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文献名1霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
文献名2第2篇 天岩戸開(二)よみ(新仮名遣い)あまのいわとびらき(二)
文献名3第15章 宣直し〔511〕よみ(新仮名遣い)のりなおし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-12 00:45:01
あらすじ
一行は、次に深雪の滝を言向け和そうと進んで行くが、その途上、蚊取別は祝姫に、引き返して今後は夏山彦を補佐するように、と諭した。

祝姫は宣伝の旅に執着を示すが、蚊取別の説得を最後に承諾すると、どこからともなく大火光が現れて、蚊取別・祝姫の姿は消えてしまった。

夫婦、親子、主従となるべき身魂は、もとは一定不変である。しかし世の中の事情で、不相応の身魂同士の婚姻や主従関係ができることがある。それはうまくいかないものである。

蚊取別は、祝姫がそういう間違った相手との婚姻を成さないように、仮の夫婦になって守っていたのであった。

身魂不相応により、最初の相手と死別や離別しなければならなくなったとき、二回目の相手と結婚することができる。しかし、三度目はもうしてはならないのが、神界の不文律である。

残された一同は、蚊取別の神慮・神力に感嘆し、これから大蛇の滝を征服しようとする自分たちの使命の重みに、自らの身を振り返った。そして、実は悪魔は自分の心に潜んでいるのであり、これを追い出してこそ悪魔の征服ができるのだと悟るに到った。

一同は端座して天津祝詞を唱え、宣伝歌を高唱した。言霊の剣を穏やかに使い、心の中の醜の霊を追い出すように、と歌った。

すると暗黒に閉ざされていた天地は夜が明けたように日が輝き、騒然たる瀑布の音は止み、猛獣の叫び声も止まった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月10日(旧02月12日) 口述場所 筆録者松村仙造 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月30日 愛善世界社版124頁 八幡書店版第2輯 671頁 修補版 校定版130頁 普及版53頁 初版 ページ備考
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本文  峰の嵐や松風の音  高熊山の岩の前
 霊より覚めし瑞月は  神の使に十四夜の
 御空を仰ぎ眺むれば  星の瞬きやうやうに
 霞みて月も弥仙山  峰の後にかくろひて
 鶏鳴間もなき朝嵐  冷たき風に吹かれつつ
 又もや霊は悠々と  果しもあらぬ神界の
 方へと息せき進み行く  水音高きナイル河
 春の初と言ひ乍ら  名は秋月の大瀑布
 八岐大蛇の片割なる  醜の大蛇を言向けて
 此世の曲を祝姫  蚊取の別や三光の
 神の使ひの宣伝使  高熊ならぬ高光彦
 神の霊の玉光彦  御稜威も高き国光彦
 風にちらつく行平別の  茲に六人の神司
 深雪の滝の曲神を  善言美詞の神言に
 吹き払はむと進み行く  夢の中なる物語。
行平別『サア今度は深雪の滝だ。皆さま一緒に前後左右より言霊を以て攻め掛ませうか、また秋月の滝の様に私一人に一任されては困りますよ』
蚊取別『イヤ、深雪の滝は一人で結構だ。行平別の宣伝使に頼むでおかう。祝姫さま、あなたの弔ひ合戦も是で帳消だ。今後は夏山彦の奥さまだから、今迄の様に天下を自由自在に濶歩する事は出来ない。夫唱婦随の天則に従つて家庭を守らねばならぬ。人は一代名は末代、夏山彦の奥さまは、秋月の滝の悪魔を退治に往つて悪神の為に苦められ、大失敗を演じ、夏山彦に助けられ、その情に絆されて夫婦になつた、宣伝使を失敗つた、有終の美を全うする事が出来なかつたと、末代の語草になつては詰らないから結婚をされた後ではあれども、宣伝使の務めを全うさせたい為に、秋月の滝にあなたを連れて来たのだ。最早秋月の滝の征服も無事に片付いた以上は、宣伝使としての責任も、完全に果されたと云ふものだ。サア是から夏山彦の館に帰り、賢妻良母となつて、イホの都に善政を布く夫の神業を内助するのだ。最早宣伝使の役も神界より免除された。サアサア早く還りませう』
祝姫『折角秋月の滝迄来たのですから、モウ私も宣伝使の年の明、花々しく残りの滝の魔神を征伐する迄待つて下さいますまいか』
蚊取別『それはいけませぬ、何事も八分といふ所が良いのだ。十分手柄をしてやらうと思へば、却て失敗の基となる。たとへ失敗せずとも、白瀬川の悪魔は全部我々が征服したのだと云ふ慢心が起るから其慢心が貴女の婦徳を傷つける基となるから、これで打切にするが宜しい』
行平別『さうだなア、蚊取別の仰有る通りだ。祝姫さま、此方は斯う見えても、普通の宣伝使ではない、天教山より現はれたる尊い天使に間違ない、天使の命令だ。素直にお聞なさるが良からう』
祝姫『アヽ仕方がありませぬ、今迄は山野河海を跋渉し、種々の苦心惨怛たる辛い目も味はひ、また愉快な事にも会つて来ましたが、今日から最早宣伝使が出来ないかと思へば何だか心残りがある様です。矢張り妾は温き家庭に蟄居して安楽に暮すよりも、貴神方と共に命懸の苦労をする方が、何程愉快だか分りませぬ。アヽどうして男に生れて来なかつただらう』
蚊取別『執着心をサラリと抛つて、夏山彦の奥様となり、三五教の神を尊敬し、且その教を管轄下の人民に懇切に説き諭して神業を助けなさい。サア私が送つて上げませう。目を塞ぎなさい、途中に目を開けると大変ですから、蚊取別がサア目を開けなさいと云ふ迄開けてはなりませぬよ』
祝姫『ハイ』
と答へて従順に瞑目する。この時何処ともなく四辺を照す大火光が現はれ来たり、一行の頭上を四五回ブウブウと音を立てて循環し、轟然たる大音響と共に、白煙となつて消え失せた。見れば蚊取別、祝姫の姿は最早この場に見えずなりにける。

附言
 夫婦となるべき霊、親子となるべき霊魂、主従師弟となるべき身魂は、固より一定不変のものである。併し乍ら世の中の義理とか、何とか種々の事情の為に已むを得ず、不相応の身魂と結婚をしたり、師弟の約を結んだりする事がある。但し霊と霊との因縁なき時は、中途にして破れるものである。蚊取別の天使は、祝姫の霊の夫婦に巡り会ふまで、他の異りたる霊と結婚をなし、天分使命を中途にして過たむ事を恐れ、種々と工夫を凝らし、一旦自分の妻神と名付け、時機の来るのを待たせつつあつたのは、神の大慈大悲の御守護であつた。故に人は結婚に先立ち、産土の神の認許を受け神示を蒙つた上にて結婚せざれば、地位財産名望義理人情恋愛等の体主霊従的境遇に支配されて、一生不愉快なる夫婦の生涯を送る様な事が出来てはならぬから、人倫の大本たる夫婦の道は、神の許しを受け、妄りに軽々しく結婚してはならないものである。中には二度目の妻、所謂二世の妻を持たねばならぬ様な場合があるが、これは第一世の妻と霊が合はなかつたり、或は合つてゐても肉体が霊に添はずして、夭死したりするものである。併し乍ら愛情と言ひ、家庭の切廻しと云ひ、どうしても第一世の妻に比ぶれば、第二世の妻は劣つて居るものである。要するに、二世の妻は、妻といふ名はあつても、大抵は一世の妻の代理たるべき者であるからである。また中には第一世の妻より二世の妻の方が、何かに付けて優つたのもある。それは第一世の妻は夫婦の霊が合うて居なかつたので、第二世の妻が本当の霊の合うた夫婦の場合である。二回とも霊の合はぬ夫婦となり、中途にしてどちらかが欠げ、第三回目に霊の合うた者が発見されても、最早三世の妻は持つ事が出来ないのが、神界の不文律である。
 祝姫も斯る過失に陥らざる様と蚊取別の天使は、今日まで姫の身辺を保護すべく夫婦の名を附して居たのである。

 蚊取別祝姫は、白煙となつて此場に姿を隠した跡に四人は茫然として白煙立上る雲の彼方を見て、感歎稍久しうし、
高光彦『ヤア今まで蚊取別の宣伝使は変つた人だと思つて居たが、神様と云ふものは実に何処までも行届いたものだナア。唯一人の祝姫の一生を守るべく、種々の手段を以て操縦された其御神業、小さい事にも大きい事にも気のつくものだ。我々も細心の注意を払つて世の中に立たねばならぬ。况して今日の如き常暗の世の中に、蚊取別の様な人は目薬にしたいと思つてもあるものでない。サア之から我々も知らず知らずの慢心を省みて本当の神心にならねば、五つの滝の曲神を征服どころか却て征服されて了はねばならぬ。アー何だか蚊取別さまの帰られた後は、鳥も通はぬ離島に唯一人棄てられた様な心持になつて来た』
玉光彦『さうですナ、各自に腹帯を締めて掛らねばなりませぬ。人は背水の陣を張らねば何事も成功しませぬ。勇断果決、獅子奮迅の勢を以て、先づ自分の霊に憑依せる悪魔を追出し、清浄潔白の霊になつた上悪魔を征服する資格が初て出来るのだ。大瀑布に悪魔が居ると思へば、豈図らむや、自分の心の奥に白瀬川の大瀑布が懸り、そこに大蛇の悪魔が巣ぐうて居るのだ。身外の敵は容易に征服出来るが心内の敵は退治が出来難い。先づ深雪の滝の悪魔に突撃するまでに、各自の悪魔を征服し、或は帰順せしめて後に掛りませうか』
高光彦『アーさうだ。悪魔に対ふのは、恰度的に向つて弓を射る様なものだ。弓を射る者は其身を正しうして、一分一厘の隙間もなく、阿吽の呼吸の合つた時始めて、弓を満月の如くに引絞り、私の心を加へず秋の木の葉の風もなきに、自然に落つるが如き無我無心の境に入りて、自然に矢が弦を離れる。さすれば其矢は的の中心に当る様なものだ。先づ己の霊を正しうするのが肝腎だ』
国光彦『敵は本能寺にあり、我身の敵は我心に潜む。心の敵を滅せば、如何に常暗の世の中とは云へ、我に取りては悪魔も大蛇もナイル河、尊き神代を深雪の滝、速河の瀬に失ひ流す、神司麻柱の宣伝使、深雪の滝に向ふに先立ちて先づ自己の霊の洗濯にかかりませう』
行平別『アヽ、万寿山の御兄弟の深刻なるお話に依りて、私の心の岩戸も、サラリと開けました。アレ御覧なさいませ、天津御空には喜悦の太陽晃々として輝き始めました。これ果して何の祥瑞でせうか』
高光彦『世の中に鬼も大蛇も悪魔も有るものでない、ある様に見えるのだ。各自の心に誠の日月が照り輝き、神の慈愛の心の鏡に映つたならば、天地清明安養浄土、サアサア皆さま、打揃うて天津祝詞を奏上致しませう』
 四人は茲に端坐し、天津祝詞を奏上し終つて宣伝歌を高唱する。
『神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 善悪不二の神の道  善を思へば善となり
 悪を思へば悪となる  舌の剣の切先に
 鬼も悪魔も曲霊も  先を争ひ出で来る
 この世曇るも舌の為  争ひ起るも舌のため
 敵に悩むも舌のため  この世を照すも舌の為
 人を救ふも舌のため  天国浄土も舌の為
 地獄極楽舌のため  世のことごとは押並べて
 舌の毒より湧き出づる  舌の奥には心あり
 鬼が出づるも心から  大蛇探女も心から
 神も仏も心から  心の持様唯一つ
 心に花の開くとき  天地四方に花開く
 心に凩荒ぶとき  世界に凩吹きまくる
 人を殺すも村肝の  心の呼吸の舌の先
 人を救ふも舌の先  神となるのも舌の先
 鬼となるのも舌の先  人は第一言霊の
 天の瓊矛と称へたる  舌の剣を慎みて
 慈愛の鞘によく納め  妄りに抜くな放つなよ
 善言美詞の神嘉言  使ふは舌の役目ぞや
 善言美詞は天地の  醜の悪魔を吹き払ふ
 生言霊の剣ぞや  アヽ惟神々々
 霊幸倍坐世言霊の  舌の剣を穏かに
 使はせ給へ天津神  国津神たち百の神
 神代を開く言霊の  清き御水火に曲津見の
 醜の霊は消え失せむ  此世を造りし神直日
 心も広き大直日  唯何事も人の世は
 直日に見直せ聞直せ  身の過ちは詔り直せ』
と歌ひ終るや、百日百夜暗黒に鎖されたる天地は、茲に豁然として夜の明けたる如く、日は晃々として天に輝き、今迄騒然たる瀑布の響はピタリと止まり、虎狼獅子大蛇鬼の叫びも瞬く間、若葉を渡る春風の響とこそはなりにける。
(大正一一・三・一〇 旧二・一二 松村真澄録)
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