琵琶の湖には、かなり大きな松島、竹島、梅島という島があった。船は梅島に着いた。ここでまた嵐が起こり、船は島に三日三晩逗留することになった。船中の客はそのほとんどが、大工道具を持っている。
時公は船客にわけを聞くと、コーカス山の大気津姫が、ぜいたくをして、しきりに普請をしている。そのために各地から大工が駆り集められている、という。
また、大気津姫の部下たちは八王(ヤッコス)を名乗っているが、これは昔の八王ではなく、単に利己主義の財産持ちに過ぎない、という。
大工たちの話によれば、竹野姫という宣伝使が大気津姫に捕らえられ、岩屋に監禁されているという。また、竹野姫の姉妹の宣伝使を捕らえようと、各地に捕り手を派遣しているという。
松代姫は自ら、竹野姫の姉妹宣伝使であることを明かし、船中の大工たちに、自分たちを捕らえて大気津姫のところに引き出し、手柄にするように、と言った。時公は松代姫の大胆さに驚いて引き止めるが、梅ケ香姫も気にせず、逆に時公の臆病さを笑う。
そうこうするうちに船は島を出て、波の上を進んで行く。