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文献名1霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻
文献名2第4篇 満目荒寥よみ(新仮名遣い)まんもくこうりょう
文献名3第23章 保食神〔490〕よみ(新仮名遣い)うけもちのかみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-08-11 19:53:49
あらすじ
黄泉比良坂の戦いで、大自在天陣営は日の出神に言向け和されて、御神業に使えることとなった。

そのため、悪鬼邪神たちは集結してウラル彦一派にますます憑依した。ウラル山、コーカス山、アーメニヤに根拠を構えて体主霊従の限りを尽くした。体主霊従人種のことを、大気津姫というのである。

ウラル彦一派は、コーカス山に荘厳な宮殿を建設した。これを顕国の宮という。

その落成に際して、さすがのウラル彦も天地の神明を恐れ、大地の霊魂である金勝要神、大地の霊力である国治立命、大地の霊体である素盞嗚命の神霊を祭ることになった。

三日三晩もの祭典が始まり、八王、ヒッコス、クスの神らは酒におぼれて歌い踊り狂った。宮や踏み荒らされてしまったが、邪神に惑わされた神人らはまったく気がつかなかった。

祭典が始まると、顕国の宮は恐ろしい大音響をたてて鳴動を始めた。ウラル姫は神が喜んでいるものとして、泥まみれのまま神殿に拝し、祝詞を上げた。

数千の群集は酒を飲んで酔いつぶれ、そこらじゅうを騒ぎまわっている。

そこに、悠然として現れた三五教の松竹梅の宣伝使、石凝姥神、天之目一箇神、於縢山津見神、時置師神、八彦神、鴨彦神らは口をそろえて一同に改心を促す宣伝歌を歌った。すると、神殿の鳴動はぴたりと止んだ。

ウラル姫はたちまち鬼女と化し、部下を引き連れて鳥船に乗り、アーメニヤを指して逃げていった。

一同は改めて神殿に拝して感謝を捧げると、鬼武彦を始めとする五柱の白狐神らが現れた。石凝姥神、天之目一箇神、天之児屋根神は、神殿に捧げてあった五穀を白狐にくわえさせ、世界の各地に種を蒔かしめた。

この神殿に国治立命、素盞嗚命、金勝要神を祭り、飯成(いひなり)の宮と称えることになった。

神殿が鳴動したのは、邪神の供物に神が怒りを表したのであった。

白狐が世界各地に蒔いた種は、これまでの穀物よりも優れたものになった。これ以降、白狐を稲荷の神と称えるようになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月03日(旧02月05日) 口述場所 筆録者谷村真友 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月10日 愛善世界社版219頁 八幡書店版第2輯 592頁 修補版 校定版223頁 普及版96頁 初版 ページ備考
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本文  黄泉比良坂の戦に、常世の国の総大将大国彦命、大国姫命その他の神々は残らず日の出神の神言に言向和され、悔い改めて神の御業に仕へ奉ることとなつた。其為め八岐の大蛇や、金毛九尾の悪狐、邪鬼、醜女、探女の曲神は暴威を逞しうする根拠地なるウラル山に駆け集まり、ウラル彦、ウラル姫を始め、部下に憑依して其心魂を益々悪化混濁せしめ体主霊従、我利一遍の行動を益々盛んに行はしめつつあつたのである。悪蛇、悪鬼、悪狐等の曲津神はウラル山、コーカス山、アーメニヤの三ケ所に本城を構へ、殊にコーカス山には荘厳美麗なる金殿玉楼を数多建て列べ、ウラル彦の幕下の神々は、茲に各根拠を造り、酒池肉林の快楽に耽り、贅沢の限りを尽し、天下を我物顔に振舞ふ我利々々亡者の隠処となつてしまつた。かかる衣食住に贅を尽す体主霊従人種を称して、大気津姫命と云ふなり。
 大気津姫の一隊は、山中の最も風景佳き地点を選み、荘厳なる宮殿を建設する為め、数多の大工を集め、昼夜全力を尽して、宮殿の造営に掛り、漸く立派なる神殿を落成し、愈神霊を鎮祭する事となりぬ。流石のウラル彦夫婦も、天地の神明を恐れてや先づ第一に国魂の神として、大地の霊魂なる金勝要大神を始め、大地の霊力なる国治立命及び大地の霊体なる素盞嗚命の神霊を鎮祭する事となつたのである。数多の八王神は競うて稲、麦、豆、粟、黍を始め非時の木の実、其他の果物、毛の粗きもの、柔きもの、鰭広物、鰭狭物、沖津藻菜、辺津藻菜、甘菜、辛菜に至るまで、人を派して求めしめ、各自に大宮の前に供へ奉る事とした。此宮を顕国の宮と云ふ。此祭典は三日三夜に渉り力行された。数多の八王神、ヒツコス、クスの神達は、祝意を表する為め、酒に溺れ、或は歌ひ、或は踊り舞ひ狂ふ様、恰も狂人の集まりの如き状態なりき。
 顕国の宮は祭典始まると共に、得も言はれぬ恐ろしき音響を立てて唸り始めたり。ウラル姫は全く神の御喜びとして勇み、酒宴に耽りつつあつた。八百有余の八王神を始め、幾千万のヒツコス、クスの神は、
『サアサアヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ  酔うてもヨイヂヤナイカ
 泣いてもヨイヂヤナイカ  笑つてもヨイヂヤナイカ
 怒つてもヨイヂヤナイカ  死んでもヨイヂヤナイカ
 倒けてもヨイヂヤナイカ  お宮が唸つてもヨイヂヤナイカ
 天地が覆つてもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ  山が割れてもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ
 三五教でもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ  ウラル教でもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ
 勝てもヨイヂヤナイカ  負けてもヨイヂヤナイカ
 何でもヨイヂヤナイカ  三日のお祭り四日でも、五日でも
 十日でもヨイヂヤナイカ  人はどうでもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ
 自分丈けよければヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ  ウラルの教が三千世界で
 一番ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ  ヨイヤサのヨイトサツサ
 飲めよ騒げよ一寸先や暗よ  暗の後には月が出る
 月はつきぢやが運の尽き  尽きてもヨイヂヤナイカ
 亡んでもヨイヂヤナイカ  倒せばヨイヂヤナイカ
 三五教の宣伝使』
と無我夢中になつて、昼夜の別なく数多の八王神、ヒツコスやクスの神等に、数多の邪神が憑つて叫び廻る。八王神の綺麗な館も、数多のヒツコスに土足の儘踏みにじられて踊り狂はれ、襖は倒れ、障子は破れ、戸は壊れ、床は落され、敷物は泥まぶれ、着物は勝手気儘に取出され、着潰され、雪解の泥中に着た儘酔つて転げられ、食ひ物は食ひ荒され、宝は踏みにじられ、大乱痴気騒ぎが始まつた、されどもウラル姫を始め数多の八王神は、何れも悪魔に精神を左右せられて居るから、皆好い気になつてヒツコス、クスの神と共に手をつなぎ踊り狂ふ。顔も着物も泥まぶれになつて居る。顕国の宮は刻々に鳴動が激しくなつて来た。ウラル姫は泥まぶれの体躯に気が付かず、忽ち顕国の宮の前に進み、
ウラル姫『コーカス山に千木高く  大宮柱太しりて
 仕へ奉れる神の宮  顕しき国の御霊たる
 速須佐之男の大御神  国治立の大御神
 金勝要の大神の  三魂の永遠に鎮まりて
 神の稜威のアーメニヤ  コーカス山やウラル山
 ウラルの彦の御教を  天地四方に輝かし
 我世を守れ何時迄も  此世を守れ何時迄も
 顕しの宮の唸り声  定めし神の御心に
 叶ひ給ひし御しるしか  日々に弥増す唸り声
 ウラルの姫の功績の  天地に輝く祥兆や
 嗚呼有難や有難や  天教山や地教山
 黄金山や万寿山  是れに集へる曲神の
 曲の身魂を平げて  ウラルの神の御教に
 心の底よりまつろはせ  天の下をば穏かに
 守らせ給へ三柱の  吾大神よ皇神よ
 神の稜威の幸はひて  遠き神世の昔より
 例もあらぬコーカスの  山に輝く珍の宮
 神酒は甕高しりて  甕の腹をば満て並べ
 荒稲和稲麦に豆  稗黍蕎麦や種々の
 甘菜辛菜や無花果の  木の実や百の果物や
 猪や羊や山の鳥  雉や鵯鳩雀
 沖津百の菜辺津藻菜や  種々供へし供へ物
 心平らに安らかに  赤丹の穂にと聞し召せ
 神が表に現はれて  ウラルの神の御教を
 堅磐常盤に守れかし  善と悪とを立別て
 此世を造りし国の祖  国治立の大神の
 神の御前に四方の国  百の民草悉く
 コーカス山に参ゐ詣で  ウラルの神の御教に
 潮の如く集ひ来て  我世の幸を守れかし
 アヽ三柱の大神よ  アヽ三柱の皇神よ
 心許りの御幣帛を  捧げて祭るウラル彦
 ウラルの姫の真心を  良きに受けさせ賜へかし
 良きに受けさせ賜へかし』
と一生懸命神前に拝跪して祈つて居る。此時数多の八王神、ヒツコス、クスの神は神殿に潮の如く集まり来り、又もや、
『ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ  お宮はどうでもヨイヂヤナイカ
 酒さへ飲んだらヨイヂヤナイカ  飲めよ飲め飲め一寸先や暗よ
 後はどうでもヨイヂヤナイカ  暗の後には月が出る
 運の尽でもヨイヂヤナイカ  この世の尽でもヨイヂヤナイカ
 ウラルの姫の泥まぶれ  笑うて見るのもヨイヂヤナイカ
 上でも下でもヨイヂヤナイカ  八王でもビツコスでもヨイヂヤナイカ
 三五教でもヨイヂヤナイカ  ウラル教捨ててもヨイヂヤナイカ
 お宮が唸つてもヨイヂヤナイカ  潰れた所でヨイヂヤナイカ
 お酒が一番ヨイヂヤナイカ  ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ』
と数千の群衆は口々に酔ひ潰れ、泥にまぶれ、上下の区別なく飛廻り跳狂ひ踊り騒いで居る。かかる所に神殿さして悠然と現はれ出でたる三五教の宣伝使、松竹梅を始めとし、石凝姥神、天之目一箇神、淤縢山津見神、時置師神、八彦神、鴨彦神は口を揃へて、
『神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 只何事も人の世は  直日に見直し聞直せ
 コーカス山に集まりし  ウラルの姫を始めとし
 百の八王神、ヒツコスや  クスの神まで皇神の
 御水火に早く甦り  醜の身魂を立替へて
 大気津姫の曲業を  直日に見直せ宣り直せ
 神は我等と倶に在り  醜の曲津の亡ぶ時
 八十の醜女の亡ぶ時  八岐大蛇や曲鬼や
 醜の狐や千万の  曲の身魂を皇神の
 神の御前に追ひ出し  眼を醒せ目を開け
 顕しの国の大宮に  鎮まり給ふ三柱の
 神の怒りは目の当り  天地に響く唸り声
 酔を醒せや目を覚ませ  胸の帳を押開けて
 空に輝く朝日子の  日の出神の真心に
 復れよ帰れ諸人よ  ウラルの彦よウラル姫
 神は汝を救はむと  千々に心を砕かせつ
 我等を遣はし給ふなり  我等は神の御使
 三五教の宣伝使  宣伝万歌の言霊に
 霊の真柱立直し  一時も早く立替へよ
 身魂の立替へ立直し  体主霊従の立直し
 大気津姫の行ひを  今日を限りに立直せ
 天は震ひ地は揺ぐ  山は火を噴き割るるとも
 誠の神は誠ある  汝が身魂を救ふらむ
 一日も早く改めよ  一日も早く詔り直せ』
と言葉爽かに歌ひ終つた。神殿の鳴動は此宣伝歌と共にピタリと止んだ。ウラル姫の神は忽ち鬼女と変じ、雲を呼び、風を起し、雨を降らし四辺を暗に包み、八王神、ヒツコス引連れて、天の磐船、鳥船に其身を任せ、アーメニヤ、ウラルの山を指して雲を霞と逃げ散りたり。松竹梅を始め宣伝使一同は、改めて神殿に祝詞を奏上し、神徳を感謝する折しも此場に現はれた五柱の神がある。見れば鬼武彦、勝彦、秋月姫、深雪姫、橘姫であつた。何れも皆鬼武彦が率ゐる白狐の化身である。流石奸智に長けたる金毛九尾の悪狐も、白狐の鬼武彦、旭、高倉、月日の神力には敵はず、ウラル姫と共に此場を捨てて逃げ去つてしまつたのである。
 茲に石凝姥神、天之目一箇神、天之児屋根神は、高倉以下の白狐に向ひ顕国の宮に捧げ奉れる稲、麦、豆、黍、粟の穂を銜へしめ、世界の各地に播種せしめたり。
 国治立命、神素盞嗚命、金勝要の三柱を祭り、顕国の宮を改めて飯成の宮と称へたり。宮の鳴動したる理由は、何れも体主霊従の穢れたる八王神の供物なれば、神は怒りて之を受けさせ給はざりし為めなり。
 白狐は五穀の穂を四方に配り、世界に五穀の種子を播布したり。これより以前にも五穀は各地に稔れども、今此処に供へられたる五穀の種子は勝れて良き物なりし故なり。
 今の世に至るまで白狐を稲荷の神と云ふは此理に基くものと知るべし。
(大正一一・三・三 旧二・五 谷村真友録)
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