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文献名1霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
文献名2第2篇 天岩戸開(二)よみ(新仮名遣い)あまのいわとびらき(二)
文献名3第12章 化身〔508〕よみ(新仮名遣い)けしん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-12 00:37:23
あらすじ
祝姫は宣伝使一同に挨拶し、蚊取別にも夫に対する挨拶をした。

蚊取別は厳然と威儀を正し、祝姫に向かって突然、離縁を申し渡した。そして、自分は実は女房を持てない因縁があるのだ、と明かした。

蚊取別は、自分は大自在天の部下・蚊取別の姿に化けているのだが、実はある尊い神様の命によって、宣伝使の養成に力を注ぐ使命を持った神である、と明かした。

そして、蚊取別は夏山彦と祝姫の結婚を仲人した。

その後宣伝使一行と祝姫は、白瀬川の滝の魔神を言向け和すために出発した。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月09日(旧02月11日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月30日 愛善世界社版105頁 八幡書店版第2輯 664頁 修補版 校定版110頁 普及版45頁 初版 ページ備考
OBC rm1212
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本文  夏山彦と共に此場に現はれた祝姫は、轟く胸を撫で擦り乍ら、
祝姫『これはこれは御一同様、御苦労様で御座いました。妾は三五教の宣伝使祝姫と申すもの、白瀬川の魔神を言向和さむと難処を伝ひ漸く秋月の滝に着く折しも、魔神の為めに悩まされ生命危き折柄、イホの酋長即ち此処に在します夏山彦様に助けられ救はれて当家にお世話となり、漸く病労の身を元に復し、これより世の為めに神様の御用に立ち出でむと思つて居た処で御座います。アヽ貴神は我夫、蚊取別の宣伝使、ようマア御無事で居て下さいました』
と涙と共に語る。
 蚊取別は儼然として容を更め襟を正し、祝姫をグツと睨み乍ら、
『今日より都合によつて汝を離縁する』
祝姫『エ、それは又、如何した理由』
蚊取別『我は女房を持てぬ因縁があるのだ。夫故汝と結婚の約を結ぶは結んだものの、未だ一度も枕を共にした事は無い。実に二人の仲は清浄潔白、汚しも穢されもせぬ仲、今日限り離縁を致す。斯くなる上は従前の通り押しも押されもせぬ互に三五教の宣伝使だ。サア祝姫さま、その覚悟で交際つて下さい』
祝姫『これは心得ぬ貴方の御言葉、妾が貞操の点について何か御心に触へられたるには非ざるか、心許なし、包まず隠さず宣らせ玉へ』
と涙を袖に拭ひつつ其場にワツと倒れ伏しける。
蚊取別『祝姫殿、切なるお心はお察しする。貴女の潔白なる心は私は十分諒解して居る。この蚊取別は、もと大自在天の臣下たりし蚊取別に姿を変じ居れ共、実は贋物である。我はある尊き神の命を受け、宣伝使の養成に全力を注いで居るもの、実際の処を言へば大化物だ。安心して何卒夏山彦と結婚して下さい』
祝姫『エ、貴神は何れの神様』
蚊取別『それを明かす事丈は待つて貰ひ度い』
初公『ヤア蚊取別、なヽヽヽ何だ、ばヽヽヽ化物見た様な男だな。夜前お前が忍び足に聞きに行きよつたのが、不思議だと思つて居つたら、天にも地にも無い最愛の女房だつたのだな。それは無理もない、尤もだ。然し乍ら今聞けば一回も枕を並べた事も無いと言ふ事だが、随分素気ない男だなア。さうして夏山彦の酋長の女房になれとは何が何やら訳が分らぬ。オイ、も一遍俺の鼻を捻つて見て呉れないか。根つから葉つから目から口から鼻から合点の虫が承知せぬワイ』
蚊取別『アハヽヽヽヽ』
 高光彦は蚊取別の顔を穴のあく程ながめ乍ら、
『貴神は初めてお目にかかつた時から、何だか不思議な宣伝使だと思つてゐました。いやもう感心致しました。夏山彦さま、蚊取別の宣伝使はこれや屹度三十三相に身を変じて御座る神様ですよ、仰の通り祝姫さまと御結婚を遊ばしませ。神様の結むだ結構な縁だから祝姫さまも決心をして、此方の仰有る通りなさるが宜しからう。夏山彦さまもよもや嫌ひな仲ではありますまい。是で貴神の心の暗も杜鵑もをさまりませう』
夏山彦『アヽ勿体ない、如何してどうして祝姫さまを女房に持つことが出来ませうか。今承はれば蚊取別の宣伝使の奥さまとやら、聞いて驚愕致しました。私の今迄の心を打ち割つて申せば、初めは三五の教に帰依し次に神様に帰依し、遂には宣伝使に帰依する様になり、それが重なつて恋の病におち、煩悶苦悩を続けて居りました。人民の頭となり乍ら実にお恥しい心で御座います。私も因縁が恐ろしくなつて来ました。何卒このこと計りは許して下さいませ、今迄の恋愛心をスツカリ捨てて仕舞ひますから』
蚊取別『それはいけませぬ。帰依した宣伝使を忘るれば従つて道を忘れ、神を忘れる事になつて来る。帰依心、帰依道、帰依師だ。凡て信仰は恋慕の心を持たねばならぬ。サアサ、私がこれから媒酌を致しますから、御心配なく結婚の式を一時も早く挙げて下さい。神が許した夫婦の縁、誰に憚る事もない、御両人共、少しも蚊取別に遠慮して貰つては困る』
玉光彦『ヤア、これで私の夢も実現した。矢張正夢であつたか』
国光彦『不思議な事ですな。兄さまの夢に迄チヤンと分つて居るのだから、これや屹度神の許された縁でせう。御主人様、蚊取別の神様の仰しやる通り、素直に結婚の式を挙げたが宜しからう』
初公『イヤ、もう昨晩の夢と言ひトンと訳が分らぬ様になつて来たワイ。斯う百日も月日の御光が拝めぬ様になつた世の中だから、何れ種々の化物が現はれるのだらう。こいつは矢張怪しいものだ』
 蚊取別の媒酌によつて此処に二人は結婚の式を挙げ、祝姫は一行五人と共に白瀬川の魔神を言向和すべく、館を後に六人連れ宣伝歌を歌ひ乍ら、朧月夜の如き春の日をシナイ山の山麓指して進み行く。
(大正一一・三・九 旧二・一一 北村隆光録)
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