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文献名1霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
文献名2第4篇 千山万水よみ(新仮名遣い)せんざんばんすい
文献名3第26章 巴の舞〔419〕よみ(新仮名遣い)ともえのまい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-06-23 23:13:50
あらすじ
西の岩窟の大蛇彦の説教は続き、三五教の教えを熊公、鹿公に授けた。熊公と鹿公は岩窟の前で、大蛇彦の神徳をたたえる歌を節面白く歌った。すると、この歌につられて岩窟の中から志芸山津見が現れ、三人は吾を忘れて踊り狂った。

三人は日夜滝に禊をなし、おのおの手分けして三五教の教えを伝えた。熊公は石柝の司、鹿公は根柝の司の活動をなし、黄泉比良坂の神業に参加して大功を立てることになる。

主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月16日(旧01月20日) 口述場所 筆録者土井靖都 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月5日 愛善世界社版202頁 八幡書店版第2輯 347頁 修補版 校定版209頁 普及版86頁 初版 ページ備考
OBC rm0926
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本文  折から高照山より吹き下す嵐の音も、岩戸の大音響も、次第々々に鎮まりて、後には千丈の琴滝の落つる音、淙々と聞ゆるのみ。巌窟の中より又もや竹筒を吹いた様な声がして、
『鹿公よ、この大蛇彦の申す事を確り聴けよ。俄の改心は間に合はぬ。盗人捕へて縄を綯ふやうな事ではまさかの時の間に合はぬぞ。この神の申すこととつくりと腹に容れて、誠の人間に生れ変り、神の教をよく聴いて、世の中の為に力をつくせ。悪の企みは仇花だ。何時までも色は保たぬ。花は栄えぬ、実は結ばぬぞ。短い此世に生れ来て、永い霊魂の命を失ふな。枝葉も茂る常磐木の、何時も青々松心、賢しき心を取直し、穏かな心になつて神に親しみ、人に交はれ。神の教に仇花はない。耳を傾けて心を落付け、聴けば聴くほど神徳がつく。世界の為に誠の為に、苦労を致すは結構だ。決して決して今までのやうな体主霊従の心を出すな。心の底から掃除して、神直日、大直日の神の恵に助けられ、栄え久しき松の世の鑑となれよ。死んでも生きても神の懐に抱かれた人間の身、只神に任せよ。誠心を籠めて祈れよ。素直に改心いたして涼やかな行ひを致せ。世間の人に、鬼よ悪魔よといはれたるその悪名を雪げよ、祓へよ。神の教の誠の風に、高照山の谷の底で、力一杯膏を抜かれ、腸を洗はれ、胆を練られて、始めてこの世の中の悪魔を滅ぼす強い人間となれ。天地の神の深き御心を悟り、遠き近きの隔てなく、暗き明きの分ちなく、世界一目に見渡す神の眼に止まる様の、清き正しき行ひをして呉れ。何事によらず、神の心を心として、世界の為に誠心をつくし、弱き者を助け、神の威勢を世に出して、この琴滝のやうに清き名を四方に轟かせ』
鹿公『いやもう、何から何まで抜目のない、御念の入つた有難き仰せ、骨身にこたへました。果しなき欲心に迷ひ、日々に心を曇らせ、不埒な不都合な事ばかり致して来ました。どうぞ神様の広き厚き御心に宣り直し聞き直して、吾々の深い罪をお宥し下さいませ。アヽもう是でお暇を頂戴いたします』
 巌窟の中より、
『マダマダ、マダマダ、帰つてはならぬ』
熊公『オイ、鹿公、もちつと辛抱せ』
鹿公『マアマアマア、未だまだ、アヽ未だまだと仰有るのだ。マアどうどうしたら可からう。イイ加減に幕を切り上げて下さつたら可かりさうなものだがなあ。神様の退引ならぬ言葉に、尾を巻き、舌を巻き、ヘコを巻いた熊公のやうな男が居るものだから、この鹿公までが巻添にあはされたのだ。サアこれから捻鉢巻でもして、世界のために尽さねばならぬワイ』
『鹿の巻添ではなうて、鹿の捩鉢巻に巻舌では余り尊くもなからうかい』
 巌窟の中より、
『ミヽヽ身の程を考へて、身分相応の行ひを致し、人に未熟といはれな。醜悪ないことをして見下げられな、蔑視られな。ムヽヽ六ケ敷い事をいふな。今までの様に世間の人に無理難題を吹きかけて、無闇に金を奪るな。悪の報いは恐ろしいぞ。罪障を積むな。盲目滅法に、前後構はずに、無駄の事をしてはならぬぞ。大和魂に立ち帰り何時も動かぬ松心で、雪より清く、花より麗しく、世の中の光となれ、塩となれ。乱暴狼藉致らざるなき、今までの汝の所業や利己主義を捨て、陋劣な手段を止めて吾身を省み、何時までも変らぬ美しい梅の花の様な心を以て神の道を能く守れ。麗しい三五の教を夢寐にも忘れず、日夜怠らず清き祈りを捧げよ。大蛇彦の神が気を付けて置くぞよ。オーオー』
と又もや巌窟の中より、大音響が聞え来る。
 熊公、鹿公は巌窟の前に立つて歌ふ。
『神の御稜威も高照の  山より落つる言霊の
 滝の響は淙々と  遠く近くに鳴り渡る
 堅磐常磐の巌窟に  神の使の大蛇彦
 木の花姫の分霊  此処に現はれましまして
 日に夜につきぬ御教を  天地四方の神人に
 具さに宣らせ給ひつつ  流れも清き言霊の
 滝に心を洗ひ去り  瑞の御霊と現れまして
 草の片葉にいたるまで  世は平けく安らけく
 言問ひやめて神の世を  堅磐常磐に治めむと
 心を千々に砕かせつ  滝津涙を注ぎまし
 吾らを救ひ給ふなり  嗚呼皇神よ皇神よ
 人は尊き神の御子  尊き神の生宮ぞ
 世は烏羽玉の暗くして  塵や芥に穢れたる
 霊魂をこれの琴滝に  禊ぎ祓ひてすくすくと
 直日の神の玉となり  暗き谷間を伊都能売の
 神の功や高照の  山より高く照らすべし
 東と西の巌窟に  現はれ給ふ皇神の
 心は清き琴滝の  みづの霊魂の姿かな
 あゝ願はくばこの水の  清きが如く世の人の
 霊魂を洗ひ清めませ  吾らは人の子神の御子
 神と人とは睦び合ひ  天と地とは秩序よく
 千代万代に変りなく  動かぬ御代や松茂る
 神世も清き高砂の  松の栄えの久しかれ
 松の栄えの久しかれ』
と節面白く調子を合せて歌ふ。この歌の面白さに、志芸山津見は釣り出されて、巌窟の中より、手をふり足を躍らせ、竹筒を吹きながら巌窟の前に現はれ来り、吾を忘れて三人三つ巴となりて踊りくるふ。
 ここに志芸山津見、熊公、鹿公の三人は琴滝の水に日夜禊を修し、各手分をなして、三五教の教を四方に伝ふることとなりぬ。熊公は石拆の神の活動をなし、鹿公は根拆の神の活動をなして、黄泉比良坂の神業に参加し大功を立てたるなり。
(大正一一・二・一六 旧一・二〇 土井靖都録)
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