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文献名1霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
文献名2第1篇 天岩戸開(一)よみ(新仮名遣い)あまのいわとびらき(一)
文献名3第2章 直会宴〔498〕よみ(新仮名遣い)なおらいえん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-11 23:01:23
あらすじ
磐楠彦の三人の息子・高光彦、玉光彦、国光彦は、筑紫島に渡り、イホの都に宣伝歌を歌いながらやって来た。

三人はとある森林にやってきて、野宿に一夜の宿を取った。そこには小さな国魂神の祠があった。夜中ごろ、大勢の人が祠にやってくる物音がした。兄弟は目を覚まし、耳を傾けた。

一人の男が代表して神酒を献じ、何事か祈りを捧げた。続いて直会の宴になり、人々のざわめきが聞こえた。

兄弟たちが人々の話を窺っていると、天候不順で不作の村では、村人たちが酋長や長者の春公に不満を持ち、財産を開放するように要求していた。酋長や春公は、蓄えはまさかのときの備えであって、ここは耐えて生活をなんとかつないで凌ぐ時機だと説得している。

村人たちはほとんどがウラル教だったが、酋長と春公は三五教であることを自ら明かしていた。

村人の初公は、ついに強硬手段に出て、人々を率いて酋長と春公に襲い掛かった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月06日(旧02月08日) 口述場所 筆録者藤津久子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月30日 愛善世界社版14頁 八幡書店版第2輯 630頁 修補版 校定版14頁 普及版5頁 初版 ページ備考
OBC rm1202
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本文  千歳の老松雲表に  聳えて高き万寿山
 堅磐常盤の松の世を  知す磐樟彦の神
 花は紅葉は緑  花の都の緑の流れ
 フサの国をば後にして  聖地を越えて茲に兄弟三人は
 住江の国を跋渉し  イホの都ものり越えて
 愈筑紫の島に着く  心つくしの益良男が
 純世の姫の鎮まりし  其国魂を清めむと
 神の教を白瀬川  一二三四五つ六つの滝
 水音高き宣伝歌  歌ひ歌ひて進み行く。
 高光彦、玉光彦、国光彦の三人は、イホの都に宣伝歌を歌ひながら進み行くのであつた。
 日は黄昏れて長き春日の旅に疲れたる三人は、とある森林に蓑を敷き、露を凌ぎ、一夜を明かしけり。
 此処には小さき国魂神の祠あり。三人は祠の後に身を横たへ眠つて居ると、夜半と覚しき頃大勢の人声聞え来たり。三人はこの声に目を醒まし、耳を傾け、其話を私かに聞き居る。群集の中より一人の男が選ばれたるが、祠の前に立ち現はれ灯火を献じ、神酒を捧げ何事か祈願を籠め終つて直会の宴に移りしと見え、人々の声は刻々に高くなり、歌ふもの、飲むもの、踊るもの、泣く、笑ふ、怒る、種々様々の活劇が演ぜられつつありける。
 三人は祠の蔭より床しげに人々の話を、耳を澄まし、息を殺して窺ひ居る。
甲『ヨウ、酋長さま、御苦労さまでしたが神様は何と御告げがありましたか』
酋長『有つたでもなし、無かつたでもなし。マアマア皆の者が心を一つにして善と悪とを弁へ、善の方へ進むより仕方がないなア』
乙『膳飽と云つたつて、此頃の様に百日許り日天様の御顔もろくに見えず、お月様は曇り勝ちで夜は殆ンど真の闇、昼と云つた処が今までの朧月夜の様なものだ。これでは五穀も実らず果物は皆虫が入つて食へる様になるまでにバタリと地に落ちる。病気は彼方此方に起る。大勢の人間の食べる米はなし、果物はなし、どうして膳に飽く事が出来るものか』
甲『オイ、貴様は間違つてゐるよ。善と云へば正直な心を持つて神様を敬ひ、我身を捨てても人の為めになる事をするのだ。悪といへばそれの反対だよ』
乙『そんな事は三歳児でも知つてるワイ。善い事をすれば其時から気分が良くなる。悪い事をすれば何となしに気分が悪い。何物かに叱られる様な心持ちになつて来る。然し乍ら肝腎の生命の親の食物がなくて、可愛い女房や子が、骨と皮とに痩衰へ渇命に及ばうとして居るのに、これを見乍ら何うして人の事処か。どうしてもかうしても利己主義になるのは止むを得ぬぢやないか』
甲『そこを辛抱して、人を助けるのだ。それでなければ善と云ふ事が出来ぬよ』
乙『さう偉さうに理窟を云ふのなら、貴様の家の倉をあけて町中の者に其米を施してやつたらどうだい。言ふべくして行ふべからざる善は偽善だ。貴様は飢ゑた味を知らぬからそんな気楽な理窟や大平楽を並べるのだ。どうだ善と悪とが解つたか』
一同『賛成々々。初公の云ふ通りだ。神様のお言葉通り善悪を立別けて困つた者を助ける様に、春公さまの倉を開けて町中の者に善の鑑を出して貰はうかい』
春公『イヤ、俺も皆の者を助けてやりたいと思うて、三杯食ふ処は二杯にして貯めてあるのだ。然し乍らこれはまさかの時に助ける為めだ。未だ俺の処の米を出して町中へ分配する時期ではない。今出してやると、誰も彼も宜い気になつて毎日日日飲み食ひに耽り、終ひには喧嘩計りする様になつて、お天道様に冥加が悪いから、反つて善が悪になると俺も困るから、マアマア働ける丈けは働いて、愈世界が真暗がりになる様な事が出て来た其時こそ、世の中は相身互ぢや。お前達が勝手に倉をあけて食ふ様にする』
丙『それも一つの理窟だが持つとる奴は穢いものだ。何の彼のと理窟を付けて出し惜みをするものだ。末の百より今の五十と云ふ事もある。先になつて善をするより善は急げだ。今の内に倉を開け放して町中を助けたら、どれ丈け春公さまの光が輝くか知れまい。ナア春さま、悪い事は云はぬ、人気の立つた時にホツ放り出すのだぜ。それがお前の身の為めだよ』
春公『皆の人達、よう考へて見てくれ。斯う百日余りも日は照らず、闇の夜は続く。山の木は枯れる、毎日々々地響きはする、病人は沢山出来る、先が案じられて仕方がないぢやないか。今の間は、木の葉でも根でも、草でも噛んで生命を繋いで置くのだ。木の葉は枯れ、地の上に何一つ食ふ物がなくなつた時に初めて倉をあけて、米や麦や、粟、黍、稗などを搗いて各自が粥にでもして、世界の大峠を凌ぐ様にしなくては心細いからな』
丁『木を食への、草を食へのと余り人間を莫迦にして呉れるな。虫か牛馬か何ンぞの様に人間が木や草を食はれるものなら誰も働きはしない。ヘン、余り莫迦にするな』
春公『お前達は、難儀だ!困る!と口々に悔んで居るけれど、毎日酒を飲み、米が美味い、味ないと小言云つてる間は駄目だよ』
初公『そンな理窟は止めにして不言実行が大切だ。有る者は無い様な顔をするし、無い者は有る様な顔をしたい世の中だ。兎も角酋長さまに明瞭と神様に伺つて貰つて、春公の倉を開けたが宜いか開けぬがよいか判断して貰はう。モシモシ酋長さま、もう一度神様に右の事を伺つて下さいな』
酋長『神の言葉に二言はない。善悪をよく弁へて正直にするが一番だ』
乙『酋長様は三五教ですか、よう善とか悪とか仰有いますな』
酋長『さうだ、俺は三五教だ。此のイホの人間は八分までウラル教だから秘して居つたが、もう斯うなつては神様に対して畏れ多いから、明瞭と三五教だと言明して置く。お前達が毎日日日ウラル教に呆けて仕事もせずに酒計り飲んで、利己主義を行つて世の中を曇らすものだから、地の上は一面に邪気が発生し、山は枯れる河は干る、五穀は実らず果物は熟さず、日月の光も黒雲につつまれて皆見えぬ様な世の中になつて了ふたのだ。それでもまだ改心が出来ねば、どんな事が出て来るか分つたものぢやない。ちつとは俺の云ふ事も聞いて貰ひたい。お前達の為だ。酋長は床の置物だとか云つて、何時も俺を莫迦扱ひして聞いて呉れぬものだから、天地の神様が吾々を戒める為めにこんな常闇の世界を現はしなさつたのだ。もう今日限り今までの悪い精神を立替へて善に立帰りますと此神前で誓つてくれ』
初公『ヨシ分つた。酋長と春公とは腹を合せて神様を楯に、自分計り安楽に暮して、俺達の苦しむのを高見から見物すると云ふ悪い量見だナ。オイ皆の奴、酋長と春公の首ツ玉を抜くのだ。ヤイヤイ酒に喰ひ酔うて、吠たり笑つたりして居る場合ぢやないぞ。俺達の一身上に関する大問題だぞ』
と呶鳴り付ける。一同は初公の号令の下に立ち上り、酋長と春公を目がけて各自に棍棒を打ち振り乍ら、四方八方より酒の機嫌で打つて掛る。嗚呼この結果は如何に治まらむとするか。
(大正一一・三・六 旧二・八 藤津久子録)
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