御守護なるぞ、此鏡の池は根底の国に通ふ裏門、分らぬ事があらばまた尋ねに来よ』
うヽヽと一声呻ると共に、その声はパツタリ止みけり。狭依彦および一同の腰は始めて立ちぬ。一同は喜び勇みて神言を鏡の池に向つて奏上したりける。
(大正一一・二・六 旧一・一〇 加藤明子録)
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