天津祝詞を唱え終わって、一同は怪しい声がする方へと進んできた。道は狭くなってくる。すると傍らの岸壁に小窓が開いており、そこからたいへんな美人がちらりと顔をのぞかせた。一同は妖怪変化かと警戒しながら、先を争って窓から中を覗き込む。
美人はまたしても窓から顔をのぞかせ、三五教の宣伝歌を歌い始めた。鷹彦は、これは三五教の宣伝使が閉じ込められているのかもしれない、と言った。
岩彦は入口がないかと辺りを探し、妙な石が落ちているのを見つけた。石を押しのけると、仕掛けが出てきたので引っ張ると、石戸がめくれて開いた。
一同は中に入り、石段を登っていくと、二坪ばかりの平面な部屋に、先ほどの美人が座っていた。岩彦はてっきり妖怪変化かと思い、女を怒鳴りつけるが、女は平然としている。
女は一同の名前を知っており、また昨日からここで皆が来るのを待っていたのだ、という。鷹彦は名前を尋ねるが、女は三五教の宣伝使であれば、自分を知っているはずだ、と答える。
そこへ外から宣伝歌が聞こえてきた。そして小窓から中を覗き込んだのは、日の出別宣伝使であった。岩彦はにわかに元気付いて、女に対して正体をあらわせ、と毒づく。