一行はアタルの港で群集に向かって宣伝歌を歌い、宣伝を行った。不思議にも珍山彦の腰はまっすぐになり、若々しくうるわしく輝き始めた。
宣伝使一行は市中を抜けて、玉山のふもとで休息した。虎公、熊公の二人は一行の前に現れてひれ伏し、改心の色を表した。松代姫は虎公を許し、珍山彦は二人の改心を褒め称え、宣伝使として尽くすように、と諭した。
虎公は珍山彦について宣伝使として教えを受けたい、と願うが、珍山彦は、難しい教理を学ぶ必要はない、ただ心から誠を祈り悔改めることだ、神の道は入り易く歩み易いものだ、と諭した。
おとなしく柔らかく湯のような温情をもってすべての人々に臨むのが、宣伝使の第一の任務である。また、腹を立てるな、偽るな、飾るな、誠の心で日々自身の身魂を省みること、それが立派な神の道の宣伝使であり、難しい理屈を言うには及ばない、と諭した。
そして、虎公と熊公はカルとヒルの国境にそびえる高照山で禊をなし、その後にカルの国を宣伝せよ、と任命した。
珍山彦は三姉妹を伴って北へ北へと進んで行く。その後姿を虎公と熊公は伏し拝み、神恩に感謝してその場に泣き伏した。