イホの都の町外れの国魂神の祠の前で、初公を始め群衆は、直会の席で酔いに任せて酋長と春公に棍棒で襲い掛かった。
そのとき、闇を透かして宣伝歌が聞こえてきた。三五教の宣伝歌を歌いながら現れた宣伝使は、群集の中をゆうゆうとやってきた。茹蛸のような赤い顔をかがり火に照らされて、おかしな腰つきで人々の前に現れると、宣伝歌を繰り返すのだった。
初公は大いに怒り、宣伝使につきかかった。宣伝使は体をかわして、初公に酒を飲むな、と諭すと、宣伝歌を歌い始めた。宣伝歌は酒を戒め、自分の過去の罪悪を懺悔して、村人たちに悔い改めを促すものであった。
初公は、教えは気に食わないが声は気に入った、と酒を蚊取別に勧める。しかし蚊取別はお神酒以外は飲めない、と言って断る。初公はまた大いに怒るが、蚊取別は贅沢を戒める。
騒ぎのうちに、群集は酋長と春公が逃げてしまったことに気づいた。そして、酋長の家に押しかけようとする。蚊取別は、止めても聴かないので、霊縛をかけて群集をその場に金縛りにしてしまった。
このとき、祠の後ろで事態を見守っていた三兄弟は宣伝歌を歌いながら蚊取別の前に現れた。