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文献名1霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
文献名2第3篇 邪神征服よみ(新仮名遣い)じゃしんせいふく
文献名3第37章 祝宴〔467〕よみ(新仮名遣い)しゅくえん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-08-01 20:06:26
あらすじ
祝宴の中、村人たちは、石凝姥神の宣伝歌で知った時公の失態をあげつらって時公を囲んでいる。時公はどこ吹く風で、またしても法螺話を始めた。村人たちはまともに取らずにはやしている。

鰤公は、時公から娘は食われたと聞いていたので、祝宴の中でも大泣きしている。村人の一人が鰤公に、娘は死んでおらず、祝宴に来て鰤公を探している、あれは時公がお前を脅かしただけだ、と伝えた。ここに鰤公は妻と娘と再会を果たし、嬉し涙を流している。

祝宴の最後に、梅ケ香姫が三五教の教えを誓いを宣伝歌に歌った。酋長の鉄彦は、後事を妻の鉄姫に託して、宣伝使の供としてアーメニヤに進んで行くこととなった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月27日(旧02月01日) 口述場所 筆録者河津雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年8月20日 愛善世界社版292頁 八幡書店版第2輯 496頁 修補版 校定版300頁 普及版132頁 初版 ページ備考
OBC rm1037
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本文  鉄彦夫婦は最愛の一人娘清姫の大難を免がれ、かつ国中の禍の種を除かれたるは、全く神の御恵みと、天津祝詞を奏上し、宣伝歌を奉唱し、祝ひの宴を開き、村中数百の老若男女は、上下の区別なく祝ひの酒に酔ひ潰れ、喜んで泣く者、笑ふ者、法螺を吹く者など、沢山現はれ来り、其中より四五の若者は門番の時公を取り巻き、
甲『オイ時公、貴様は随分えらい勢で帰つて来て、途法途轍もない法螺を吹き居つたが、宣伝使様の御歌を聴けば、何だ、貴様は腰を抜かして、吠面かわいたぢやないか。何でソンナ空威張をするのだ』
時公『吠面かわくつて当然だ。ところで吠えぬ犬はないと言ふぢやないか。法螺を吹くのも吠面かわくのも、時公にとつての愛嬌だよ』
『また洒落よるナ。貴様ア、昔は時野川と言つて小角力をとつたと言つただらう。サア、俺と一つ、此座敷で角力をとつて見ようかい』
『措け措け、危ないぞ。葱の様なヒヨロヒヨロ腰で、鉄のやうな時さまに当るのは、自滅を招くやうなものだ。それよりもアルタイ山に行つた時の実地談を聴かしてやらうかい』
乙『オイ、皆の者、此奴の言ふ事は、いつも法螺ばかりだ。眉毛に唾を付けて聴いてやれ』
『ヨー、俺に敬意を表してツハモノと言ふのか。イザこれより時公がアルタイ山の曲神退治の梗概を物語るから確かり聴け。抑々アルタイ山は深山幽谷、これに進み行く者は、虎狼か山犬か、但しは熊か時公さまか……』
甲『オイオイ、初めから吹くなよ。吾々も唐櫃を舁いで、現に登つた連中ぢやないか』
『ヤア、縮尻つた。これからが真実の物語だ。そもそも汝ら村の弱虫等に、砦の前で別れてより、暗さは暗し、雨は車軸と降つて来る、風は唸りを立てて岩石も飛び散るばかりの凄じさ。それを物とも致さず時公さまは、三五教の宣伝使石凝姥を従へて、梅ケ香姫を舁ぎつつ巌窟を指して、天地も呑まむず勢に、七八尺も一足に跨げながら、巌戸の前にと立現はれ、ウン、ウーンとばかりに唸つて見せた。流石に剛き蛇掴の野郎も、吾言霊に縮み上つて大なる火の玉と変じ、小さき火玉と諸共に、天に舞ひ昇り、西南の空を指して、アーメニヤに逃げ去つたり、と思つたのは彼が計略、忽ち時公さまの身体に神憑りいたし「ヤア、吾こそはアルタイ山の主神蛇掴であるぞ」と呶鳴り立てた。流石の宣伝使も慄ひ上つて、モシモシどうぞ生命ばかりはお助け下され、コヽこの通り腰の骨が宿替へ致しました、とほざきよるのだ。そこでこの時公さまに憑つて来た蛇掴奴が「ヤア、この時公は赦す積りで居れども、副守護神の蛇掴が赦さない。頭から塩をつけてムシヤムシヤとかぶつて喰つてやらうか」と仰有るのだ。梅ケ香姫は白い手を合して「モシモシ時公さま、どうぞ石凝姥の宣伝使を助けて下さい」と可愛い顔して頼むものだから、時公さまも、副守護神も、俄に憐れを催して「今晩は喰ひ殺す処なれど、汝の優しい顔に免じて赦してやらう」と仰有つた。さうすると宣伝使が平蜘蛛になつて、喜ぶの喜ばないのつて、譬へるに物なき次第なりけりだ』
丙『オツト、時公、待つた。そりやお人が違やせぬか』
『人の一人ぐらゐ違つたつて何だ。一寸身代りになつて言つとるのだ』
乙『ハハー、さうすると時公が石凝姥の宣伝使で、その宣伝使が時公としたら真実だな』
『そんな種明かしをすると、酒の座が醒める。マア黙つて聴かうよ。それからこの時公が手頃の岩を拾つて、フツと息を吹きかけ、固いかたい石の槌を造つて、鬼の化石の首を片つ端からカツンカツンとやつた。その腕力は炮烙でも砕ぐやうに、首は中空に舞ひ上つて、どれもこれもアーメニヤに向つて飛んで行つてしまつたよ。アハヽヽヽ』
甲『オイ鰤公、チツト勇まぬか。この目出度い酒に、何をベソベソと吠えてゐるのだ』
 鰤公は泣き声で、
『貴様達は嬉しからうが、俺は三年振りでヤツト故郷へ帰つたと思へば、俺の娘は今年の春、蛇掴の悪神に喰はれてしまつたと言ふ事だ。天にも地にも一人よりない娘の顔を見ようと思つて、今の今まで楽しんでゐたのが、噫夢となつたか。夢の浮世と云ひながら、さてもさても悲しい事だワイ。これが泣かずにゐられよか。アーン アーン アーン』
時公『ウアハヽヽヽヽヽ』
『ヤイヤイ、貴様は何が可笑しい。俺が大切な娘を喰はれて悲しんでゐるのに、笑ふと云ふ事があるものかい。ヤイ、アーン アーン アーン』
『ワハヽヽヽヽヽ』
 鰤公は四辺かまはず、
『ウオーン ウオーン ウオーン』
と狼泣きをする。
甲『オイオイ鰤公、泣くな。貴様とこの娘は、そら、そこに来て居るぢやないか。最前から貴様が帰つたと言ふ事を聞いて、探しまはして居るのだけれど、あまり色が黒くなつたものだから、分らぬので迷つてゐるのだ。時公の奴、貴様を威かしてやらうと思つて、アンナ法螺を吹きよつたのだよ』
鰤公『ウオーン ウオーン ウオーン、娘、娘、居るか居るか、女房も居るか』
 此声に女房も娘も走り来つて、鰤公に取り付き嬉し泣きに泣き立てる。
 清姫は立上り、声も涼しく歌ひ始めた。
『年てふ年は多けれど  月てふ月は多けれど
 日といふ日にちは多けれど  世界晴した今日の日は
 如何なる吉日の足日ぞや  曲津の神に呪はれて
 命も既になきところ  あな有難や三五の
 神の教の宣伝使  石凝姥の神司
 梅ケ香姫の御恵み  神の御稜威の輝きて
 吾身はここにアルタイの  山より高き父の恩
 母の恩にも弥勝る  神の恵の露に濡れ
 湿り果てたる吾袖の  涙も乾く今日の空
 噫有難やありがたや  吾が父母と諸共に
 今より心を改めて  天教山に現れませる
 日の出神や木の花の  厳の御魂の御教と
 黄金山に現れませる  埴安彦や埴安姫の
 神の命の御教を  麻柱ひまつり祝ぎまつり
 地教の山に現れましし  神伊邪那美の大神の
 鎮まり給ふ月夜見の  円き身魂を洗ひつつ
 この世の暗を照すべし  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  たとへ天地は覆るとも
 三五教を守ります  誠の神は世を救ふ
 救ひの舟に棹さして  浮世の浪を漕ぎ渡り
 大海原に棹さして  高天原に漕ぎ行かむ
 月の光も清姫の  清き心の真寸鏡
 隈なく光る今日の空  光り輝く今日の空
 あゝ諸人よ諸人よ  返すがへすも三五の
 教に魂を研けかし  神に身魂を任せかし
 祈れよ祈れよ真心を  神に捧げて祷れかし
 祈るは命の基なるぞ  祈るは命の基なるぞ』
と歌ひ終り、賑かに此宴会は閉された。茲に鉄彦は、二人の宣伝使と共に宣伝歌を歌ひながら後事を妻の鉄姫に託し、アルタイ山を右に見て、西へ西へとクス野ケ原の曠野を進み行く。
(大正一一・二・二七 旧二・一 河津雄録)
(全文 昭和一〇・三・三〇 王仁校正)
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