黄泉比良坂の戦いで、大自在天陣営は日の出神に言向け和されて、御神業に使えることとなった。
そのため、悪鬼邪神たちは集結してウラル彦一派にますます憑依した。ウラル山、コーカス山、アーメニヤに根拠を構えて体主霊従の限りを尽くした。体主霊従人種のことを、大気津姫というのである。
ウラル彦一派は、コーカス山に荘厳な宮殿を建設した。これを顕国の宮という。
その落成に際して、さすがのウラル彦も天地の神明を恐れ、大地の霊魂である金勝要神、大地の霊力である国治立命、大地の霊体である素盞嗚命の神霊を祭ることになった。
三日三晩もの祭典が始まり、八王、ヒッコス、クスの神らは酒におぼれて歌い踊り狂った。宮や踏み荒らされてしまったが、邪神に惑わされた神人らはまったく気がつかなかった。
祭典が始まると、顕国の宮は恐ろしい大音響をたてて鳴動を始めた。ウラル姫は神が喜んでいるものとして、泥まみれのまま神殿に拝し、祝詞を上げた。
数千の群集は酒を飲んで酔いつぶれ、そこらじゅうを騒ぎまわっている。
そこに、悠然として現れた三五教の松竹梅の宣伝使、石凝姥神、天之目一箇神、於縢山津見神、時置師神、八彦神、鴨彦神らは口をそろえて一同に改心を促す宣伝歌を歌った。すると、神殿の鳴動はぴたりと止んだ。
ウラル姫はたちまち鬼女と化し、部下を引き連れて鳥船に乗り、アーメニヤを指して逃げていった。
一同は改めて神殿に拝して感謝を捧げると、鬼武彦を始めとする五柱の白狐神らが現れた。石凝姥神、天之目一箇神、天之児屋根神は、神殿に捧げてあった五穀を白狐にくわえさせ、世界の各地に種を蒔かしめた。
この神殿に国治立命、素盞嗚命、金勝要神を祭り、飯成(いひなり)の宮と称えることになった。
神殿が鳴動したのは、邪神の供物に神が怒りを表したのであった。
白狐が世界各地に蒔いた種は、これまでの穀物よりも優れたものになった。これ以降、白狐を稲荷の神と称えるようになった。