祝姫は、夫が夏山彦の館に宿泊して、次の間から自分の歌を聞いているとは知らずに、恋の悩みを歌に歌った。
一方夏山彦は、自分の道ならぬ恋の思いを吹き払おうと、起きて神前に参り、祝詞を唱えた。夏山彦は、この恋のもつれを吹き払ってくれるように神に祈願していた。
蚊取別は夏山彦の声を聞き付けて、またも次の間に忍んで祈願の一部始終を聞いた。夜が明けて宣伝使一同は、蚊取別の声に目を覚ました。
すると宣伝使たちも初公も、蚊取別が昨晩、どこかに忍んで行って館の中の恋の問題を聞き取り、女性の仲人をして問題を解決する夢を見た、と告げた。
そこへふすまを開けて祝姫が入ってきたが、蚊取別の姿を見ると、奥へ隠れてしまった。しばらくして、夏山彦が祝姫を従えて、一行のもとを訪れた。そして、一同に朝食を勧めた。
このとき、室内には芳しい香気がにわかに満ち、喨々たる糸竹管弦の音が響き渡った。