国祖国治立命の時代は、黄金時代であった。しかし天足彦・胞場姫の体主霊従的邪念が凝って、悪鬼悪狐が地上に蔓延してしまった。そのために、多くの神人が利己主義に走り、大神の神政を破ったのであった。
遂には邪気が天変地妖を現出し、大洪水を招いた。世界は泥海と化してしまった。
このとき高皇産霊神、神皇産霊神、大国治立神は、顕国玉の神力を活用し、天の浮橋を現して、地上の神人たちを救いかつ戒めた。
また、諾冊二神を地の高天原である天教山に降して、天の沼矛で地を修理固成せしめた。国生み神生みを行い、再び地上に神政を敷こうとした。
しかし、幾多の年月を経てまたしても地上には邪神がはびこり、再び荒んだ世の中を現出してしまった。
常世彦・常世姫の系統は、ウラル彦・ウラル姫と現れて、盤古神王を偽称していた。大国彦・大国姫はロッキー山に伊弉冊命と日の出神を僭称した。
伊弉冊命は自ら邪神の根源地である黄泉の国へと降りて、牽制的な神業を行った。次いで、海中の竜宮城に現れて、一切の神策を施した。その後一切の幽政を国治立命、稚桜姫命に託すと、ロッキー山に行くと見せかけて実は天教山にいったん帰り、そして地教山に身を忍んで修理固成の神業に就かせられたのである。
神人らはこの神業を知らず、ロッキー山に伊弉冊命が行かれたと思い込んだ。大国彦・大国姫は、その情報を利用して偽伊弉冊命と現れた。そして黄泉島を占領しようと企んでいた。
ここに、伊弉諾命は黄泉比良坂の戦いを起こすこととなった。この戦いは、善悪正邪の勝敗の分かれる、世界の大峠である。
諾冊二神の修理固成以前と以後では、物語に登場する各地の位置は、大いに変わっていることを注意しなくてはならない。
また、過去の巻に出てきた神人が、大洪水後にも現れて、以前より若くなっていたりするのは、この物語が神人の霊を主とした霊界物語だからである。すべて神人は現幽を往来して、神業をなすものなのである。
物語では、時間空間を超越した霊界の現幽一貫的な活動を、物質化・具体化して述べたものなのである。
その他、種々今日の知識からは不可解なことがあるが、時間空間・現界幽界を脱出して、大宇宙の中心から神霊界の物語を口述したものである。
口述者は決して自己の憶測・推量によってなしたものではない。幽斎修行の際に見聞したままの物語なのである。