一行は冬の荒れ野原を進んで行く。クス野ケ原には巨大な長方形の岩があり、その下に巨大な穴があって、そこが大蛇の住処だという。
岩の近くまで来た一同は、神言を奏上し、宣伝歌を歌い始めた。宣伝歌を歌い終わると、大音響が響き、岩が唸り始めた。時公は岩に向かって、許してやるから気の済むまで騒げ、と言うと、大音響はぴたりと止まった。
このとき、岩の下の穴からは紫の煙が立ち上っていた。見れば、岩上には三人の美しい娘が扇を片手に舞を舞っている。それは月・雪・花の三姉妹の宣伝使であった。
月・雪・花の宣伝使は、宣伝の途中このクス野ケ原に大蛇のあることを聞き、大蛇を言向け和そうと宣伝歌を歌ったところ、大蛇は今後は地上には出ないと誓い、今その穴を封印したところである、と語った。
また三姉妹の宣伝使は、この原野に火を放って耕せば、非常に収穫があるでしょう、と語った。東彦はさっそく原野に火をかけた。
宣伝使一行は、鉄彦と時公に、この原野の開墾を命じた。後にここは肥沃な土地に五穀が実り、非常に栄え、クスの都と呼ばれるまでになった。
宣伝使一行は別れを告げ、西へ西へと進んでいった。