一行は照山峠を東に向かって下っていった。智利の国の里近くまで降りてきたところで、不思議にも一行の足は一歩も進むことができなくなってしまった。
かたわらの鬱蒼たる森林の中からは、淤縢山津見、駒山彦、照彦を呼ぶ破れ鐘のような声が響いてきた。三人はその声に、ひきつけられるようにして森の中へ入ってしまった。
後には、珍山彦と三姉妹が残された。珍山彦は、これから四人でハラの港からアタルの都に入り、常世の国へ渡って黄泉島の宣伝をするのだ、と伝えた。そして、宣伝使の実地教育を珍山彦自ら行うのだ、と諭した。
珍山彦は三姉妹に、九死に一生の困難を克服しなければ誠の道は開けない、その後は各自宣伝使となってばらばらになり、神業に奉仕するのだ、師匠兄弟を杖に付くようなことでは神界の奉仕はできない、と心構えを伝えた。
四人はハラの港に向かって進んで行く。
一方、淤縢山津見、駒山彦、照彦は怪しい声にひきつけられて谷川をさかのぼり、数里山奥に分け入っていた。高山と高山の深い谷間には月影もささず、夜はおいおいと更けていくばかりであった。
三人の身体はまたもや強直して動くことができなくなった。照彦は神懸りし、月照彦命である、と口を切った。そして淤縢山津見と駒山彦の心構えの甘さを厳しく問い詰め始めた。